237
- 237_00【Femur; Thigh bone大腿骨 Femur; Os femoris】
→(大腿骨は人体で最長の管状骨で約40cmあり、身長のほぼ4分の1を占め、前方に軽く凸弯している。起立時遠位端は水平面上にあるが、大腿骨は垂直位をなさず、近位部が骨盤の幅だけ外方へずれる。また大腿骨頚の長軸と大腿骨遠位端の横軸とは同一平面上にはなく、大腿骨は長軸のまわりに骨頭が前方へ向く方向方向に約15度ねじれている。近位端(上端)で上内側やや前方へ突出する球状部が大腿骨頭であり、大腿骨頭の中心のやや後下方にある卵円形の粗面状小陥凹部分が大腿骨頭窩である。大腿骨頭と円柱状の大腿骨体を連結する細い部分が大腿骨頚で、大腿骨頚の中央部は細いが内および外側端で、とくに外側端で幅が広く前後にやや扁平となる。上縁は水平に、下縁は外下後方へ斜めに走っている。大腿骨頚と大腿骨体は、約125度の傾斜度で連結している。角度は生下時により成熟するにしたがい小さくなる。男性より女性の方が角度が小さい。大腿骨頚と大腿骨体との結合部の上外側にある大きな隆起が大転子で、結合部の後下部から内後方へ突出する部分が小転子である。大転子の後上部は上内側へ突出しやや深い陥凹部をつくる。この陥凹部が転子窩である。大転子の前面上内側部から大腿骨頚の前面を下内方に走り頚の下縁で小転子の前面にいたる粗な隆線が転子間線で、大腿骨頚と大腿骨体との結合部に相当する。転子間線は内下方へ伸びて渦状線へつづき、また下端近くで結節状に隆起して2次結節となることがある。大転子の後上角部から後面を下内包へ走り小転子にいたる比較的縁が丸い隆起が転子間稜で、頚と体との結合部に相当する。転子間稜の中央やや上外側部にある低い膨隆部分が方形筋結節である。円柱状の大腿骨体は中央部で細い上部で太く、下部では左右に幅が広くなる。大腿骨の長軸は立位で約10度脛骨の垂直線に対して外側へ傾いている。大腿骨体の中央1/3では3縁・3面がある。内側縁と外側縁は丸味をおびている。各3面とも平滑で、前面は内側縁と外側縁との間にあって前方へ凸面をなす。外側面は外側縁と後縁との間にあり、外側よりむしろ後方に面している。内側面は内側縁と後縁との間にあり内方やや後方にむいている。後縁の粗で幅広い線状隆起が粗線である。粗線の内および外側で稜状に隆起した部分がそれぞれ内側唇と外側唇で、栄養孔がこの両者の間で認められる。大腿骨体の上1/3では粗線が3本の線状隆起として拡散し、逆三角形の粗線である後面を形成する。下方で内側唇に、上方で転子間線の下端につづく内側の細い線状隆起が渦状線である。内側唇から小転子の基部へいたる中間位の線状隆起が恥骨筋線で、外側唇から上外方大転子の基部へ走る幅がある粗な線状隆起が臀筋粗面である。臀筋粗面は近位部で隆起し第三転子をつくることがある。大腿骨体の下1/3では内側部が前後に扁平化し、下端が広い三角柱状を呈する。内側唇は内下方の内側顆の後上方に、外側唇は外下方外側顆の後上方にいたる。前者が内側上顆線、後者が外側上顆線である。これらに境され浅く陥凹した三角形の平滑な面が膝蓋面である。内側上顆線の上方は大腿動脈が斜走するため不明瞭となっている。大腿骨の遠位端(下端)大きく膨隆している。内側の隆起が内側顆、外側の隆起が外側顆である。内側窩は内下方および後方へ、外側顆は下方・後方および前上方に突出する部分が内側上顆で、内側上顆上方の小さな突起が内転筋結節である。外側顆は内側顆より外側への膨隆度が小さく、大腿骨体の外側面からほとんどでていない。外側面後上方で外側へ突出する部分が外側上顆である。内側顆と外側顆は大腿骨の前面で互いに連絡するが、後面では深い間隙で隔てられている。この間隙が顆間窩である。内側顆と外側顆の後縁を結ぶ稜状隆起が顆間窩で、顆間窩の上縁をなし膝蓋面との境をなす。前下方は膝蓋面の下縁で境される。内側顆と外側顆の下面および後面の凸面をなす帯状の関節面が脛骨上端と関節する脛骨面である。脛骨面は内側顆にあり前外方へ弯曲する内側部と、外側顆にあり幅広く前後に直線的に走る外側部とに分けられる。内外の両側部が両顆の前方で互いに癒合し、膝蓋骨後面に接する関節面が膝蓋面である。膝蓋面は中央の縦溝で内外に二分されるが、外側部が大きい。ラテン語のFemur(大腿)に由来する。)
