440
- 440_01【Pectoralis major muscle大胸筋 Musculus pectoralis major】 o:Clavicle. Sternum. Second to seventh costal cartilages and rectus sheath, i: Crest of greater tubercle. Adduction and medial rotation of the arm. I: Medial and lateral pectoral nerve.
→(大胸筋は上肢の屈筋群から派生したもので、前胸壁にある大きな翼状の筋で鎖骨部、胸肋部、腹部からなる。鎖骨部は上肢帯(鎖骨)から腹側胸壁に広がって上腕骨大結節稜(遠位)に停止する。これは鎖骨の胸骨半、胸骨、および第(1)2~7肋軟骨から起こり、腹直筋鞘の前葉からも起こる。胸肋部と腹部の線維は鎖骨部の線維の下を横切り、大結節稜の近位に着き、鎖骨部は遠位に停止する。広背筋の場合のように、頭側に開き、上腕の外転と前方挙上の際に明らかとなる筋肉のスポットが生じる。上腕を垂れ下げているときは、大胸筋は四角形をしているが、上腕骨が外転されると、三角形となる。外側縁は前腋窩ヒダを形成している。後腋窩ヒダは広背筋の外側縁によってつくられている。大胸筋の鎖骨部と三角筋の間の奥には結合組織腔があり、そこを橈側皮静脈が通る。その隙間は力強い、筋肉の発達した人では非常に狭い。しかし、大胸筋の鎖骨部の発達が弱い場合は、鎖骨に向かって広がり、逆さにした三角形に似ている。その場合、鎖骨胸筋三角という名前が適当である。ここでは皮膚が窪んで鎖骨下窩を形成している。種々の形と大きさの胸骨筋が胸筋筋膜の上に発達することがある。これは肋骨縁に沿って一側または両側に広がっている(ヨーロッパ人の約5%)。もしこの筋が胸筋神経の枝で支配されていれば、これは哺乳類の皮筋の遺残と考えることができる。この筋はしばしば胸鎖乳突筋とつながっており、肋間神経の枝で支配されているかもしれない。広背筋の前縁と大胸筋の外側縁との間には、結合組織の線維(線維性腋窩弓fibrous axillary arch)が弓状に走って両筋を結んでいるが、数%の頻度でここに筋線維束(筋性腋窩弓muscular axillary arch)がみられる。筋性腋窩弓の存在は、生体でも皮膚の上から認めることが出来る。この以上筋束を最初に記載したのはRamsay(1795)であるが、Langer(1846)の広汎な研究以来、ランゲル筋Langer's muscleと呼ばれるようになった。)
- 440_02【Sternocostal head; Sternocostal part (of pectoralis major muscle)胸肋部(大胸筋の) Pars sternocostalis (Musculus pectoralis major)】 Portion originating from the sternum and ribs.
→(大胸筋の胸肋部は胸骨と肋骨から起こる部分で胸骨前面と上5~7個の肋軟骨から水平に外方へ走行し、上腕骨大結節稜に停止する。機能として肋骨を上げ吸気を助ける。神経支配は内側および外側胸筋神経(C5-8)。)
- 440_03【Abdominal part of pectoralis major muscle腹部(大胸筋の) Pars abdominalis (Musculus pectoralis majoris)】 Portion arising from the rectus sheath.
→(大胸筋の腹部は腹直筋鞘から起る部分で腹直筋鞘前葉の表面から斜めに外上方へ走行し、上腕骨大結節稜(近位)に停止する。機能として肩を下げるときにはたらく。)
- 440_04【Fifth rib [V]第5肋骨 Costa V; [V]】
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Boxer's muscle
- 440_05Boxer's muscle【Serratus anterior muscle前鋸筋;側鋸筋;外側鋸筋 Musculus serratus anterior; Musculus serratus lateralis】 o:First to ninth ribs, i: Inferior surface of medial border of scapula. Fixes, rotates, and lowers the scapula, draws it forward, and assists in raising the arm above the horizontal plane. I: Long thoracic nerve.
