623_01【Inferior vena cava下大静脈 Vena cava inferior; Vena cava caudalis】 It arises at the union of the right and left common iliac veins, lies on the right side of the aorta, and opens into the right atrium of the heart. →(下大静脈は下肢および骨盤と腹部の器官の大部分から血液を受ける本幹で、第5腰椎体の右側で左右の総腸骨静脈の合流として始まり、このあと脊柱に沿って大動脈の右側を上行、肝臓の後面をこれに接して通過し、第八胸椎の高さで横隔膜の大静脈孔を貫いて胸腔に入り、ただちに右心房にそそぐ。下大静脈に流入する枝には総腸骨静脈、下横隔静脈、第3・第4腰静脈、肝静脈、腎静脈、右副腎静脈、右精巣静脈、右卵巣静脈、蔓状静脈叢などがある)
623_02a【Lumbar veins腰静脈;第3および第4腰静脈 Venae lumbales; Venae lumbales [III et VI]】 Third and fourth segmental lumbar veins that open directly into the inferior vena cava. →(第三腰静脈および第四腰静脈はそのまま椎体の側面を腹側に走って左右とも下大静脈にそそぐ。ただし、この流入形式には変異が多い。)
623_03【Abdominal aorta腹大動脈;大動脈腹部 Pars abdominalis aortae; Aorta abdominalis】 Segment of the aorta extending from the aortic hiatus of the diaphragm to its bifurcation at the fourth lumbar vertebral body. →(腹大動脈は下行大動脈の腹腔内にある部分で、胸大動脈のつづきとして横隔膜大動脈裂孔にはじまり、脊柱前面を下行したあと、第4腰椎の高さで左右の総腸骨動脈を分岐して、細い正中仙骨動脈に移行する。胸大動脈とは反対に臓側枝が豊富でかつ協力である。)
623_04【Common iliac vein総腸骨静脈 Vena iliaca communis】 Venous trunk extending from the sacroiliac joint to the fourth lumbar vertebra. It unites with the common iliac vein from the opposite side to form the inferior vena cava. →(総腸骨静脈は左右とも仙腸関節の前面で内および外腸骨静脈の合流によって生じ、第5腰椎体の前面を大動脈の右側に向かって上行し、ここで左右が合して下大静脈となる。右総腸骨静脈は同名動脈の後外側をほぼ垂直に上行するが、左総腸骨静脈は長さが長く、また走行も斜めで、はじめ総腸骨動脈の内ドクにあり、次いで右総腸骨動脈の背側を通って右側とする。)
623_06【Internal iliac vein内腸骨静脈 Vena iliaca interna】 Short venous trunk that receives veins from the pelvic viscera and perineum. →(内腸骨静脈は主として骨盤内増からの血液を集める。その分枝は、内腸骨動脈の場合とほとんど同じで、それぞれ内腸骨動脈と伴行している(ただし、臍血管を除く)。本幹は骨盤腔の側壁に接して大坐骨孔で梨状筋上孔を通って骨盤腔にはいる。)
623_07【Ureter尿管 Ureter】 Urinary duct situated in the retroperitoneum. It connects the renal pelvis with the urinary bladder, measures 25-30 cm in length and is about 3 mm thick. →(尿管は全長約25~27cmで、上半分は腹腔内を走り腹部といわれ、下半分は骨盤内にあり骨盤部といわれる。腎盂につづき、腎臓から膀胱に至る管。輪層と縦層の平滑筋に囲まれた移行上皮によって裏打ちされ、外部は外膜でおおわれている。腎門の内下側から出て、大腰筋の前面を斜めに内下方に向かい、精巣(卵巣)動脈の後ろで、これと交叉して下行する。第四腰椎の高さで、総腸骨動・静脈の前を横切って骨盤内に入る。ついで、骨盤の側壁に沿って走り、最後に前内方にまたがって骨盤邸の上面を走り膀胱に開く。尿管はつぎの3箇所にやや細い狭窄部をもつ。すなわち、1.腎盂から尿管への移行部(上端部)、2.腹部から骨盤部への移行部(この部は総腸骨動・静脈と交叉し、尿管は腹膜と癒着している、3.膀胱壁を貫く部(尿管は膀胱壁を斜めに貫き、長さは約2cm)の3箇所である。)
