498
- 498_01【Rectus femoris muscle大腿直筋 Musculus rectus femoris】 Two-headed muscle. Also flexes the hip joint. Contributes fibers to the lateral and medial patellar retinacula.
→(大腿直筋は大腿前側の筋で大腿四頭筋の中央浅層にある。羽状筋の大腿直筋は下前腸骨棘から起こる直頭と寛骨臼上縁や股関節から起こる反転頭からなる。起始腱中心部からの線維は膝蓋骨の上縁に終わるが、膝蓋骨前面を通って膝蓋靱帯となる。両側方の線維は膝蓋骨の両側へ放散し、膝蓋支帯になる。)
- 498_02【Bursa of rectus femoris muscle大腿直筋包;下大腿直筋包 Bursa musculus recti femoris; Bursa musculus recti femoris inferior; Bursa distalis musculi recti femoris】
→()
- 498_03【Greater trochanter of femur大転子(大腿骨の) Trochanter major】 Large prominence on the superolateral aspect of the femur for attachment of the gluteus medius, gluteus minimus, and piriformis muscles.
→(大腿骨頚の上外側には大転子(中臀筋、小臀筋、梨状筋がつく)が突出している。転子とはハンドルのことで、その力学的な効用は、たとえば大転子につく中臀筋が大腿骨を外転させている。)
- 498_04【Vastus lateralis muscle外側広筋;腓側広筋 Musculus vastus lateralis; Musculus vastus fibularis】 o: Greater trochanter, lateral lip of linea aspera.
→(外側広筋は4頭のうち最大で、大転子基部、粗線外側唇および大転子から発する表在性腱膜から起こる。膝蓋骨よりも近位で腱となり、大腿四頭筋の共通腱に合流する。また、一部の腱線維は膝蓋支帯へ放散する。)
- 498_05【Patella膝蓋骨 Patella】 The kneecap, which is embedded in the tendon of the quadriceps femoris muscle.
→(膝関節の前面にあり、尖端を下方に向けた扁平な栗の実によく似た骨で、幅広い上端部が膝蓋骨底で、尖った下端部が膝蓋骨尖である。大腿四頭筋腱中に発生した種子骨とみなされ、上縁には大腿直筋と中間広筋の内側縁には内側広筋の、外側縁には外側広筋のそれぞれの腱が付着する。前面は凸面状で、大腿四頭筋腱による縦に走る小隆起を伴う粗面をなし、小血管孔がある。後面には、上方の広い卵形の平滑な面と、下方の小さい逆三角形の粗な面がある。平滑な面は大腿骨の膝蓋面に対する関節面をなし、中央部にある縦方向の隆起によって小さい内側部と大きい外側部に分けられる。下方の粗面の下端には膝蓋靱帯が付着するが、粗面の上方部には脂肪組織が入り、脛骨と膝蓋骨とを隔てる。ラテン語のPatera(皿・円板状の)の縮小形。)
- 498_06【Lateral meniscus外側半月;腓側半月(膝関節の) Meniscus lateralis; Meniscus fibularis】 Nearly circular ring below the lateral femoral condyle with close-together attachments. It is not anchored to the fibular collateral ligament and thus is relatively mobile.
→(外側半月はほぼ環状を呈する。その付着部はたがいに近接しており、半月の幅はだいたい同じである。外側半月は内側半月よりも可動性が大きい。その前方端の脛骨への付着部は顆管隆起intercondylar eminenceの直前にあたる前顆間区の部分にあり、後方端の脛骨への付着部は顆管隆起の直後にあたる後顆管区の部分にある。外側半月の後方端から小線維束が出て、後十字靱帯に沿って大腿骨の内側顆にまで達するのが普通である。外側半月の辺縁部は膝関節の外側側副靱帯から、膝窩筋腱で隔てられており(膝窩筋腱の一部が外側半月の辺縁部から起こる)、このために外側半月の基部の機械力に対する安定性は比較的乏しい状態となる。)
- 498_07【Fibular collateral ligament of knee joint外側側副靱帯;腓側側副靱帯(膝関節の) Ligamentum collaterale fibulare】 Lateral collateral ligament that extends from the lateral femoral epicondyle to the head of the fibula. It lacks secure attachment to the joint capsule and meniscus.
→(外側側副靱帯は外側上顆より起こる円柱形の線維束で、下端は腓骨頭に着くため、下部は関節包から離れている。(この間隙を膝窩筋腱、大腿二頭筋腱の一部が通る)。)
- 498_08【Patellar ligament膝蓋靱帯;膝蓋腱 Ligamentum patellae】 Ligamentous continuation of the tendon of the quadriceps femoris muscle that passes from the apex of the patella to the tibial tuberosity. It is 2-3 cm wide and about 0.5 cm thick.
