833
- 833_00【Brain stem脳幹 Truncus encephali】 Collective anatomical term for the rhombencephalon and mesencephalon. The clinical definition includes the basal ganglia, diencephalon, and portions of the 【rhinencephalon】.
→(TAで脳幹は髄脳(延髄)、橋、中脳を脳幹と定義している。かつては、脳を運ぶ際に脳幹をもって運んでいた、脳幹は、脳の柄のような部分という意味で付けられた。日本の神経解剖の教科書では間脳を含める場合や間脳と大脳核を含めて脳幹と称している場合が多いので注意をようする。)
- 833_01【Hypothalamic sulcus視床下溝 Sulcus hypothalamicus】 Furrow extending from the interventricular foramen to the entrance to the cerebral aqueduct. It divides the dorsal and ventral portions of the thalamus.
→(視床下溝は第三脳室両側の外側壁にある溝で視床内側面と視床下部の間にある境界溝に一致する。室間孔から後交連までいたる。)
- 833_02【Body of fornix脳弓体 Corpus fornicis】 Middle, unpaired portion lying below the corpus callosum that is formed by the union of the two crura of the fornix.
→(脳弓体は脳梁の下にある脳梁の中央部で脳弓柱に続いて後走し、脳梁幹の下面と癒着しており、また左右が正中部で癒着している。脳梁幹の後部では再びこれと離れ、脳弓脚となる。)
Monro, Foramen of
- 833_03Monro, Foramen of【Interventricular foramen室間孔 Foramen interventriculare】 Opening between the lateral and third ventricles behind the genu of the fornix.
→(モンロー孔ともよばれる。左右の側脳室と第三脳室とを結ぶ連絡孔。スコットランドの医学者Alexander Monro II (1733-1817)により、1797年に発見された。彼の名前はモンロー・リヒター線Monro-Richter lineにも残っている。)
- 833_04【Septum pellucidum透明中隔 Septum pellucidum】 Thin dual layer of fibers stretched between the corpus callosum and fornix with an irregular slitlike space between them. It divides the anterior horns of the lateral ventricle from each other.
→(透明中隔は左右の側脳室前角を分離する一対の薄板である透明中隔板と、その間の狭い間隙である透明中隔腔からなる。透明中隔腔は成人ではしばしば閉鎖し、左右の透明中隔板が密着する。透明中隔腔は脳室ではなく、その内面には上皮細胞層が証明されない。透明中隔板は脳梁と脳弓の間に張られているが、発生学的には終脳胞の内側面の一部が脳梁の発達のため前頭葉から分離されたもので、痕跡的な大脳皮質の構造を示す。透明中隔は元来の中隔野の後部の一部で、中隔野には透明中隔のほか、前交連と終板の前にある終板傍回、梁下野、中隔核などが含まれる。)
- 833_05【Column of fornix脳弓柱 Columna fornicis】
→(脳弓柱は没部と出部からでる。没部は左右の乳頭体から始まり、視床下部内を前上方に走り、前交連の後ろで出部に移行する。出部は大脳半球の正中断面で見える部分で、上行するとともにしだいに左右が互いに近づき、ついで後背側方に走り、前方は透明中隔板と癒着している。出部は脳梁幹の下で脳弓体に移行する。)
- 833_06【Rostral lamina吻側板 Lamina rostralis】
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- 833_07【Rostrum of corpus callosum; Beak of corpus callosum脳梁吻 Rostrum corporis callosi】 Anterior end of the corpus callosum that tapers off inferiorly at the lamina terminalis.
→(脳梁吻は脳梁膝から後方屈曲して終板へ移行する脳梁の前端。)
- 833_08【Genu of corpus callosum脳梁膝 Genu corporis callosi】 Knee of the corpus callosum situated anterosuperior to the rostrum.
→(脳梁膝は脳梁の前端部で下方と後方にひだを形成し脳梁吻で終わる。線維は前方に向かって走り、前頭葉に放散している(小鉗子)。)
- 833_09【Paraterminal gyrus終板傍回;梁下回 Gyrus paraterminalis; Gyrus subcallosus】 Convolution situated inferior to the rostrum of corpus callosum and anterior to the lamina terminalis.
→(終板傍回は前頭葉の内側面では梁下野のすぐ後方にあり、後方は終板で限界されるが、下面では前有孔質の後方に接するようになる。この部は特に対角回として区別される。)
- 833_10【Posterior paraolfactory sulcus後嗅傍溝 Sulcus paraolfactorius posterior; Sulcus adolfactorius posterior】
→(後嗅傍溝は終板傍回と梁下野(嗅傍回)とを区切る半球内側面にある浅い溝。)
- 833_11【Anterior commissure前交連 Commissura anterior】 Commissure located anterior to the fornical column. It is readily visible in the anterior wall of the third ventricle.
→(間脳の前交連は第三脳室の前壁をつくる終板の後ろにある横走線維束である。前部は小線維束で、左右の両側の嗅脳系を結び、後部は大きな線維束で、左右両側の側頭葉に連絡する。前交連は小さな密な線維束で、脳弓柱の吻側で正中線を横切る。これは全体として自転車のハンドルに似た形態をしていて、肉眼標本では明瞭ではないが、2つの部分から構成される。前交連の小さい前部は肉眼標本ではあきらかでないが両側の嗅球を連絡している。大きい後部は主として両側の中側頭回および下側頭回の間を連絡する。)
- 833_12【Anterior paraolfactory sulcus前嗅傍溝 Sulcus paraolfactorius anterior; Sulcus adolfactorius anterior】
→(前嗅傍溝は梁下野(嗅傍回)の前縁をつくる溝。)
- 833_13【Paraolfactory area嗅傍野 Area paraolfactoria; Area adolfactoria】 Region lying anterior to the rostrum of corpus callosum and lamina terminalis.