623_08【External iliac vein外腸骨静脈 Vena iliaca externa】 It arises at the superior end of the femoral vein below the inguinal ligament and ends where it unites with the internal iliac vein to form the common iliac vein. →(外腸骨静脈は下肢の静脈を集める本幹で、そのほか一部は前腹壁の下部からも血液を集める。大腿静脈の続きとして鼡径靱帯の下で血管裂孔にはじまり、大腰筋の内側に沿って上行して、仙腸関節の前面で内腸骨静脈と合して総腸骨静脈をつくっておわる。)
623_09【External iliac artery外腸骨動脈 Arteria iliaca externa】 Second branch of the common iliac artery, which continues as the femoral artery. →(外腸骨動脈は総腸骨動脈からつづいて、仙腸関節の前面で内腸骨動脈とわかれたあと、大腰筋の内側縁に沿って下行し、鼡径靱帯のほぼ中央でその下を通過して大腿前面出て、大腿動脈に移行する。内腸骨動脈から分かれて、鼡径靱帯の下を通過するまでの部分を指す。)
623_10【Inferior epigastric vein下腹壁静脈 Vena epigastrica inferior】 Accompanying vein of the inferior epigastric artery from the posterior aspect of the anterior abdominal wall. →(下腹壁静脈は下腹壁動脈に伴行して前腹壁の下部より血液を集め、鼡径靱帯の直上部で外腸骨静脈に注ぐ。)
623_11【Ductus deferens; Deferent duct精管 Ductus deferens; Vas deferens】 The course of the ca. 50 cm long ductus deferens is initially tortuous, then becomes straight. It is a continuation of the duct of epididymis, opening into the urethra. →(精巣上体からはじまる精巣の分泌管で、精巣上体尾につづく精子を送る通路。精索中にある。全長約30cm(延ばせばその2倍)、膀胱底で紡錘状に膨れ、精管膨大部といい、内部に膨大部憩室を含む。膨大部の下端で、精嚢が精嚢排出管を経て合流し、これより遠位では精管は射精管と呼ばれ、尿道前立腺部後壁にある精丘の上で、尿道に開く。)
623_12【Obturator veins閉鎖静脈 Venae obturatoriae】 Veins entering the pelvis through the obturator foramen. They usually open into the internal and common iliac veins. →(閉鎖静脈は大腿内側部で内転筋群の近位部よりおこり、閉鎖管を通って骨盤腔に入り、閉鎖動脈に沿って背側に向けて走って内腸骨静脈へそそぐ。)
623_13【Urinary bladder; Bladder膀胱 Vesica urinaria】 Organ located beneath the peritoneum in the lesser pelvis posterior to the pubic symphysis. Its size varies depending on fullness, with the urge to evacuate the bladder occurring at about 350 ml. Even at maximum distension it remains below the level of the navel. →(膀胱は腎臓で産生され尿管によって送られる尿を約350~500mlまたはそれ以上を一時的に貯える。平滑筋よりなり弾性に富む尿の貯留器官。膀胱は骨盤腔のもっとも前部にあり、恥骨の後ろに位置する。軽度に充満する時には、四面体を呈し、頂にあたるところを膀胱尖といい、錐体の底部にあたるところを膀胱底と呼ぶ。尖と底との間を膀胱体と呼ぶ。)
623_14【Deep dorsal vein of penis; Dorsal vein of penis♂深陰茎背静脈;陰茎背静脈;筋膜下陰茎背静脈(♂) Vena dorsalis profunda penis; Vena dorsalis penis♂】 Subfascial vein of the dorsum of penis lying below the pubic symphysis between the inferior pubic ligament and transverse perineal ligament that passes to the prostatic venous plexus. It lies between the deep fascia of penis and tunica albuginea and is usually unpaired. →(深陰茎背静脈は陰茎背面の正中線で左右の陰茎背動脈の間にある無対性の太い静脈。陰茎亀頭および陰茎海綿体より血液を集め、深陰茎筋膜の深層を背側に走り、次いで恥骨結合の下縁に沿って恥骨弓靱帯と尿生殖三角の間から骨盤腔に入り、前立腺静脈叢にそそぐ。一部の静脈は陰茎背動脈に沿って坐骨直腸窩に出て内陰部静脈へそそぐ。)