→(膝蓋腱と膝蓋靱帯は同義語。本体は大腿四頭筋の停止腱であるから、膝蓋腱という方が理論的には正しいが、膝蓋骨の下部から起こって脛骨粗面に着く強靱な線維束を膝蓋靱帯といい、膝蓋骨に着く上端が幅広く、下部が細い。また膝関節包を補強する意味から膝蓋靱帯という名が採用されている。また膝蓋腱とう語も慣用されている。)
- 498_09【Anterior superior iliac spine; Iliospinale anterius上前腸骨棘;前腸骨棘 Spina iliaca anterior superior; Spina ilica ventralis】 Bony projection at the anterior border of the iliac crest giving origin to the sartorius muscle.
→(腸骨稜の前端は鈍円な突起として大きく突出し、上前腸骨棘として体表上からもよく触れる。大腿筋膜張筋および縫工筋が起こる。)
- 498_10【Tuberculum of iliac crest腸骨結節(腸骨稜の) Tuberculum iliacum】 Palpable projection on the outer lip about 5 cm posterior to the anterior superior iliac spine at the junction of the anterior gluteal line and the iliac crest.
→(上前腸骨棘の後方5cmにあり、前臀筋線と腸骨稜とが出会う部位にある外唇の隆起。触れることができる。)
Bertin's ligament; Bigelow's ligament
- 498_11Bertin's ligament; Bigelow's ligament【Iliofemoral ligament腸骨大腿靱帯 Ligamentum iliofemorale】 Strong anterior band that extends from the anterior inferior iliac spine to the intertrochanteric line. It travels in two main directions.
→(腸骨大腿靱帯は下前腸骨棘および寛骨臼上縁から起こり、拡がって転子間線に至る三角形の強い靱帯で、関節包の前面と上面を補強する。しかし転子間線に近い中央部はやや弱いので、強い線維束となる部は逆Y字形となる。特にその外上部は、上方では下前腸骨棘に着く大腿直筋腱の線維、下方では大転子に着く小臀筋腱の線維が表面から加わり、股関節包靱帯のなかでも最大の部分となる。腸骨大腿靱帯は靱帯最大の靱帯で、上半身が股関節より後へ傾くのを防ぐバンドの役目をしている。つまり直立のバランスをとるためには、腸腰筋と共に不可欠のものである。なお上半身が股関節で前へ傾くのを防ぐものとしては、大腿筋が最も重要である。腸骨大腿靱帯の三角筋は両側辺が厚くて中央部が薄いので、英仏ではV字靱帯、またはY字靱帯Y-shaped ligamentと呼んでいる。)
- 498_12【Pubic tubercle恥骨結節 Tuberculum pubicum】 Tubercle situated anterolateral to the pubic symphysis.
→(恥骨櫛の前端の付近に上方に突出する小さな恥骨結節がある。)
- 498_13【Obturator externus muscle; External obturator muscle外閉鎖筋 Musculus obturator externus】 o: External surface of obturator membrane and surrounding area, i: Trochanteric fossa. Lateral rotation and adduction at the hip joint. I: Obturator nerve.
→(外閉鎖筋は閉鎖膜外面および閉鎖孔内下方の骨縁に起こる。腹内側へ走り、股関節の背側で大腿骨頚と頭をまわりこんでから錐状の停止腱に移行し、腹外側へ向かって転子窩に停止する。)
- 498_14【Quadratus femoris muscle大腿方形筋 Musculus quadratus femoris】 o: Ischial tuberosity. i: Intertrochanteric crest. Lateral rotation and adduction. I: Sacral plexus.
→(大腿方形筋はほとんど筋性で、大腿骨が正常位にあれば四辺形である。坐骨結節から転子間稜へ横走する。筋の大きさから予想する以上にこの筋が効果的に股関節外施に働くのは筋力のほとんどが外施に有効となるような筋線維走行だからである。)
- 498_15【Adductor brevis muscle短内転筋 Musculus adductor brevis】 o: Inferior pubic ramus. i: Medial lip of linea aspera. Adduction, flexion, extension, and lateral rotation at the hip. I: Obturator nerve.
→(短内転筋は外閉鎖筋と薄筋の間から、恥骨下枝前面に起始する。恥骨筋と長内転筋にほとんど完全におおわれ、長内転筋の停止よりも近位の粗線内側唇に停止する。)
- 498_16【Adductor magnus muscle大内転筋 Musculus adductor magnus】 o: Inferior pubic ramus, ramus of ischium. i: Medial lip of linea aspera and, via a long tendon, the medial epicondyle. Adduction, lateral rotation, and extension at the hip joint. I: Obturator and tibial nerves.