Hyrtl's muscle
- 237_01Hyrtl's muscle【Iliopsoas muscle腸腰筋 Musculus iliopsoas】 Muscle comprising the psoas major and iliacus. i: Lesser trochanter. Most important anterior flexor of the leg. Trunk flexion, lateral rotation.
→(腸骨筋と大腰筋からなる複合筋で、共同腱によって大腿骨小転子の前面に停止する。内側部(大腰筋、長線維、大きな挙上作用を持つ)は第12胸椎および第1から4腰椎外側面から起こる深層と大腰椎の肋骨突起から起こる浅層から成る(この両層間に腰神経層の大部分が入る)。外側部(腸骨筋、多数の線維を持ち、大きな力として作用する)は腸骨窩を埋める。骨盤外の起始は股関節の関節包から起こる(関節包張筋)。大腰筋も腸腰筋もともに筋裂孔を(大腿神経とともに)通って骨盤から出る。大腿骨頚の内側をまわりこみ、関節包とは腸恥包で隔てられる。腸恥包は時々関節腔につながる。しばしば他の滑液包、腸骨筋腱下包が小転子と腸腰筋腱の間にある。頭側では薄い大腰筋の筋膜は尾側では厚くなり、腸骨筋の筋膜と合流して鼡径靭帯外側部に強く結びつくとともに、強い結合組織膜として腸腰筋の停止までをおおう。第3の寛骨内筋、小腰筋は人で常在しない。その起始は第12胸椎と第1腰椎である。長い腱は大腰筋上を尾側へ向かい、腸腰筋膜や、特に腸恥骨弓に放散する。)
- 237_02【Vastus medialis muscle内側広筋;脛側広筋 Musculus vastus medialis; Musculus vastus tibialis】 o: Medial lip of linea aspera.
→(内側広筋は粗線内側唇の近位2/3と長および大内転筋停止腱から起こる。近位の線維は斜めに下行し、遠位の線維はほとんど横走する大腿四頭筋の共通停止腱に加えて内側広筋の線維は膝蓋骨内側縁や内側膝蓋支帯へ達する。)
- 237_03【Pectineus muscle恥骨筋 Musculus pectineus】 o: Pectineal line of pubis. i: Pectineal line of femur, linea aspera. Flexion, adduction, and medial rotation at the hip. I: Femoral and obturator nerves.
→(恥骨筋は腸恥隆起-恥骨結節間の恥骨上肢から起こり、大腿骨の恥骨筋線に停止する。この筋はもとももと腸腰筋群と同じ原基に由来する。本筋の構成に内転筋群がどの程度関わるかには個体差がある。恥骨筋は腸骨筋膜の延長部分である恥骨筋膜におおわれ、腸腰筋とともに腸恥窩には大腿動静脈が通る。)
- 237_04【Obturator internus muscle; Internal obturator muscle内閉鎖筋 Musculus obturator internus】 o: Internal surface of obturator membrane and surrounding area, i: Trochanteric fossa of greater trochanter. Lateral rotation, abduction, adduction. I: Sacral plexus.
