673
- 673_00【Palate口蓋 Palatum】 Partition dividing the oral and nasal cavities.
→(口蓋は固有口腔の天井をなし、また哺乳類やワニでは、鼻腔と口腔を完全に分離する。前方2/3は、上顎骨の口蓋突起と口蓋骨の水平板、およびそれをおおう骨膜、粘膜からなり、硬口蓋とよばれ、後方1/3は内部に骨を含まず、主として筋肉性で軟口蓋とよばれる。軟口蓋正中部は下方へ細長く延びだし、口蓋垂をつくる。口蓋垂はヒトでよく発達する。軟口蓋は可動性で、燕下、発語の際に後方部がとくによく働き、口蓋帆の別名がある。燕下の際、口蓋帆は挙上して、鼻腔と口腔を遮断する。硬口蓋には横走する粘膜のヒダが数条あり、横口蓋ヒダとよばれ、さらに中央を横走する隆線は口蓋縫線とよばれる。口蓋縫線は前方は切歯乳頭におわる。発生上、口蓋縫線は左右の口蓋突起の癒合線、切歯乳頭は一次口蓋の名残とみなされる。口蓋の発生は胎生第5週ごろ、鼻窩をとり囲む内側鼻隆起と外側鼻隆起は口腔上壁のところで上皮性に癒合し上皮壁を形成する。顔面が前後に長くなるのにしたがい、鼻窩も後方へ伸び出して深くなり鼻胞(または鼻嚢)になる。この観に上皮壁は鼻胞の底に位置するが、その前方部分には死亡死が起こり内側および外側鼻隆起の中胚葉の侵入ををうける。内側および外側鼻瘤器の中胚葉が連続するとともに左右の内側鼻隆起は互いに近づき、また前方へ伸び出した上顎突起とも結合する。後方へ伸び出した鼻胞は、口腔上壁とは上皮壁由来の膜・口鼻膜で境されている。口鼻膜が胎生第6週ごろ破れ原始後鼻孔が出現すると、左右の原始後鼻孔より前方に胃位置する内側鼻隆起の部分が上顎の前方部すなわち顎間部となり、口腔上壁の部分は原始鼻腔と原始口腔とを境する一次口蓋または前上顎となる。胎生第7週ごろ、上顎突起の鼻腔側壁が隆起し下の両側を下方へ伸び出す。伸び出した突起が口蓋突起または外側口蓋突起である。第8週ごろ、口蓋突起は前方の方から下の背面へ位置するように水平位となる。水平位となった左右の口蓋突起は互いに接近し、第9週以後前方1/3位のところで左右が癒合する。癒合は前後に拡がり、同時に前頭鼻隆起が後方へ伸び出してできた鼻中隔の下端および一次口蓋の後縁とも癒合する。口蓋突起の癒合により後鼻孔は後方へ開口するようになり、口腔と鼻腔とを分ける二次口蓋が形成される。一次口蓋との間には鼻口蓋管が出現するが生後は切歯管として残っている。上顎骨と口蓋骨からおよび一次口蓋で膜性骨化がおこり硬口蓋が形成される。鼻中隔の後端より後方の二次口蓋には骨形成がなく軟口蓋という。硬口蓋を形成する癒合した口蓋突起の後方で中胚葉が盛り上がることにより左右の口蓋突起の後方は連続して一つになり軟口蓋および口蓋垂が形成される。)
- 673_01【Maxillary dental arcade; Upper dental arcade上歯列弓;上顎歯列弓 Arcus detalis maxillaris; Arcus detalis superior】 Curved dental arcade of the maxilla resembling a parabola of the third degree in shape.