→(嗅傍野と梁下野は多くの成書で同義として扱われていたが、梁下野は正式には皮質回ではなく、透明中隔の下面の連続である。TAにおいて梁下野(梁下回)と皮質回に相当する嗅傍野(嗅傍回)を区別している。大脳半球の内側面で脳梁膝の下、終板傍回(海馬の最前部に相当すると考えられている)のすぐ前方にある小部分である。解剖学の成書などではParolfactoryの単語をもちいている。)
- 833_14【Lamina terminalis終板 Lamina terminalis】 Thin wall forming the anterior boundary of the third ventricle.
→(終板は広義の第三脳室の吻側壁を形成する、三角形をした薄い膜状の組織であり、前交連から視交叉にかけての正中部にみられる。終板の尾側面は上衣細胞に被われており、吻側面は脳軟膜でおおわれ、さらにそのすぐ吻側には前交通動脈が通っている。組織学的にみると終板は外層と内層に分けられ、内層は主として神経膠細胞の突起で出来ている。)
- 833_15【Supra-optic recess; Optic recess視索上陥凹;視交叉上陥凹;視束陥凹;視交叉陥凹 Recessus supraopticus; Recessus opticus】 Recess of the third ventricle above the optic chiasm.
→(視交叉上陥凹は視交叉の上での第三脳室から伸びた陥凹。)
- 833_16【Infundibular recess漏斗陥凹 Recessus infundibuli; Recessus infundibularis】 Recess of the third ventricle that leads into the infundibulum.
→(漏斗陥凹は漏斗に対応する第三脳室の漏斗状の憩室、すなわち漏斗陥凹は漏斗の中間部までしか達していない。したがって、漏斗の近位部には達していない。漏斗の近位部には内腔があるが、遠位部には管腔はない。漏斗の近位部を漏斗中空部Pars cava infundibuli、遠位部を漏斗緻密部Pars compacta infundibuliと呼ぶ。)
- 833_17【Optic chiasm; Optic chiasma視神経交叉;視交叉;視束交叉 Chiasma opticum; Chiasma fasciculorum opiticorum】 Decussation of medial optic nerve fibers between the optic tract and optic nerve.
→(視神経交叉は視床下部の漏斗の吻側にある扁平な線維板で、視神経線維が交叉しているところ。視交叉の背側から両側に開いて出る線維束は視索である。第三脳室の終板と灰白隆起の間で視交叉は第三脳室の底の一部を成す(視交叉陥凹)。視交叉はその上面で(終板の前方)前交連動脈と接し、下面はトルコ鞍の鞍隔膜の上に乗っている。眼球網膜の鼻側半からの線維は交叉して対側へ行き、側頭半からの線維は同側を交叉せずに後方へすすむ。下垂体前葉から発生する腫瘍が視交叉を圧迫することがある。)
- 833_18【Infundibulum of pituitary gland漏斗(下垂体の) Infundibulum】 Pituitary stalk.
→(下垂体の漏斗は視床下部の腹側方の突出部とその中にある第三脳室の陥凹によって形成される。漏斗の最も遠位に突出した部分が下垂体後葉(神経下垂体)であり、漏斗の突出部と正中隆起を結合する組織は漏斗柄とよばれる。)
- 833_19【Pituitary gland; Hypohysis; Cerebral hypophysis下垂体;脳下垂体 Hypophysis; Glandula pituitaria】 Gland located in the sella turcica.
→(下垂体は間脳の視床下部から下方に突出する漏斗に連なる内分泌腺である。蝶形骨のトルコ鞍の下垂体窩に位置する無対の小器官で、大きさは前後径約0.5cmで、重さは男性約0.5g、女性ではそれよりやや重い。このような小さい器官であるが、10種類近くのホルモンを分泌し、全身のいろいろな器官の働きを調節している。下垂体は2種のまったく異なった由来をもつ組織が結合してできたもので、腺下垂体と神経下垂体とよばれる。前者は胎児の咽頭上壁が上方に膨出Rathke嚢から生じ、後者は第三脳室の底部である漏斗が下方に伸びだして生じたものであり、両者は厳密に結合している。一般に腺下垂体を前葉、神経下垂体を後葉と呼んでいる。Hypophysisは、「~の下に」を意味するギリシャ語の接頭詞hypoに、「成長する」という意味のギリシャ語phyeinを付けたもので、「下に向かって成長したもの」という意味である。)
- 833_20【Adenohypophysis; Anterior lobe; Anterior lobe of pituitary gland腺下垂体;下垂体前葉 Adenohypophysis; Lobus anterior hypophysis】 Anterior lobe of the pituitary gland. Embryologically derived from the roof of the pharynx. It is composed of cells with varying functions, mostly regulating other glands.
→(下垂体の前葉(主部)には数種の異なった内分泌細胞があり、腺細胞のほか、顆粒をもたない、おそらく非分泌性と思われる濾胞星状細胞folliculostellate cell)(色素嫌性細胞に対応する)があり、前葉は毛細血管に富んでいて、その内腔が広く洞様毛細血管(sinusoid)とよばれる。これは下垂体門脈系血管の連続である。下垂体前葉からのホルモンは成長ホルモン(GH)、乳腺刺激ホルモン(プロラクチン)(PRL)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)(これは卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)に分けられる)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が分泌される。)
- 833_21【Neurohypophysis; Posterior lobe of pituitary gland神経下垂体;下垂体後葉 Neurohypophysis; Lobus posterior】
→(下垂体後葉は神経組織から成るが、神経細胞体を含まず、神経膠細胞の一種である後葉細胞(pituicyteまたはpituitocyte)を含むのみである。その大部分は視床下部の視索上核および室傍核からのびてきた神経線維とその軸索終末で、多量の神経分泌物(neurosecretion)をふくむ。血管は豊富である。)
- 833_22【Anterior recess of interpeduncular fossa前陥凹(脚間窩の) Recessus anterior; Recessus rostralis (Fossa interpeduncularis)】
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- 833_23【Mammillary body乳頭体 Corpus mammillare】 Paired, rounded elevations on the floor of the diencephalon that are connected with the thalamus and mesencephalon.