→(内閉鎖筋と2つの双子筋は発生的にはひとまとまりである。内閉鎖筋はその起始を骨盤腔内へ移し、閉鎖膜上および閉鎖孔の骨性枠から起こるに至った。小坐骨孔縁(軟骨でおおわれている)が視点となり、内閉鎖筋包が介在し、ここで急に走行を骨盤外へ変える。骨盤の外にある部分は3分筋のうちの2頭、つまり上下の双子筋を多少なりともおおう。上双子筋は坐骨棘を発し、下双子筋は坐骨結節を発する。内閉鎖筋の停止腱の上下縁にはそれぞれ上下の双子筋が合流し、転子窩に終わる。骨盤内にある内閉鎖筋は強い内閉鎖筋膜に包まれ、これが肛門挙筋の起始となる。内閉鎖筋膜は肛門挙筋起始部では弓状をした腱様の筋膜束(肛門挙筋腱弓)で補強さえている。肛門挙筋腱弓よりも上で、内閉鎖筋は小骨盤の筋性壁をつくり、その筋膜は壁側骨盤筋膜の一部となる。これより下では内閉鎖筋とその筋膜は外側部において、骨盤底の下にある結合組織性の部位、すなわち坐骨直腸窩を区画する。)
- 237_05【Gemellus muscles双子筋 Musculi gemellus】
→(内閉鎖筋腱の上下に位置する1対の回旋筋。上双子筋と下双子筋があり、いずれも坐骨からおこって大腿骨に停止しする。支配神経:仙骨神経叢(L5,S1,S2)。動脈:下殿動脈(←内腸骨動脈)。(イラスト解剖学))
- 237_05a【Gemellus inferior muscle; Inferior gemellus muscle下双子筋;結節双子筋 Musculus gemellus inferior; Musculus gemellus tuberalis】 o: Ischial tuberosity. i: Tendon of obturator internus, trochanteric fossa. Lateral rotation, adduction, abduction. I: Sacral plexus.
→(この小さな下双子筋は、坐骨結節上縁により起こり内閉鎖筋腱に停止しする。仙骨神経叢からの大腿方形筋への直接枝による神経支配を受け、大腿骨を外旋させる作用を示す。)
- 237_05b【Gemellus superior muscle; Superior gemellus muscle上双子筋;棘双子筋 Musculus gemellus superior; Musculus gemellus spinalis】 o: Ischial spine, i: Tendon of obturator internus muscle and trochanteric fossa. Lateral rotation, adduction, abduction. I: Sacral plexus.
→(この小さな上双子筋は坐骨棘より起こり内閉鎖筋腱に停止する。仙骨神経叢からの、内閉鎖筋へ直接枝による神経支配を受け、大腿骨外旋作用を示す。)
- 237_06【Gluteus medius muscle中殿筋;中臀筋 Musculus gluteus medius】 o: Lateral surface of ilium, i: Greater trochanter. Abduction, medial and lateral rotation, extension, and flexion at the hip joint. I: Superior gluteal nerve.
→(中臀筋は腸骨稜と前後の臀筋線に囲まれた腸骨翼領域から起こる。大転子先端外表面に停止する。中臀筋の線維束は大転子に集まり、外側から見ると三角形を呈する。大転子では腹側からきた線維短い停止腱に前に背側の筋束上に重なる。滑液包(中臀筋の転子包)が大転子と筋の間にある。中臀筋は大腿筋膜に被われ、大腿筋膜下面からも起始する。同筋の後部は大臀筋前縁部の深層に位置する。)
- 237_07【Obturator externus muscle; External obturator muscle外閉鎖筋 Musculus obturator externus】 o: External surface of obturator membrane and surrounding area, i: Trochanteric fossa. Lateral rotation and adduction at the hip joint. I: Obturator nerve.