→(前鋸筋は、起始が二次的に体幹の腹外側に移動したものである。このことは人の個体発生でも示される。前鋸筋の起始は上部8ないし9本の肋骨の外側面。停止は肩甲骨椎骨縁(内側縁の肋骨面)。機能として肩甲骨の外転、肩甲骨を固定した場合は肋骨を引き上げる。神経支配は長胸神経。動脈は外側胸動脈から受ける。)
- 440_06【Latissimus dorsi muscle広背筋 Musculus latissimus dorsi】 o: Spinous processes of T7-T12, thoracolumbar fascia, iliac crest, tenth through twelfth ribs, i: Crest of lesser tubercle of humerus. Retraction, medial rotation, adduction of the arm. I: Thoracodorsal nerve.
→(広背筋は背面に広く広がってる。これは下位6胸椎の棘突起とそれにともなう分節の棘上靱帯から、全腰椎の棘突起と仙骨から胸腰筋膜を介して、腸骨稜から、および第(9)10~12肋骨から起こり、しばしば肩甲骨下角からも起こる。筋線維は斜め上方にすすみ上腕骨における停止に向かって集まり、大円筋の周りで曲がって小結節稜に着く(下縁では大円筋の終止腱と一緒に成長するが、他の部分では滑液包で分けられている。)。一番頭側から起こる線維は骨稜の遠位部につき、肋骨から起こる線維束はもっとも近位に着く。上腕骨に近い筋の部分は、それゆえ、捻れている。この回転は上腕の挙上によって相殺される。これは上腕を挙上した場合、個々の筋の部分が極端に不均等に引っ張られるのを防ぐ。なぜなら挙上された上腕骨においては稜の遠位部がもっとも頭側に位置するからである。広背筋の前縁と大胸筋の外側縁との間には、結合組織の線維(線維性腋窩弓fibrous axillary arch)が弓状に走って両筋を結んでいるが、数%の頻度でここに筋線維束(筋性腋窩弓muscular axillary arch)がみられる。筋性腋窩弓の存在は、生体でも皮膚の上から認めることが出来る。この以上筋束を最初に記載したのはRamsay(1795)であるが、Langer(1846)の広汎な研究以来、ランゲル筋Langer's muscleと呼ばれるようになった。)
- 440_07【External intercostal muscle外肋間筋 Musculi intercostales externi】 Muscles that extend obliquely between the ribs from posterosuperior to anteroinferior. They are active during inspiration and fix the ribs. I: Intercostal nerves.
→(外肋間筋は、肋間筋の表層を形成する。この筋は肋骨結節から肋骨の骨軟骨境界に至るまで全肋間に分布する。この筋線維は後上から前下に向かって斜走する(外腹斜筋と同様に)。)
- 440_08【Internal intercostal muscle内肋間筋 Musculi intercostales interni】 Muscles that extend between the intercostal spaces from the sternum to the costal angle, passing from anterosuperior to posteroinferior. Expiratory muscles; fixation of the ribs. I: Intercostal nerves.
→(内肋間筋は全肋間内で外肋間筋によって覆われている。この筋線維は(外肋間筋に対して約90°の方向を示すが)後下方から前上方に走行する(下方では明確な境界を示すことなく付着する内腹斜筋の筋線維と同様に)。内肋間筋は腹側では胸骨まで、背側では肋骨角にまで広がっているにすぎない。肋骨の背側端では、筋線維束は腱様の内肋間膜によって置換されている。内肋間筋の深層は肋間動静脈と神経によって分けられ、最内肋間筋となる。肋軟骨間に位置する内肋間筋の位置する内肋間筋の部分は軟骨間筋とも言われる。)
- 440_09【Tenth rib [X]第10肋骨 Costa X; [X]】
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- 440_10【Tendinous intersections of rectus abdominis腱画(腹直筋の) Intersectiones tendineae (Musculi recti abdominis)】 Three or four intermediate tendons of the rectus abdominis which are firmly attached to the anterior wall of the rectus sheath.