→(乳頭体は有髄線維を豊富に含み、視床下部の乳頭隆起で内側および外側乳頭体核より成る。脚間窩に突出している左右1対の半球状の隆起、脳弓から海馬足の主要線維束を受け、視床前核と脳幹被蓋部とに線維を出す。内側乳頭体核は外側乳頭体核より大きいが、そのニューロンは比較的小さく、有髄線維のカプセルに包まれている。外側乳頭体核はずっと小さくて、「とくにヒトでは、見分けるのがむずかしい。」そのニューロンは内側乳頭体核のものよりも大きく、染色されやすい。乳頭体への入力線維は、海馬支脚(交連後部脳弓を介して)、視床下部腹内側核、中脳(乳頭体脚を介して)、などからくる。脳弓の線維数は非常に多い。脳弓線維は内側乳頭体核に終止するが、中には乳頭体を通り越して中脳被蓋ないし中心灰白質でシナプス結合するものもある。中脳から乳頭体への入力線維は、中脳中心灰白質および中脳網様体にある楔状核から起こり、乳頭体脚を通ってくる。乳頭体からの出力線維は大脳辺縁系の重要な要素である。内側乳頭体核から出る線維は明瞭な上行性線維束である主乳頭体束を作り、これは吻背側方へ向かう乳頭体視床路と、尾側方へ向かうこれよりも小さい乳頭体被蓋束に分かれる。乳頭体視床路線維は主として内側乳頭体核より起こり、視床前核群でシナプス結合する。視床前核は帯状回でシナプス結合する線維を出す。「海馬→脳弓→乳頭体→視床前核→帯状回」の回路は大脳辺縁系の中心的な回路としてしられている(Papezの情動回路)。乳頭体被蓋束の出力線維は内側乳頭体の背側部より起こり、中脳被蓋でシナプス結合する。)
- 833_24【Interpeduncular fossa脚間窩 Fossa interpeduncularis】 Depression between the cerebral crura.
→(脚間窩は左右の大脳脚間にある中脳後表面上の深い凹みで底面は出入りする小血管の為に多数の小孔を有する後有孔質によって形成される。)
- 833_25【Oculomotor nerve [III]動眼神経[脳神経III] Nervus oculomotorius [III]】 Nerve containing motor and parasympathetic fibers that exits the oculomotor sulcus and passes through the superior orbital fissure into the orbit.
→(動眼神経の主成分は動眼神経主核から出る体性運動性のもので外側直筋および上斜筋以外の眼筋を支配する。このほかに副交感性の動眼神経副核[Edinger-Westphal核]から出る線維が加わる。以上の2核から出る線維は多数の根をつくって大脳脚内側溝から出て1神経幹となり、滑車神経、外転神経および眼神経とともに、蝶形骨体の両側にある海綿静脈洞の上壁に沿ってすすみ、上眼窩裂を通って眼窩内に入り、上下の2枝に分かれる。上枝は上瞼挙筋および上直筋に、下枝は内側直筋、下直筋および下斜筋に分布する。また下枝からはきわめて短い動眼神経からの根が出て、毛様体神経節に入るが、これは動眼神経副核から出て、下枝を通って毛様体神経節に入る副交感線維にほかならない。)
- 833_26【Oculomotor sulcus動眼神経溝 Sulcus nervi oculomotorii】 Furrow on the medial surface of the cerebral crura where the oculomotor nerve fibers emerge.
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- 833_27【Posterior recess of interpeduncular fossa後陥凹(脚間窩の) Recessus posterior; Recessus caudalis (Fossa interpeduncularis)】
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Wernekink's decussation
- 833_28Wernekink's decussation【Decussation of superior cerebellar peduncles上小脳脚交叉;結合腕交叉;小脳大脳脚交叉;大被蓋交叉 Decussatio pedunculorum cerebellarium superiorum; Decussatio crurum cerebellocerebralium】 Crossing of the peduncles below the inferior colliculus and ventral to the medial longitudinal fasciculus.
→(上小脳脚は小脳核から出て初めは表面を走るが、下丘の高さで奥に入り交叉して一部は対側の赤核に終わり、一部は視床に至る。この交叉を上小脳脚交叉という。)
Varolius, Pons of
- 833_29Varolius, Pons of【Pons橋 Pons】 Part of the brain situated between the interpeduncular fossa and the pyramids. It surrounds the anterior part of the fourth ventricle and consists mainly of descending tracts from the cerebrum that travel to nuclei, synapse, cross, and continue to the cerebellum.