→(外閉鎖筋は閉鎖膜外面および閉鎖孔内下方の骨縁に起こる。腹内側へ走り、股関節の背側で大腿骨頚と頭をまわりこんでから錐状の停止腱に移行し、腹外側へ向かって転子窩に停止する。)
- 237_08【Quadratus femoris muscle大腿方形筋 Musculus quadratus femoris】 o: Ischial tuberosity. i: Intertrochanteric crest. Lateral rotation and adduction. I: Sacral plexus.
→(大腿方形筋はほとんど筋性で、大腿骨が正常位にあれば四辺形である。坐骨結節から転子間稜へ横走する。筋の大きさから予想する以上にこの筋が効果的に股関節外施に働くのは筋力のほとんどが外施に有効となるような筋線維走行だからである。)
- 237_09【Gluteus maximus muscle大殿筋;大臀筋 Musculus gluteus maximus】 o: Ilium, behind the posterior gluteal line, sacrum, coccyx, thoracolumbar fascia, sacrotuberous ligament, i: Fascia lata, iliotibial tract, gluteal tuberosity, lateral femoral intermuscular septum, linea aspera. Extension, lateral rotation, abduction, and adduction at the hip joint. I: Inferior gluteal nerve.
→(大臀筋は大腿を伸展する主力筋で、とくに歩行の際重要である。中臀筋や小臀筋(小さな臀部の筋群)と同様、大きな臀部の筋である大臀筋も発生的には伸筋群である。仙骨と尾骨の辺縁、後臀筋線より後方の腸骨稜、胸腰筋膜、そして仙結節靭帯などから起始する。その厚い筋線維束は斜め下方へ走り、広い停止腱となる。その停止域は近位では大腿筋膜、腸脛靱帯に放散する。また、臀筋粗面よりも遠位で外側筋間中隔より上の粗線外側唇にも停止する。坐骨包坐骨結節と大臀筋下面の筋膜との間にある。慢性的刺激の結果として(機織工結節、抗夫結節)、臀部に敷物なしに座り仕事をする人々では同包に炎症が起こり、後大腿皮神経を圧迫する。大腿筋の停止腱は転子包によって大転子と離される。臀筋粗面では、大腿筋はふつう他の臀筋との間にあるいくつかの筋間包の上を滑走する。立位では大臀筋下部が坐骨結節をおおう。大腿を屈すると大臀筋下部は頭側に移動する。このため座位では坐骨結節は皮下脂肪上に位置し、皮膚を通して容易に触れる。臀溝はほぼ水平に走り、大臀筋収縮時には深くなるが、大臀筋の下縁をあらわしているわけではなく、同筋走行に対して鋭角的に交わる。)
- 237_10【Gluteus minimus muscle小殿筋;小臀筋 Musculus gluteus minimus】 o:Ilium between the anterior and inferior gluteal lines, i: Greater trochanter. Abduction, medial, and lateral rotation, flexion, and extension at the hip joint. I: Superior gluteal nerve.
→(小臀筋は前および下臀筋線の間の腸骨外側面に起こる。大転子前面の外側縁に停止する。小臀筋はほとんど完全に中臀筋におおわれている。両筋はその前縁で癒合し、後方に開く袋を形成する。小臀筋の転子包は大転子先端と同筋停止腱の間にある。中臀筋と小臀筋は同じ筋原基から生じる。両筋は、大臀筋に対して、小さな臀筋群を作る。大腿屈曲時以外では、股関節を外転するので、外転筋群とすることができる。しかし、大腿に対する作用よりも重大なのは歩行あるいは片足立ちの際に骨盤に対する支持脚の作用である。中小両臀筋は骨盤が遊脚側に傾くのを防ぐ。また、骨盤を支持脚側へ傾ける。)
- 237_11【Adductor brevis muscle短内転筋 Musculus adductor brevis】 o: Inferior pubic ramus. i: Medial lip of linea aspera. Adduction, flexion, extension, and lateral rotation at the hip. I: Obturator nerve.
→(短内転筋は外閉鎖筋と薄筋の間から、恥骨下枝前面に起始する。恥骨筋と長内転筋にほとんど完全におおわれ、長内転筋の停止よりも近位の粗線内側唇に停止する。)