→(大内転筋は内転筋群の中で最強、人体中最大の筋の1つである。他の内転筋の背側、恥骨下枝および隣接する坐骨枝から坐骨結節までを起始とする。他の起始をもつ部分はほとんどが粗線内側唇に筋性停止する。)
- 498_17【Adductor longus muscle長内転筋 Musculus adductor longus】 o: Near the pubic symphysis. i: Medial lip of linea aspera. Adduction, lateral rotation, and flexion at the hip joint. I: Obturator nerve.
→(長内転筋は恥骨結合の線維軟骨および恥骨稜直下の狭い領域から長い腱として起こる。遠位で広くなり、薄い幅広の腱となって粗線(内側唇)の中1/3に停止する。停止腱の遠位縁をつくる筋束は広一内転筋板の形成に多少なりとも参加し、内転筋管の入り口をかたちづくる。)
Hunter's canal
- 498_18Hunter's canal【Adductor canal内転筋管 Canalis adductorius】 Passageway that is formed by the adductor magnus, vastus medialis, and anteromedial intermuscular septum. It ends at the adductor hiatus.
→(ハンター管および縫工筋下管ともよばれる。大腿のほぼ中央の高さにある筋膜性の管で、上方は大腿三角の先端よりつづき、下方は内転筋腱裂孔に開く。外側壁は内側広筋、内側壁は大内転筋と長内転筋によってつくられ、また前壁は、縫工筋の深層をおおう厚い筋膜(広筋内転筋板(INA))が、内側広筋と大内転筋および長内転筋の間に張ることによってつくられる。このなかを大腿動静脈と伏在神経が走る。内転筋管の入口より上の方でも、既に大腿動静脈は長内転筋・縫工筋・内側広筋で囲まれたトンネルを通っている。そしてこのトンネル(筋性内転筋管muscular adductor canalともいう)を上方に場所が、大腿三角の底を作っている腸恥窩である。Williamの弟、John Hunter (1728-1793)によって記載された。精巣下降に関わる精巣導帯にも名を残す。かれの業績はロンドンのRoyal College of SurgeonsのHunter Museumにおいて見ることができる。)
- 498_19【Vastus intermedius muscle中間広筋 Musculus vastus intermedius】 o: Anterior surface of femur.
→(中間広筋は大腿骨前面および外側面から起こり、共通腱に停止する。その起始野は転子間線から大腿骨骨幹1/2から遠位2/3にまで達する。内側でも外側でも、中間広筋は内側広筋と外側広筋によっておおわれる。大腿直筋は中間広筋前面をおおう腱膜様腱の上を滑走する。中間広筋のもっとも遠位に起始する線維は膝関節包へ膝関節筋として停止する。この筋は膝関節伸展の際に関節包が挟み込まれるのを防ぐ。)
- 498_20【Semimembranosus muscle半膜様筋 Musculus semimembranosus】 o: Ischial tuberosity. i: Medial condyle of tibia and oblique popliteal ligament. It is partly covered by the semitendinosus muscle. Extension at the hip joint; flexion and medial rotation at the knee joint. Tenses the knee joint capsule. I: Tibial nerve.
→(半膜様筋は大腿二頭筋長頭と大腿方形筋の起始の間の坐骨結節から起こる。脛骨内側顆、膝関節包後壁および膝窩筋の筋膜に停止する。半膜様筋は中4分の2のみが筋性である。起始腱は広い腱性の板をなし、停止腱も同じ平板である。3本の腱様の索として終わる。脛骨への索は腹側で迂回し、内側側副靱帯の下の脛骨内側顆に付く。中央の索は筋の方向を受け継ぎ、一部は脛骨近位端後面に、一部は膝窩筋の筋膜に付く。腓骨への索は膝関節包の後壁を補強し、斜膝窩靱帯として大腿骨外側顆に向かって外側へ射創する滑液包が通常同筋の停止腱と脛骨内側顆の間にある。)
- 498_21【Vastus medialis muscle内側広筋;脛側広筋 Musculus vastus medialis; Musculus vastus tibialis】 o: Medial lip of linea aspera.
→(内側広筋は粗線内側唇の近位2/3と長および大内転筋停止腱から起こる。近位の線維は斜めに下行し、遠位の線維はほとんど横走する大腿四頭筋の共通停止腱に加えて内側広筋の線維は膝蓋骨内側縁や内側膝蓋支帯へ達する。)
- 498_22【Rectus femoris tendon大腿直筋腱 Tendo musculus rectus femoris】
→()
- 498_23【Articularis genus muscle; Articular muscle of knee膝関節筋 Musculus articularis genus】 o:Distal to vastus intermedius. i: Knee joint capsule. Tenses joint capsule. I: Femoral nerve.
→(中間広筋の深層の一部で、大腿骨の前面下部から起こり主として膝蓋上包の後面につくものをいう。)
- 498_24【Medial meniscus内側半月;脛側半月(膝関節の) Meniscus medialis; Meniscus tibialis】 The crescent-shaped medial meniscus lies beneath the medial femoral condyle and is attached to the tibial collateral ligament. It is highly susceptible to injury.