→(Ponsとは、橋(ハシ)という意味である。腹側から見ると左右の小脳半球の間に架かった太鼓橋の様に見えるところから橋という名前が付けられた。比較解剖学的には、橋が延髄から区別されるのは哺乳類に限られ、橋は人類で最もよく発達している。後脳の腹側部にあたる。すなわち、小脳の腹側に位置しており、延髄と中脳の間に介在する。橋の腹側面は横走する幅広い神経線維束(横橋線維)によっておおわれる。この神経線維束はさらに橋の外側面において、橋と小脳を連結する中小脳脚を形成しており、左右の小脳半球の間にかかる「橋」のようにみえる。橋は既にユースタキウスEustachius (1524-1574)の図に載っているというが、この図は1714年まで出版されなかったので、Ponsという名称は、このような外見に基づいて、イタリアの解剖学者であり外科医でもあったC.Varolio (1543-1573)が用いたものである(ヴォロイオ橋)。橋は横断面では橋腹側部または橋底部と橋背部または橋被蓋とに区分される。両者の境界は橋被蓋の腹側部を上行する内側毛帯の腹側縁にあたる。橋底部の神経線維群には、上記の横橋線維のほかに、橋底部の中心部を縦走する橋縦束があり、神経細胞としては橋縦束を取り囲んで橋核が存在する。橋縦束の線維はその大部分が大脳皮質からの下行神経線維であり、橋核に連絡する皮質橋核路を含む。橋核は大脳皮質からおこる求心性神経線維のほか、小脳核や上丘からおこる求心性神経線維を受けることが知られている。橋核からおこる遠心性神経線維は横橋線維、ついで中小脳脚を形成して、主として反対側の小脳半球の皮質に連絡する。また、その際、小脳核、とくに歯状核に側枝を送る可能性が大きい。このように、橋縦束・橋核・橋横線維は大脳皮質や小脳半球など、系統発生的に新しい部位との関係が深く、哺乳動物ではじめて出現する構造であって、高等な哺乳類において良好な発育を示す。 一方、橋被蓋は系統発生的に古い構造であり、脳幹網様体の基本構造を示す部位がもっとも広い領域を占める。脳神経核としては、三叉神経核(主感覚核・脊髄路核・中脳路核・運動核)・顔面神経核・内耳神経核(蝸牛神経核と前庭神経核)が存在する。また、橋被蓋の外側部を上行する外側毛帯、および橋被蓋の腹側部を横走する台形体の線維は聴覚路を形成する神経線維群であり、聴覚神経路の中継核として、外側毛帯核および台形体核が存在する。その他の線維群としては、第四脳室底の腹側において正中線背側部の両側を内側縦束が縦走し、上小脳脚が第四脳室蓋の外側部を形成している。また、神経細胞群としては、橋被蓋の背外側部に青斑核が、上小脳脚の周辺部には結合腕傍核が存在する。)
- 833_30【Superficial pontine fibres浅橋線維 Fibrae pontis superficiales】
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- 833_31【Longitudinal pontine fasciculi; Longitudinal pontine bundles橋縦束;縦束 Fasciculi longitudinales pontis】
→(橋縦束は皮質遠心性の太い神経束で、橋腹側部を縦走する。皮質網様体、中脳蓋橋、皮質橋、皮質延髄、および皮質脊髄線維からなる。)
Vicq d'Azyr's foramen
- 833_32Vicq d'Azyr's foramen【Foramen caecum of medulla oblongata; Foramen cecum of medulla oblongata延髄盲孔;盲孔(延髄の) Foramen caecum medullae oblongatae】 Depression on the posterior border of the pons that forms the end of the anterior median fissure.
→(延髄盲孔は延髄の上端、橋の下端にあり、延髄の前正中裂の上限を示す錐体の間にある小さい三角形の陥凹。)
- 833_33【Medial longitudinal fasciculus; MLF内側縦束 Fasciculus longitudinalis medialis】 Bundle of various fiber systems that enter and leave at different levels. Its fibers interconnect the motor nuclei of cranial nerves and also connect the vestibular apparatus with ocular muscles, neck muscles, and the extrapyramidal system. This serves to coordinate muscle groups, e.g., masticatory, tongue, and pharyngeal muscles when swallowing or speaking; or ocular muscles for movements of the globe.
→(前索の後部には脳幹のいろいろなレベルにある種々な神経核からでる複雑な下行線維束がある。この複雑な神経線維束は内側縦束として知られている。この神経束の脊髄部は同じ名称で呼ばれる脳幹にある伝導路の一部にすぎない。内側縦束の上行線維は主として前庭神経内側核および上核から起こり、同側性および対側性に主として外眼筋支配の神経核(外転、滑車、動眼神経核)に投射する。内側核からの上行線維は主に交叉をし、両側の外転神経核と左右の動眼神経核に非対称性に終わるが、滑車神経核へは対側性に投射する。上核の中心部にある大形細胞は非交叉性上行線維を内側縦束に出し、これは滑車神経核および動眼神経核に終わる。同核の周辺部にある周辺部にある小型細胞は交叉性の腹側被蓋束(内側縦束の外側にある)を経て動眼神経核に投射するが、これは主として対側の上直筋を支配する細胞に作用する。生理学的には、前庭神経核から外眼筋支配核から外眼筋支配核への上行性投射のうち、交叉性線維は促進的に働くが、非交叉性線維は抑制的に働く。内側縦束にはこのほかに、左右の外転神経核の間にある神経細胞から起こり、交叉して上行し、動眼神経核の内側直筋支配部に終わる明瞭な線維が含まれる。この経路は一方の外転神経核の活動を対側の動眼神経核内側直筋支配部へ連絡する物で、外側視の場合に、外側直筋が収縮すると同時に対側の内側直筋が共同して収縮するための神経機構を形成している。内側縦束の上行線維の一部は、動眼神経核を回ってCajal間質核に終わる。これは内側縦束内にうまっている小さい神経細胞群である。前庭神経内側核は対側性に間質核へ投射するが、上核は同側性に終わる。前庭神経二次線維は両側性に視床の中継核へ投射し、その数は中等度で、後外側腹側核に終止する。前庭からの入力を受ける視床の細胞は体性感覚情報にも対応するが、これは視床には特定の前庭感覚中継核がないことを示唆している。)
- 833_34【Spinal cord脊髄 Medulla spinalis】 It extends from the end of the medulla oblongata near the exit of the first spinal nerve to the beginning of the terminal filum at L1 or L2.