623_15【Penis陰茎 Penis】 Male genital organ consisting of the corpora cavernosa and the male urethra. →(陰茎は男性の交接器であるが、泌尿器の一部である尿道をも含む。恥骨に付着する基部が陰茎根で、根より前方の自由部が陰茎体、先端の膨大部が陰茎亀頭、咽頭後縁の高まりを亀頭冠、その後方の溝の部分を亀頭頚という。陰茎上面を陰茎背といい、平たく、下面は尿道が通過する側で、尿道面という。陰茎の主体は、尿道を包む尿道海綿体と、二つの陰茎海綿体である。左右の陰茎海綿体が接着してできる下面の溝に尿道海綿体がはまる。陰茎海綿体の恥骨下枝への付着部を陰茎脚、尿道海綿体の基部のふくらみを尿道球という。亀頭は尿道海綿体が先端でふくらんだものである。各海綿体は結合組織性の強靭な陰茎・尿道海綿体小柱とよばれる平滑筋を含む柱が多数内腔を走る。陰茎海綿体洞には、深陰茎動脈などからの枝であるラセン動脈が直接に流入する。血液が急速に流入すれば、海綿体、海綿体静脈からの血流の還流が妨げられ、海綿体は腫脹して陰茎が膨起する。左右の陰茎海綿体の間の不完全な仕切りを陰茎中隔といい、亀頭内の正中にあるものを亀頭中隔という。三つの海綿体を深陰茎筋膜が共通に包み、さらにその外側を浅陰茎筋膜が包む。陰茎の皮膚はゆるく、前方では二重となってヒダをつくり、これを包皮という。包皮と亀頭下面を結ぶヒダを包皮小帯という。下面には陰嚢縫線につづく陰茎縫線が認められる。亀頭冠には包皮線があり、これは独立皮脂腺である。)
623_16【Prostatic venous plexus♂前立腺静脈叢;陰部静脈叢(♂) Plexus venosus prostaticus; Plexus venosus pudendalis♂】 Venous plexus around the prostate that is connected with the adjacent vesical venous plexus. →(前立腺静脈叢は恥骨結合の下縁から前立腺の前面、さらにその外側部の結合組織のなかに発達した静脈叢で、これには前方から恥骨結合の下縁を通って深陰茎背静脈が流入するほか、膀胱下面および前立腺の静脈もそそぐ。膀胱静脈叢と連結して内腸骨静脈にそそぐほか、外腸骨静脈とも交通する。)
623_17【Prostate; Prostate gland; Prostatic glands前立腺 Prostata】 Chestnut-sized tubuloalveolar gland below the urinary bladder and having a smooth surface. It surrounds the urethra. →(前立腺は膀胱底の下に密接し、骨盤底の上にのる30~50個の胞状管状腺である。男性の尿道起始部を取り囲んで栗の実に似た形をしている。強靱な結合組織の被膜に被われる。外周に近い部部分は色がやや暗く見え(いわゆる外腺exogland)、中心部は白っぽい(いわゆる内腺endogland)。Prostataはpro(前に)stata(立つもの)という意味である。古代ギリシャでは永来ヒトの前に立って護衛する人をprostatesといったそうである。前立腺を初めて記載し、prostatesと名付けたのは、アレキサンドリア学派のエラシストラトスErasistratus(BC310-250)である。前立腺が膀胱の前に立ってこれを守っていると考えたのだろう。日本では、以前には摂護腺と呼ばれていたが、ギリシャ語の直訳の前立腺が現在では正規の用語になっている。)
623_18【Vesical venous plexus膀胱静脈叢 Plexus venosus vesicalis】 Venous plexus on the fundus of bladder that is connected with the prostatic or vaginal venous plexus. →(膀胱静脈叢は膀胱底の静脈叢で、前立腺ないし腟静脈叢と連絡している。)
623_19【Levator ani muscle肛門挙筋 Musculus levator ani】 Principle muscle of the pelvic diaphragm. It is derived from the abdominal wall musculature and permeated by smooth-muscle cells. I: Sacral plexus, S2-S5. It consists of the following parts. →(肛門挙筋の丈夫な前部(恥骨尾骨筋)は分界線直下の恥骨の内面から起こり、薄い後部(腸骨尾骨筋)は腸骨から起こる。その起始腱は内閉鎖筋筋膜に接して移行し、閉鎖筋膜から発する腱束を受ける。これらの線維の起始部では腱性の係留物(肛門挙筋腱弓)により強化されている。左右両側で恥骨尾骨筋の内側線維束は挙筋脚を形成している。それらの線維束は背方と尾方、また直腸の前では外側を通り、それぞれ会陰の中心腱へ放散する薄い前直腸線維束や前立腺挙筋として前立腺筋膜(あるいは恥骨腟筋として腟壁)へと分かれる。それより鼻側にある肛門挙筋の線維束は恥骨直腸筋として直腸の背側を取り囲み、反対側の線維と共にループを形成する。恥骨尾骨筋の外側束は尾骨と仙骨の背側に広がる。腸骨尾骨筋の筋線維は尾骨と仙骨に付き、また肛門と尾骨の間では強靱な線維束である肛門尾骨靱帯に付いている。)