→(歯は上下顎とも歯槽突起に一列に、全体として馬蹄形に歯列をつくっている。歯列の描く曲線を歯列弓といい、上顎のものを上歯列弓、下顎のものを下歯列弓という。上顎歯列弓は乳歯なら10本、永久歯なら16本。)
- 673_02【Gingiva歯肉 Gingiva】
→(歯肉は口腔粘膜でおおわれたち密な線維組織で、上顎および下顎の歯突起を包み、歯頚部を取り巻いて、固く骨膜と癒着している。頬または口唇と歯肉の間の移行帯ではこれに対し、この結びつきはゆるく、ここでは炎症過程によって粘膜がもり上がることがある(このときにはしばしば鼻唇溝やオトガイ唇溝が消失する)。外縁上皮は歯槽突起の外面の粘膜上皮であって、厚みがあり高い乳頭突起でもって粘膜結合組織としっかり咬み合っており、ところどころで角化がみられることがある。内縁上皮は歯槽の上縁を越えて、歯頚に達し歯根膜を上から被っている。)
- 673_03【Palatine glands口蓋腺 Glandulae palatinae】 Glands located beneath the mucous membrane. (Two larger masses, one on each side of the midline).
→(口蓋腺は硬口蓋外側部分の粘液固有層、および軟口蓋の粘膜下組織に存在する多数のブドウ状粘液腺。)
- 673_04【Buccinator muscle頬筋 Musculus buccinator】 Muscle arising from the pterygomandibular raphe and adjacent areas of the maxilla and mandible to the height of the first molar teeth, and inserting into the orbicularis oris at the angle of the mouth. It forms the cheek, moves food from the oral vestibule between the dental arcades during mastication, prevents entrapment of the mucous membrane of the mouth, and is active during laughing and crying. I: Facial nerve.
→(頬筋は頬の筋性土台に該当し、口角部で口輪筋に付着する。頬筋は弓状に上顎骨歯槽突起の臼歯部、かつ下顎骨歯槽突起から起こる。上および下顎間は腱性の翼突下顎放線によって橋渡しされ、この放線もまた頬筋の起始である。上咽頭収縮筋の一部がこの放線の後部で起始する。口角付近で、線維索が交叉するので、頬の上方に位置する部分は下唇に広範囲わたって達することもあるし、達しないこともある頬筋は上顎の第2大臼歯のレベルで耳下腺管によって貫通され、しかも本筋は脂肪体からこれを隔てる浅筋膜(頬咽頭筋膜)を有する唯一の顔面筋である。頬筋は上・下歯列弓および頬粘膜間に入り込んだ植物片を再度歯列弓間に押し戻し、咀嚼および植物片のかたちづくりに重要な役割を果たしている。本筋は口腔前庭を圧縮して、空気あるいは液体を口裂を通してふき出す(泡をふき出す、口笛をふく、吐き出す:“トランペット吹きの筋”)。両側の頬筋の収縮はは口角の外側部をくぼませる。参考:この筋は頬粘膜に密に結合しているが、皮膚との間は脂肪組織で隔てられている。上顎第2大臼歯の高さで耳下腺管に貫かれる。)
- 673_05【Pterygomandibular raphe翼突下顎縫線;頬咽頭縫線 Raphe pterygomandibularis; Raphe buccipharyngica】 Tendinous line between the pterygoid hamulus and the retromolar fossa of the mandible. It divides the buccinator from the constrictor muscles of pharynx.
→(翼突下顎縫線は翼突鈎と下顎の間の腱。頬筋と咽頭収縮筋とを分けている。)
- 673_06【Palatine tonsil口蓋扁桃 Tonsilla palatina】 Tonsil located between the palatoglossal and palatopharyngeal arches.
→(口蓋扁桃は舌口蓋弓と咽頭口蓋弓の間にある。扁桃中もっとも大きく、よく発達した扁桃である。肉眼解剖学的には、アーモンドの種の形に似ていて、組織学的には重層扁平上皮がおおっているが、この上皮が深く落ち込んでいて、十数個の陰窩cryptsを形成している。これらの陰窩に沿って、上皮の下層の固有層にリンパ小節が並んでいる。扁桃窩は発生上は第2鰓嚢のなごりとみなされる。扁桃窩の前方部には、三角ヒダが口蓋舌弓から張り出し、上方では口蓋舌弓と口蓋咽頭弓を半月ヒダが結ぶ。扁桃窩の上部に残された口蓋扁桃に占有されない扁桃窩の部分を扁桃上窩という。口蓋扁桃の表面に認められる小小陥凹が扁桃小窩で、これは扁桃の上皮が陥入してつくる扁桃陰窩の上皮表面への開口部を示す。 )
- 673_07【Isthmus of fauces; Oropharyngeal isthmus口峡峡部;口咽頭峡部 Isthmus faucium】 Space bounded on the left and right by the palatoglossal and palatopharyngeal arches.