→(脊髄は頚部(頚髄)、胸部(胸髄)、腰部(腰髄)、仙骨部または脊髄円錐(仙髄と尾髄)とからなり、それぞれ髄節に分かれ、それに対応して31対の脊髄神経が出る。頚髄では8対の頚神経、胸髄では12対の胸神経、腰仙髄では各々5対の腰神経と仙骨神経とが出る。尾髄からは通常1対の尾骨神経が出る。上肢および下肢支配の神経の出る頚髄下部と腰髄下部は発達が著しく、太くなっており、それぞれ頸膨大、腰部大とよばれる。脊髄下端は細くなり脊髄円錐となっておわる。その高さは成人では第1ないし第2腰椎の高さに相当する。新生児、幼児では低く第3腰椎の高さでおわっている。脊髄円錐の先はさらに細く糸状の終糸となって尾骨の背面に付着している。終糸に沿って走る脊髄神経の束はその形状から馬尾とよばれている。脊髄外側面でその腹側と背側の正中には(前)正中裂および(後)正中溝とよばれる溝があり、脊髄を左右の半分に分けている。前者は後者より深く、そこには前脊髄動脈が走っている。左右の脊髄半の外側面には腹側の前外側溝と背側の後外側溝の二つの溝がある。頚髄の高さの背側面は中心部の灰白質とその周辺の白質から成る。灰白質はそれぞれ前角(柱)、中間質(帯)、後角(柱)がある。灰白質の中央を貫いて中心管が通る。上方は第四脳室に開き、下方は脊髄炎水の所では拡大して終室となる。白質は前外側溝と後外側行と②より腹側の前索と外側の側索および背側の後索の3部分に分けられる。頚髄の高さで後索は後中間溝により内・外の薄束と楔状束とに分けられる。)
- 833_35【Trunk of corpus callosum; Body of corpus callosum脳梁幹;脳梁体 Truncus corporis callosi】 Portion between the splenium and genu of corpus callosum.
→(脳梁幹は脳梁膨大と脳梁膝の間の主に脳梁の弓状部分。)
- 833_36【Interthalamic adhesion; Massa intermedia視床間橋;中間質 Adhesio interthalamica; Massa intermedia】 Inconstant fusion (70-85%) of the right and left parts of the thalamus.
→(視床間橋は背側視床の内側面は第三脳室に面し、上衣層におおわれ、その中央よりやや前方には視床間橋(中間質)がある。橋状に左右の視床を結ぶ。これはヒトでは退化的で、しばしば欠如する(20%)。)
- 833_37【Thalamus; Dorsal thalamus視床;背側視床 Thalamus】 Part extending from the interventricular foramen to the tectal plate. Medially it borders on the third ventricle, laterally on the internal capsule and basal ganglia. It is formed by a collection of nuclei derived during ontogenetic development from the dorsal thalamus.
→(視床は、間脳の大きいほうの背側部分を形成する灰白質。背側間脳溝と視床下溝の間の領域であるが、発生の間に大きく発育して、間脳背側部の広い範囲を占めるようになる。間脳は個体発生上、背側視床、腹側視床、視床下部および視床上部の四つの部位に分けられるが、その中で最も大きな部位を占めるのが背側視床である。単に視床といった場合は背側視床を指す。視床は第三脳室の両壁をなす卵円形の構造で、背側の遊離面は薄い髄質から成る帯層におおわれ、肺内側端に視床上部の構造である視床髄条が、前端より後方に走り手網核に付く。また背外側端は分界条によって終脳の尾状核と、外側方は外髄板によっておおわれ腹側視床の視床網様核と境されている。左右の視床は第三脳室内にまたがる視床間橋(中間質)によってつながり、視床下溝で視床下部と境される。視床の内部を構成している視床核は視床脚を介して大脳皮質と相互に結合する。内部には内髄板とよばれる線維板視床を内側部、外側部および前部に分けている。視床は感覚系と統合系との非常に重要な連絡部位である。嗅覚路以外のすべての感覚路がそれぞれ相当する視床の領域に投射する。「最近の研究によれば、嗅覚系も視床を投射する可能性がある」。視床で処理された感覚系情報の流れは視床大脳皮質線維を経て大脳皮質へと送られるが、大脳皮質の側からは多数の大脳皮質視床線維を介して視床における情報処理系に影響が及んでおり、したがって、視床と大脳皮質とは一つの機能単位としてはたらく。「運動」情報は小脳と大脳基底核を経て伝達され、統合系(大脳辺縁系や脳幹網様体など)からのさらに複雑な情報も視床に達する。したがって、視床は一方では大脳辺縁系と脳幹網様体との連結点として機能し、他方では大脳皮質も連絡しているわけである。)
- 833_38【Tela choroidea of third ventricle第三脳室脈絡組織 Tela choroidea ventriculi tertii】 Thin layer of pia mater covered with ependymal cells extending between the right and left tenia thalami.
→(第三脳室脈絡組織は脳軟膜が大脳半球の後頭葉と小脳の間を通り、さらに脳梁膨大と松果体の間(大脳横裂)から入って第三脳室の上壁を作っているもので、上葉と下葉とからなり、両者の間はクモ膜下組織にによって満たされ、1対の内大脳静脈を含む。第三脳室脈絡組織は全体として頂点を前に向けた三角形をなし、その頂点は脳弓柱、底辺は脳梁膨大、左右の外側辺は付着板の内側縁をなす脈絡ヒモによって作られる。この正中部は第三脳室の上壁を形成し、その下面は第三脳室上衣板でおおわれ、ここから下方に向かい、正中線に沿って左右1対の第三脳室脈絡叢がでる。これらは外側方は視床髄条の表面に視床ヒモをもって付着する。第三脳室脈絡組織の外側部は視床の背側面をおおい、さらに外側方に延びて脳弓(海馬采を含む)と分界条との間にある裂隙、すなわち脈絡裂を通って側脳室の中心部および下角に入り込む。脈絡裂の全長にわたってこの部から側脳室に向かい側脳室脈絡叢が出る。これは内側は脳弓ヒモに、外側は脈絡ヒモに付き、前方は室間孔を通って第三脳室脈絡叢に続き、後方は側脳室の中心部から下角に向かって延びる。中心部と下角の移行部では側脳室脈絡叢が肥厚し、これを脈絡糸球という。)
- 833_39【Third ventricle第三脳室 Ventriculus tertius】 Diencephalic part of the cerebral ventricular system. It extends from the lamina terminalis to the cerebral aqueduct.