623_20【Vesical veins膀胱静脈 Venae vesicales】 Veins from the vesical venous plexus. →(膀胱静脈は膀胱下面と前立腺の上面付近に分布して膀胱静脈叢をつくり、これから出る血液は内腸骨静脈そそぐ。)
623_21【Inferior rectal veins下直腸静脈;肛門静脈 Venae rectales inferiores; Venae anales】 Branches from the anal region that pass to the internal pudendal vein. They anastomose with the middle rectal veins and superior rectal vein. →(下直腸静脈は主として肛門部よりの血液を集めて、坐骨腸骨窩で内陰部静脈にそそぐ。中直腸静脈とともに、おもに痔帯より下方の肛門管の静脈血を集め、ときに外痔核の形成に関与する。)
623_22【Ascending lumbar vein上行腰静脈 Vena lumbalis ascendens】 Abdominal portion that becomes the azygos vein on the right side and the hemi-azygos vein on the left. It opens into the inferior vena cava and anastomoses with the common iliac vein. →(上行腰静脈は腰椎の両側において、左右の腰静脈を縦に連結する静脈で、腰椎肋骨突起の前面を上行し、肋下静脈と結合して奇静脈または半奇静脈の起始をつくる。)
623_23【Iliolumbar vein腸腰静脈 Vena iliolumbalis】 Companion vein of the iliolumbar artery. →(腸腰静脈は腸腰動脈に伴行して、腸骨窩、後腹壁よりの血液を集めて大腰筋の深層を通り、総腸骨静脈または外腸骨静脈へそそぐ。第5腰椎の椎間孔を経て脊柱管内との交通もある。)
623_24【Superior rectal vein上直腸静脈 Vena rectalis superior】 Branch from the superior portion of the rectum. →(上部直腸すなわち櫛状線の上方領域からの血液を受ける静脈。下腸間膜静脈から門脈をへて肝臓に注ぐ。直腸上部の癌が肝臓に血行性移転する際の経路となる。(イラスト解剖学))
623_25【Rectum直腸 Rectum; Intestinum rectum】 Tenia-free 15 cm long segment extending between the sigmoid colon and anus. →(直腸は消化管の末端部でS状結腸につづく大腸の一部である。結腸から直腸への移行はゆるやかで、仙骨中央部あたりがほぼ両者の境界となる。直腸は腸間膜を欠き、直腸ヒモを示さない部分である。直腸の下端は、骨盤隔膜を貫く寸前までで、それ以下は肛門管である。肛門管の直上部にあたる直腸窩部はふくらみ、ここを直腸膨大部という。膨大部上方には横走するヒダが2~3本認められ、直腸横ヒダといい、最も恒常的なものは右壁にあって、コールラウシュのヒダという。直腸ははじめ仙骨の曲がりに沿って前方に凹の間借りを示し、これを仙骨曲といい、下端近くでは前方に凸の曲がりを示し、これを会陰曲という。直腸壁の平滑筋の筋層のうち、重筋層と一部の輪筋層は周辺の臓器へとのび、直腸尾骨筋、直腸膀胱筋、直腸尿道筋などとよばれる筋束をなす。直腸が内容をいれて拡張すると、壁の伸展刺激は求心性神経線維によって仙髄に伝えられ、反射的に内容の排出、すなわち排便が起こる。このような排便中枢の中枢は仙髄(S2~4)にあり、肛門脊髄中枢anospinal centerといわれる。排便defecationのさいには、交感神経が抑制されるとともに、副交感神経の興奮が高まって、大腸の蠕動・収縮がおこり、内肛門括約筋は弛緩し、さらに陰部神経を介して外肛門括約筋も随意的に緩められる。そのほかに、腹壁の筋・横隔膜・骨盤隔膜を作る肛門挙筋の収縮によって腹圧が高められ排便を助ける。)
623_27【Internal pudendal vein内陰部静脈 Vena pudenda interna】 Vein running within the lateral wall of the ischiorectal fossa and passing through the lower portion of the greater sciatic foramen into the pelvis. →(内陰部静脈は内陰部動脈に伴行するが、主として陰茎(核)深静脈のつづきとしてはじまり、坐骨直腸窩の外側壁に沿って背側へ走り、仙結節靱帯と仙棘靱帯の間を経て、梨状筋下孔から骨盤腔に入り、内腸骨静脈へそそぐ。この間、外陰部、肛門よりの静脈を入れる。)