→(口蓋咽頭弓の付近は、口峡の中でも特に狭いので口峡峡部という。)
- 673_08【Mandibular dental arcade; Lower dental arcade下歯列弓;下顎歯列弓 Arcus dentalis mandibularis; Arcus dentalis inferior】 Curved dental arcade of the mandible resembling a parabola of the second degree in shape.
→(下顎歯列弓は下顎骨の歯槽部に樹立している歯の列で、乳歯なら10本、永久歯なら16本。)
- 673_09【Hard palate硬口蓋 Palatum durum】 Hard, bony part of the palate.
→(硬口蓋は鼻の粘膜により上部を、口腔の天井にあたる部分の粘膜により下部をおおわれた骨口蓋からなり、粘膜は厚く、骨口蓋の骨膜に硬く付着する。粘膜表面には、正中線に一致して口蓋縫線という高まりがみられ、その前端に切歯乳頭という小隆起がある。その前端に切歯乳頭という小隆起がある。口蓋血管、神経、粘膜腺を有する口蓋の前方部分。硬口蓋の前部には、3~4本の横走するヒダ、すなわち横口蓋ヒダがみられる。横口蓋ヒダはとくに幼児で明瞭に見られる。)
- 673_10【Palatine spines口蓋棘 Spinae palatinae】 Bony ridges along the palatine grooves.
→(口蓋突起の下面は口腔の上壁となる粗な面でややくぼみ、その後外側部の歯槽突起に近い所には、すぐ後の口蓋骨の水平板にもつづく口蓋溝(大口蓋神経および同名動静脈が通る)がある。枝分かれをしている口蓋溝の間には口蓋棘が棘状または稜状に隆起する。)
- 673_11【Greater palatine artery大口蓋動脈 Arteria palatina major】 Artery emerging from the greater palatine foramen and passing anteriorly to the incisor teeth, supplying the mucous membrane. It lies protected up to the level of the premolar teeth in the palatine grooves.
→(大口蓋動脈は下行口蓋動脈の前枝で、歯肉と硬口蓋粘膜に血液を送る。)
Stensen's (Stenon) duct
- 673_12Stensen's (Stenon) duct【Parotid duct耳下腺管 Ductus parotideus】 Excretory duct that extends around the anterior border of the masseter, usually over the buccal fat pad, and opens opposite to the upper second molar tooth.
→(耳下腺管はステンセン管ともよばれる。または、ステノン管ともよばれ、日本ではステノ氏孔などともいう。耳下腺管は頬骨弓の下方約2cmの部を水平に走り、頬筋を貫いて上顎第2大臼歯対側の口腔粘膜に開口する。デンマークの解剖学者Niels Steno [Nicholas Stensen] (1638-1686)によって、1661年頃に発見された。後年、ステンセンはローマカトリックの司教となっている。)
- 673_13【Tensor veli palatini muscle口蓋帆張筋 Musculus tensor veli palatini】 o: Spine of sphenoid bone, scaphoid fossa, and anterior (lateral) lip of cartilaginous part of auditory tube, i: After changing direction at the pterygoid hamulus, its fibers merge with the palatine aponeurosis, stiffening the anterior (lateral) wall of the membranous lamina of auditory tube and tensing the soft palate. I: Mandibular nerve.
→(口蓋帆張筋は舟状窩、蝶形骨大翼下面の細い帯および耳管の膜性外壁から起始する。翼突窩のレベルで口蓋帆張筋はすでに腱に移行し、腱は翼突鈎をめぐって方向を転じて、水平に口蓋腱膜へ放射する。口蓋帆張筋は燕下swallowing or deglutionの時に耳管を開く作用がある。)
- 673_14【Pterygoid hamulus; *Hamulus of medial plate of pterygoid process翼突鈎 Hamulus pterygoideus】 Hooked process on the end of the medial plate of the pterygoid process.