→(第三脳室は左右の間脳の間にある背腹方向にスリット状を示す腔である。前壁は終板と前交連によってつくられる。前上部には室間孔が開口し、左右の側脳室と交通し、後方は中脳水道と連絡する。後壁は松果体に入り込む松果体陥凹がみられ、下壁は視床下部によってつくられ、視交叉陥凹、漏斗陥凹がみられる。外側壁を形成している視床と視床下部の境には視床下溝が走る。なお、脳室の前上方部に第三脳室終脳部とよばれる部分がある。)
- 833_40【Opening of aqueduct of midbrain; Opening of cerebral aqueduct中脳水道口 Apertura aqueductus cerebri mesencephali】 Funnel-shaped opening of the cerebral aqueduct into the third ventricle below the posterior commissure of the diencephalon.
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- 833_41【Posterior commissure後交連 Commissura posterior; Commissura epithalamica】 Commissure situated between the pineal recess and the opening of cerebral aqueduct. Crossing site of fibers from the surrounding area.
→(後交連は、中脳と間脳の背側における境界をなす。この小さな交連は中脳水道と第三脳室の移行部で上丘の上方の中心灰白質の背側にある。交連線維は外側で扇状にひろがり、その周囲を後交連核と総称される細胞が取り囲む。これまで明らかにされた後交連の構成線維は、①視蓋前核、②後交連核、③間質核からの線維がある。瞳孔の対光反射に関与する線維は後交連で交叉する。後交連の下方の中脳水道上衣は線毛をもつ高い柱状細胞よりなる。このような変形上衣細胞は交連下器官を形成し、分泌機能をもち、脳室周囲器官の一つとされている。交連下器官は中脳において脳血液関門をもたない唯一の部分である。)
- 833_42【Pineal recess松果体陥凹;松果陥凹 Recessus pinealis】 Outpocketing of the third ventricle that extends partly into the epiphysis.
→(松果陥凹は部分的には松果体にも達する第三脳室の陥凹。)
- 833_43【Habenular commissure手綱交連 Commissura habenularum】 Fibers from the habenula that pass over the middle line, crossing cranial to the pineal recess.
→(手綱交連は左右の手綱核からの線維の交叉。交叉部は松果陥凹の上方にある。)
- 833_44【Suprapineal recess松果体上陥凹;松果上陥凹 Recessus suprapinealis】 Indentation between the roof of the third ventricle and epiphysis.
→(松果上陥凹は第三脳室の後方部からの種々の膨出部と松果体との間の陥凹で、松果陥凹の上後方へのびている。)
- 833_45【Pineal gland; Pineal body松果体;松果腺 Glandula pinealis; Epiphysis cerebri; Corpus pineale】 It develops from the roof of the diencephalon and overlies the tectal plate.
→(松果体は円錐形の小体で、後交連の領域で、第三脳室の天井に付着している。これは痕跡的な腺であるらしく、血管の豊富な結合組織の小柱の網工からなり、その網眼の中には神経膠細胞および松果体細胞pinealocytesあるいはepiphysial cellがみられる。サルの松果体細胞はセロトニン(5-HT)とコレシストキニン(CCK)を含んでいる。哺乳類の松果体細胞は、系統発生学的には、感覚神経性光受容体の要素と関係しており、これは、分泌細胞になる物が多いが、間接的に光受容性をもっている。これらの突起の棍棒状をした終末は、血管血管を取り囲む血管周囲腔に接して終わる。松果体の分泌のうちで最もよく知られた物は、セロトニン、ノルアドレナリンおよびメラトニンという生体産生アミンであるが、その他に、サイロトロピン遊離ホルモン(TRH)、黄体形成ホルモン遊離ホルモン(LHRH)およびソマトスタチン(SRIF)のような、視床下部で形成されると同定されたペプチドを、かなりの濃度で含んでいる。セロトニンは、松果体細胞の中で合成されて細胞外の隙間に放出される。ノルアドレナリンは、松果体の実質細胞に終止ししている交感神経ニューロンの中で合成される。松果体は、昼間光の変動に敏感なN-アセチルトランスフェラーゼおよびヒドロキシインドール-o-メチルトランスフェラーゼという2つの酵素の働きによって、セロトニンからメラトニンを合成する。メラトニン合成の毎日の変動は周期性であり、光入力の毎日の周期に直接関係している。光は、日周期を環境の光周期に一致させる。そして、さらに、まだ確認されていない経路を経て、神経性信号が松果体に運ばれることを速やかに遮断するように働く。N-アセチルトランスフェラーゼの活性は、昼夜に高められるが、光にさらすと、酵素の活性が失われる。視床下部の視交叉上核を両側性に傷害すると、この核は網膜視床下部経路を受けているので、松果体のN-アセチルトランスフェラーゼにおける周期がなくなり、その結果、ヒドロキシインドール-o-メチルトランスフェラーゼの活性のレベルが下がる。そのような傷害によって、自発運動の活性の日周期および栄養補給と水飲み行動の両方の日周期がなくなる。雄のネズミでは、視交叉上核の傷害によって、正常な発情周期がなくなる。網膜視床下部路は、視交叉上核の構造との直接の相互作用によって、松果体のはたらきを変える。環境の光は、日周期をその周期に一致させる働きと伝達する働きをもっているとみなされ得る。内在性振動発生装置を光周期にのせるための光後下はゆっくりであるが、信号伝達に及ぼす光の後下は速やかである。そして、それによって、光によってN-アセチルトランスフェラーゼが速やかに“消失”することと、持続光によって日周期が妨げられることを、おそらくは説明できるであろう。