→(内側半月は半月状で内側側副靱帯と癒着している。その付着部は比較的たがいに離れている。この半月は前よりも後の方が広い。つまり、前脚は後脚よりも狭い。内側半月はその付着状態によって外側半月よりもはるかに可動性が少ない。下腿の外旋のさい、内側半月はもっとも強くずれ動き、無理にひっぱられる。しかし内旋時にはこの半月は負荷を免れる。)
- 498_25【Tibial collateral ligament内側側副靱帯;脛側側副靱帯 Ligamentum collaterale tibiale】 Medial collateral ligament that extends from the medial femoral epicondyle to the tibia. It is attached to the joint capsule and the medial meniscus.
→(内側側副靱帯は内側上顆から起こり、脛骨内側顆の内側縁と後縁に着き、また内側半月の周縁に強固につながる。この側副靱帯は強力で幅広いが外側側副靱帯よりも弱く激しくぶつかる競技においてよく断裂する。)
- 498_26【Tibia; *Shank bone; *Shin bone脛骨 Tibia】
→(下腿の2つの骨のうち内側にある大きい方の骨である脛骨は、横断面が三角形をした長骨で、骨のうちで2番目に長い、下腿の前内側部に位置する。上端(近位部)と下端(遠位部)は膨隆しているが、上端の方がはるかに大きい。上端(近位端)・下端(遠位端)・骨体の3部にわけられる。上端が下端よりもはるかに幅広く強大であること、骨幹の前縁が鋭い稜線をなしていること、下端の内側部が下方に突出してることを目やすにすれば、この骨の上下・前後方向の位置づけと左右の判別は比較的容易である。上端で孔内側および後外側方へ膨隆した部分が、それぞれ内側顆と外側顆である。上面にある2個の平滑面が大腿骨と関節する上関節面である。内側の関節面は楕円形に陥凹しているが、外側の関節面は左右軸で凹面を前後軸で凸面になっている。内側と外側の関節面の間の隆起部が顆間隆起で、特に後方よりのところが顕著である。顆間隆起の内側および外側部の突出している部分が、それぞれ内側顆間結節・外側顆間結節である。顆間隆起の前後の陥凹した部分がそれぞれ前顆間区・後顆間区である。近位端の前面は三角形の粗な平面をなし、血管孔がある。粗面の下端は結節状の隆起に達している。この隆起が脛骨粗面で、上方の小さいやや平滑な面に膝蓋靱帯が付着する。近位端の周囲は全体が粗面上になっているが、外側顆の外側後下面に腓骨頭に対する小楕円形の平滑面・腓骨関節面がある。脛骨体は3縁とのうち最も明瞭で、近位2/3ではとくに鋭利である。脛骨粗面外側部から始まり内果前面に終わる。全体に軽いS字状を呈するが、遠位端では鈍で平滑となる。内側縁は丸みをおびており、内側顆後部から始まり内果後縁に終わる。外側縁は細い洗浄の隆起として認められ、腓骨関節面前方から始まり遠位端は腓骨切痕を挟むように二分して終わる。骨間膜が付着する骨間縁である。内側面は広くやや丸みをおび比較的平滑である。外側面は内側面より狭く平滑であるが、近位1/3に前脛骨筋がおこる浅い溝である。後面の近位1/3にある斜上外側(腓骨関節面内側下方)から斜下内側へ走る隆線がヒラメ筋線である。この筋線の下外側部に上方から入る栄養孔がある。中1/3に上下方向に走る低い隆線がある。隆線の広い内側部から長趾屈筋が、狭い外側部から後脛骨筋がおこる。他の部分は滑らかで筋におおわれる。遠位端(下端)は膨隆しているが近位端より小さい。近位内側部で下方に突出した部分が内果で、内果の外側面は平滑で内果関節面をなし距骨に対する関節面の一部をなす。遠位端下面は距骨に対する下関節面をなし、平滑で前後に凹面左右に凸面を呈する。前後に走る引くい隆起があり関節面を二分している。前面は平滑で丸みをおび、伸筋群の腱で被われる。前面遠位端には横走する浅い溝があり、足関節包が付着する。後面中央やや外側には長母趾屈筋腱が通る縦方向の浅い溝があり、内側には斜上外側から斜下内側へ走る長趾屈筋と後脛骨筋の腱が通る内果溝がある。外側面の三角形に陥凹した粗面が腓骨切痕である。内側面は内果として遠位方向に突出しており、丸みをおび皮下に触れることができる。Tibiaというラテン名詞には「スネの骨」のほかに笛の意味もある。Tibia(tuba笛)から変じたという節もあるし、また古代の笛は鳥のスネの骨で作られていてので、tibiaはもともとスネの骨を指すのだとも言う。脛はもちろんスネである。)