→(翼状突起の内側板の下端は鈎形に外方に曲がって翼突鈎を作る。翼突下顎縫線という靱帯が起始する。)
- 673_15【Mucous membrane of mouth口腔粘膜 Tunica mucosa oris】 It is completely covered with nonkeratinized, stratified squamous epithelium and lacks a muscularis mucosae.
→(粘膜とは、体内の器官を被う面のうちで、体の外表につながるような面に対して与えられる名称である。そのような粘膜は、上皮epitheliumとこれを直下で支える結合組織(固有層と称する)との2つの基本要素からなる。固有層を作る結合組織の中には、ときに平滑筋層が存在するが、そのさいにはこの平滑筋層のことを粘膜筋板とよぶ。粘膜が表面に粘液を分泌する場合としない場合とがある。)
- 673_16【Levator veli palatini muscle口蓋帆挙筋 Musculus levator veli palatini】 o: Petrous part of temporal bone in front of the inferior opening of the carotid canal. Inferior border of the cartilaginous auditory tube, i: Palatine aponeurosis. It draws the soft palate backward and upward, also moving the dorsomedial cartilaginous part of auditory tube when the pharyngeal opening of auditory tube is opened. I: Vagus nerve.
→(口蓋帆挙筋は、口蓋帆張筋の後に位置し、側頭骨錐体部下面で頚動脈管の前部および耳管軟骨から起始する。口蓋帆挙筋は耳管に沿って斜め前・下方へ走り、軟口蓋にはいる。両側の口蓋帆挙筋の腱線維はからみ合って、高さが調節できる筋性ワナを形成する。)
- 673_17【Buccopharyngeal part of superior constrictor; Buccopharyngeal muscle頬咽頭部(上咽頭収縮筋の);頬咽頭筋 Pars buccopharyngea (Musculus constrictoris pharyngis superioris); Musculus buccopharyngeus】 o:Pterygomandibular raphe.
→(上咽頭収縮筋の頬咽頭部は翼突下顎縫線から起こり咽頭縫線につく。)
- 673_18【Palatopharyngeus muscle; Palatopharyngeal muscle口蓋咽頭筋;咽頭口蓋筋 Musculus palatopharyngeus; Musculus pharyngopalatinus】 o: Arises from the palatine aponeurosis in two portions, between which the levator veli palatini inserts, and from the pterygoid hamulus. I: Glossopharyngeal nerve.
→(口蓋咽頭筋はもっとも強力な咽頭の挙筋である。口蓋腱膜と翼状突起から放射状に始まり、大部分は口蓋咽頭弓の中を通って咽頭収縮筋の内面を下っていく。線維の一部は甲状軟骨の後縁に停止するが、一部は咽頭縫線を越えて咽頭の下部で対側の筋と吊り紐を形成する。吊り紐が短縮すると咽頭の背側壁は袋状に持ち上げられる。上咽頭収縮筋の内腔面を走る口蓋咽頭筋の付加的な筋束がほぼ円弧状に咽頭の後壁に達する。)
- 673_19【Uvulae muscle; Uvular muscle口蓋垂筋 Musculus uvulae】 o:Palatine aponeurosis. i: Connective tissue of the uvula. I: Vagus nerve.
→(口蓋垂筋は有対性に軟口蓋の腱膜から起こる。ときには口蓋骨水平板の後縁、鼻棘の両側からも起始する。有対の起始は単一の筋性円錐を形成し、収縮すると口蓋垂が短縮する。)
- 673_20【Palatoglossus muscle口蓋舌筋;舌口蓋筋 Musculus palatoglossus; Musculus glossopalatinus】
→(口蓋舌筋は横舌筋の線維束に継続して前口蓋弓に入って、口蓋腱膜に至る。)
- 673_21【Dorsum of tongue舌背 Dorsum linguae】
→(舌の上面を舌背という。)