視交叉上核からの単一神経路が、松果体によるメラトニン形成に関係する両酵素を調節しているが、これらの結合についての詳細は、なお、あきらかになっていない。間接的に証明された根拠は視交叉上核から松果体への神経路には、視床下部の灰白隆起の領域、内側前脳束および中間質外側路への中継路が含まれることを示唆している。このように、松果体は、交感神経ニューロンを経て受けた信号をメラトニンという内分泌物に変換させる、神経内分泌変換体ともいうべきものであるらしい。松果体の分泌は視床下部の働きを変化さえるが、それは、内分泌が心身の血液循環あるいは、脳脊髄液に入ってからののちに作用する。松果体のセロトニンとメラトニンの日内変動は、光入力の周期に応じて起こる。松果体活動のこれらの周期性変化は、この腺が生物学的時計としてはたらいて、生理学的過程と行動学的過程とを調節する信号を出していることを示唆している。これらの変動は日周期circadian rhythmsと呼ばれ、環境からの刺激が存在すれば、ほぼ24時間周期を示すだけである。松果体実質の腫瘍は、性的機能を低下させて思春期を送らせるが、他方、松果体を破壊するとしばしば早発思春期を伴う。これらの観察は、松果体が、性腺および生殖器系に抑制的影響を及ぼすことを示す実験的研究の結果と一致する。)
- 833_46【Tectal plate; Quadrigeminal plate蓋板;四丘体板;四丘板 Lamina tecti; Lamina quadrigemina】
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Sylvius, Aqueduct of
- 833_47Sylvius, Aqueduct of【Aqueduct of midbrain; Cerebral aqueduct中脳水道;脳水道 Aqueductus mesencephali; Aqueductus cerebri】 Narrow canal in the mesencephalon between the third and fourth ventricles.
→(中脳水道はシルビウス水道ともよばれる。中脳では脳室系は細い管となり、間脳の第三脳室と菱脳の第四脳室とを結合する。これを中脳水道と称し、横断面は円形または底辺を背側に向けた角のとれた三角形をなし、中心灰白質によってかこまれる。その存在については古くから知られていたが、フランスの解剖学者Jacobus Sylvius (1478-1555)の著書(1555年)で初めて説明がなされた。)
- 833_48【Splenium of corpus callosum脳梁膨大 Splenium corporis callosi】 Bulging, exposed posterior end of corpus callosum.
→(脳梁膨大は脳梁幹の後端は著しく膨大化し、松果体と蓋板とを上方から被っている。膨大部と中脳との間の大脳横裂からは脳軟膜が進入し、脈絡組織を形成する。)
- 833_49【Nucleus of trochlear nerve; Trochlear nucleus滑車神経核 Nucleus nervi trochlearis】 Nucleus situated in the periaqueductal gray substance above the medial longitudinal fasciculus.
→(滑車神経核は下丘の高さで、中心灰白質の腹内側にあり、動眼神経核の直接尾方延長部にあたる。これは動眼神経主核と同様に多極性の大細胞からなり、これから出る根線維は中心灰白質の外側部を背側方でやや下方に走り、下丘の下で完全交叉をおこない(滑車神経交叉)、脳を出る。なお滑車神経核の背側で中心灰白質中には背側被蓋核が認められ、また内側縦束の腹側には腹側被蓋核が区別される。)
- 833_50【Superior medullary velum上髄帆;前髄帆 Velum medullare superius; Velum medullare anterius】 Layer of white substance stretched between the two cerebellar peduncles. It is fused with the lingula.
→(上髄帆は両側の上小脳脚の間にある薄い白質板で、第4脳室の上陥凹の被蓋を形成する白質の薄い層。背側は小脳小舌と癒着する。)
- 833_51【Central lobule of cerebellum [II and III]小脳中心小葉;中心小葉[第II・III小葉] Lobulus centralis cerebelli [II et III]】 Lobule that is continuous with the wing of the central lobule. It consists of an anterior and a posterior part.
→(小脳の中心小葉は小脳小舌と山頂の間にある小脳上虫部の部分で、Larsellの区分に従えば小葉(Ⅱ)と小葉(Ⅲ)に分けられる。)
- 833_52【Culmen [IV and V]山頂[第IV・V小葉] Culmen [IV et V]】 Summit of the vermis of cerebellum,
→(山頂は小脳虫部前部の突起部分で、第1裂の上方の虫部葉。Larsellの区分に従えば小葉(Ⅳ)と小葉(Ⅴ)に分けられる。)
- 833_53【Lingula of cerebellum [I]小脳小舌;第I小葉 Lingula cerebelli [I]】 Unpaired part of the vermis belonging to the archicerebellum that is fused with the superior medullary velum.
→(小脳小舌は小脳虫部の前端(または上端)を形成し、2つの盛り上がる上小脳脚の間の上髄帆の表面上を前方へのびる。Larsellの区分に従えば小葉(Ⅰ)に相当する。Larsellは比較解剖学的立場より、小脳虫部の小葉にⅠからⅩまでの番号を付した。一方、人の小脳虫部は9の虫部小葉と、Larsellの小葉の対応関係は単純ではない。)
- 833_54【Fourth ventricle第四脳室 Ventriculus quartus】 Dilatation of the embryonic neural tube lumen in the rhombencephalon.