→(腹直筋は、3個ないし4個の不規則な数の腱画によって4個ないし5個の筋腹に分けられる。この腱画は横走するが、必ずしも筋全体を中断するものではない。個々の筋膜は、隣接する筋腹の伸びにその収縮の効果が相殺されることなく個々別々に収縮することが可能である。この腱画のうち2つは臍より上にあり、1つは臍の高さ、非恒常的な第4の腱画は弓状線の高さにある。腱画によって区分された筋腹は、個々の筋腹が異なる複数の筋節から材料を得ているので、真の体節性を示しているのではない。腱画は、腹側では腹直筋の前葉と内側では白線と結合している。それゆえに腹直筋は、たとえば体幹の側屈の際に傍正中の位置からずれることはない。この結合のおかげで腹直筋の方向に対して斜めに加えられた牽引力の方向を変えることができる。)
- 440_11【Linea alba白線 Linea alba】 Strip formed by the fusion of the left and right abdominal aponeuroses between the xiphoid process and pubic symphysis.
→(白線は前腹壁の中央の全長にわたっ縦に走る線維帯。腹直筋鞘の前・後葉をつくる両側の側副筋腱膜の線維が前腹壁の正中線で左右交じり合って作るつよい結合組織の紐で、上方は剣状突起前面から始まり、下ほど広くなり、臍の高さを過ぎると再び狭くなって恥骨結合上縁に至る。腹斜筋と腹横筋が付着する。)
- 440_12【Transversus abdominis muscle; Transverse abdominal muscle腹横筋 Musculus transversus abdominis】 Inner surface of the seventh through twelfth costal cartilages, thoracolumbar fascia, iliac crest, anterior superior iliac spine, inguinal ligament, i: Rectus sheath, linea semilunaris. I: Intercostal nerves 7-12, iliohypogastric nerve, ilioinguinal nerve, genitofemoral nerve.
→(腹横筋の起始は下位6本の肋骨の肋軟骨内面、腰筋膜の内層、腸骨稜の内唇の前2/3、鼡径靱帯の外方1/3。停止は腱膜鞘につつまれて両腹斜筋とともに白線の中へ。機能としては腹部の圧縮、腹部内臓の保護、強い呼気時に働く。神経支配は下位6本の肋間神経の前枝、腸骨下腹神経と腸骨鼡径神経。動脈は深腸骨回旋動脈、下腹壁動脈。腹横筋は胸横筋の尾側に隣接している。この筋は、第7(6,5)から第12肋軟骨の内面、腰椎の肋骨突起(胸腰筋膜の深葉を介して)、腸骨稜の内唇および鼡径靱帯の外側部から起こる。この筋線維は、ほぼ水平に(腹直筋に直角)に走り、半月状の外側に凸の線、半月線を越えて腱膜となる。腹横筋の腱膜は腹直筋鞘の形成に関わる。その腱膜の線維は、白線で内腹斜筋の腱膜の線維と連結している。)
- 440_13【Rectus abdominis muscle腹直筋 Musculus rectus abdominis】 o: Fifth to seventh costal cartilages, xiphoid process, i: Pubic crest and pubic symphysis. Anterior flexion of the trunk, lowering of the thorax, and elevation of the pelvis. 1: Thoracic nerves T7-T12.
→(前腹壁の筋で白線の両脇にあり腱画によって筋腹がいくつかに仕切られているのが特徴である。起始は、内側腱は恥骨結合から、外側腱は恥骨稜から起こる。停止は剣状突起の前面、第5,6,7肋骨の肋軟骨の表面。機能として、腹部の圧縮、腹部内臓の保護、強い呼気時に働く、骨盤と脊柱の屈曲。神経支配は下部6本の肋間神経の前枝、腸骨下腹神経と腸骨鼡径神経。動脈は上下腹壁動脈の筋枝から受ける。断面が楕円形のこの筋の停止腱から分かれた線維は、正中線を越え、白線の尾側への続きとして恥骨結合から陰茎(陰核)の背側面に向かう陰茎(陰核)提靱帯に加わる。腹直筋が強く働くのは背臥位から状態を起こすとき、ボートを漕ぐときなどである。腹筋の発達した人では腱画の位置が皮膚の上からくぼんで見える。)
- 440_14【Rectus sheath腹直筋鞘 Vagina musculi recti abdominis】 Investing layer of the rectus abdominis that is formed by the aponeuroses of the flat abdominal muscles.