→(第四脳室は菱脳の中にできる脳室で、頭方は中脳水道に、尾方は中心管につづく。第四脳室はその上壁をなす第四脳室蓋と底部の菱形窩により囲まれる。第四脳室蓋の前方は左右の上小脳脚とその間にある薄い白質板の上髄帆とからなる。上髄帆は尾側に伸びて上髄帆小帯となる。第四脳室蓋の後方は下髄帆と第四脳室脈絡組織とからなる。前者は虫部小節と片葉との間にある薄い白質板で、その下面をおおう上衣細胞の尾方延長部は軟膜によっておおわれる。この軟膜が第四脳室脈絡組織(上衣細胞と粘膜とを脈絡組織と呼ぶ場合もある)で、そこに出入る血管とともに脈絡叢をつくる。第四脳室脈絡組織の延髄への付着部が第四脳室ヒモである。第四脳室は左右の第四脳室陥凹に開く第四脳室外側口(Lateral aperture)と尾方の第四脳正中口とによりクモ膜下腔と交通する。)
- 833_55【Fastigium of fourth ventricle室頂(第四脳室の) Fastigium ventriculi quarti】 Transverse summit of the roof of fourth ventricle.
→(第四脳室の天蓋は小脳と上髄帆および下髄帆で、その頂点は室頂と呼び小脳内に尖部にまで達している。)
- 833_56【Declive [VI]山腹[第VI小葉](小脳の) Declive [VI]】 Part of the vermis sloping downward and posteriorly from the culmen.
→(小脳の山腹は小脳虫部で山頂より背側へ下る部分で、第一裂の下方の虫部葉、Larsellの区分に従えば小脳虫部の小葉(Ⅵ)に相当する。)
- 833_57【Cerebellar white lamina小脳白質板;小脳髄板 Laminae albae cerebelli】
→(小脳白質板は小脳の切断面にみられる白質の層。)
- 833_58【Folium of vermis [VII A]虫部葉[第VII A小葉] Folium vermis [VII A]】 Narrow, leaflike structure connecting the left and right superior semiiunar lobules.
→(虫部葉は左右の上半月小葉間をむすぶ狭い帯部。Larsellの区分に従えば小葉(Ⅶa)に相当する。)
- 833_59【Tuber of vermis [VII B]虫部隆起[第VII小葉] Tuber vermis [VII B]】 Median connection between the right and left inferior semiiunar lobules.
→(小脳の虫部隆起は小脳虫部下方の後部で、虫部葉と虫部錐体の間に位置する。Larsellの区分に従えば小葉(Ⅶb)に相当する。)
- 833_60【Pyramis; Pyramid of vermis [VIII]虫部錐体[第VIII小葉] Pyramis vermis [VIII]】 Lobule situated posterior to the prepyramidal fissure.
→(小脳虫部錐体は小脳虫部葉下方で虫部隆起と虫部垂の間の部分。Larsellの区分に従えば小葉(Ⅷ)に相当する。)
- 833_61【White matter; White substance; Medullary body (of cerebellum)小脳白質;小脳髄体;小脳の髄体 Corpus medullare cerebelli】
→(小脳髄体は小脳の内部にあり、これから小脳回に向かって突起、すなわち白質板(髄板)を出す。髄体は小脳内を互いに連絡する線維と、小脳に出入りする線維からなる。前者には同側の小脳皮質の各部の間を結合するもの(連合線維)、両側の皮質を結ぶもの(交連線維)および皮質から小脳核に至るもの(小脳皮質核線維)がある。小脳皮質核線維には局在が認められ、小脳半球部の大部分は歯状核と結合し、虫部は主として室頂核に、半球部と虫部の中間部は球状核および栓状核と結合する。片葉と小節は前庭神経核に線維を出している。小脳核から出る線維は小脳の遠心路をなし、小脳脚を通って小脳を出る。小脳に入る線維は小脳脚を経て直接小脳皮質に分布する。これには2種類がある。苔状線維は顆粒層内で盛んに分岐して小脳糸球を作り、顆粒細胞の樹状突起と連接して終わるが、登上線維はPurkinje細胞体のまわりにからみ、ついでその樹状突起をよじのぼりつつ分子層を上る。苔状線維は脊髄小脳路、副楔状束核小脳路、橋小脳路、網様体小脳路および前庭神経路の終末と考えられれ、登上線維はオリーブ小脳に続くといわれる。)
- 833_62【Uvula vermis [IX]虫部垂[第IX小葉] Uvula vermis [IX]】 Part of the vermis situated between the tonsils of cerebellum.
→(小脳虫部垂は小脳虫部上の三角形の隆起で、錐体の前方の2つの扁桃の間にある。Larsellの区分に従えば小葉(Ⅸ)に相当する。)
- 833_63【Tela choroidea of fourth ventricle第四脳室脈絡組織 Tela choroidea ventriculi quarti】 Thin layer of pia mater and ependyma forming the inferior part of the ventricle roof. It is attached laterally to the tenia thalami, leaving the lateral and median apertures open.
→(第四脳室脈絡組織は小脳と延髄の間から入り、第四脳室蓋の後部を作る。全体としては底辺を上方に、頂点を下方に向けた三角形を呈し、底辺は下髄帆および小節に付着し、外側片は左右の第四脳室ヒモに付き、頂点は閂に相当する。底辺の両端および閂にはそれぞれ1対の第四脳室外層口および1つの第四脳室正中口がある。第四脳室脈絡組織はその内面から第四脳室に向かって第四脳室脈絡叢を出している。これは第四脳室正中口にはじまり、正中線に沿って上方に左右1本ずつ走り、小節の付近で左右のものが分かれ、それぞれ外側方に向かい第四脳室外側口に達し、その一部は外側口から出ている。)
- 833_64【Nodule of vermis [X]小節;虫部小節[第X小葉] Nodulus vermis [X]】 Medial protuberance of the vermis. It is connected with the flocculus via the peduncles of flocculus.
→(小脳虫部小節は片葉脚により片葉と連絡する虫部の隆起。Larsellの区分に従えば小脳半球の小葉(Ⅹ)に相当する。)