→(腹直筋鞘は腹直筋の腱膜が癒合して腹直筋を包んだものである。外腹斜筋の腱膜は腹直筋鞘の前葉に入り、内腹斜筋の腱膜の下半は前後2葉に分かれて腹直筋鞘の前後両葉に入るが、下部では前葉だけに入る。腹直筋の腱膜は同じくこれより上では腹直筋鞘の後葉にに入り、これより下ではすべて腹直筋鞘の前葉に至る。したがって下部では腹直筋鞘の後葉は欠け、腹直筋の後面は直接に横筋筋膜(これもここでは弱いで被われる。この両部の境界線を弓状線という。その位置は臍輪から4~6cm下方であるが個人差が大きい。)
- 440_15【Anterior superior iliac spine; Iliospinale anterius上前腸骨棘;前腸骨棘 Spina iliaca anterior superior; Spina ilica ventralis】 Bony projection at the anterior border of the iliac crest giving origin to the sartorius muscle.
→(腸骨稜の前端は鈍円な突起として大きく突出し、上前腸骨棘として体表上からもよく触れる。大腿筋膜張筋および縫工筋が起こる。)
Fallopian ligament; Poupart's ligament; Vesalius' ligament
- 440_16Fallopian ligament; Poupart's ligament; Vesalius' ligament【Inguinal ligament鼡径靱帯;鼡径弓 Ligamentum inguinale; Arcus inguinalis】 Inferior end of the aponeurosis of the external oblique. It passes from the anterior superior iliac spine to the pubic tubercle.
→(鼡径靱帯は上前腸骨棘と恥骨結節との間に張る靱帯で、前面における体幹と下肢の境界である。外腹斜筋の停止腱膜のつくる腱弓の発達したものである。恥骨櫛は恥骨結節のやや後部から後外側にのびているので、鼡径靱帯は恥骨櫛よりもやや前方にある。鼡径靱帯の内側端の一部は分かれて後走し、恥骨櫛は恥骨結節のやや後部から後外側にのびているので、鼡径靱帯は恥骨櫛よりもやや前方にある。鼡径靱帯の内側端の一部は分かれて後走し、恥骨櫛内側部に達する。これを裂孔靱帯といい、鼡径管下壁の形成に関与する。裂孔靱帯外側縁が恥骨櫛に沿ってのびているものを恥骨櫛靱帯という。また、浅鼡径輪の外側脚をを作る外腹斜筋腱膜線維が鼡径靱帯内側端に到達した後、上内側に方向をかえて反転し、腹直筋鞘前葉をつくる内腹斜筋の前面に向かって線維を送る。これを反転靱帯といい、鼡径管内側端に到達した後、上内側に方向をかえて反転し、腹直筋鞘前葉をつくる内腹斜筋の前面に向かって線維を送る。これを反転靱帯といい、鼡径管内側端で、その後壁の形成に関与する。プーパルの靱帯とも呼ばれる。Poupart, Francois (1616-1708)フランスの外科医、ルイ14世の侍医。プーパルの靱帯(鼡径靱帯)を既述("Suspenseurs del'-abdomen", Hist. Acad. Roy. Sci., Paris, 1730, 51)、プーパル線は鼡径靱帯の中心と鎖骨とを結ぶ線。)
- 440_17【Spermatic cord精索 Funiculus spermaticus】 It consists of the ductus deferens, its accompanying vessels, nerves and connective tissues, as well as coverings.
→(精索は精管が血管、神経とともに皮膜に包まれ、精巣上体から深鼡径輪に達するまでの約11.5cm長の紐状の構造。蔓状静脈叢、精巣動脈、脂肪、平滑筋などを含む。精索と子宮円索とは共に鼡径管を通っているが、その由来は同じではない。精索(精管)に相当するものは女性ではほとんど退化して、わずかに卵巣状態(の縦管)として残り、子宮円索は男性の精巣導帯gubernaculum testis(精巣の下端と陰嚢の皮膚をつなぐ結合組織で、ハンター導帯Hunter's gubernaculumとも呼ぶ)に相当する。このように由来の異なるものが男女で同じ場所を通っている原因は、女性では卵巣下降descent of ovariesが子宮の高さで止まり、卵巣が腹腔外に出てこないからである。)