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- 958_00【Thigh大腿 Femur】
→(身体下部の近位部で、骨盤から膝まで。)
- 958_01【Lateral cutaneous nerve of thigh; Lateral femoral cutaneous nerve; Fibular femoral cutaneous nerve外側大腿皮神経;大腿の外側皮神経;腓側大腿皮神経 Nervus cutaneus femoris lateralis; Nervus cutaneus femoris fibulalis】 It arises from L2 and L3 and emerges at the lateral border of the psoas. It travels beneath the iliac fascia through the lateral part of the muscular space and either deep or superficial to the sartorius, continuing to the skin of the lateral aspect of the thigh.
→(外側大腿皮神経(L2,L3)は、大腰筋の外側縁から出現し、壁側腹膜と腸骨筋膜(この神経の支配を受ける)の後方で腸骨筋を斜めに越える。上前腸骨棘の方向へ進み、鼡径靭帯外側端を越えるるか、あるいはこれを貫通して大腿に入る。ついで、外側大腿皮神経は、縫工筋近位部を越えるか、あるいは貫通した後、大腿筋膜の深部を下行する。鼡径靱帯の下方約10cmで大腿筋膜を貫くが、それ以前に、この神経を覆う皮膚に数多くの小枝を出す。外側大腿皮神経の終末枝は大腿骨大転子と膝との間で、大腿の前外側面を覆う皮膚と筋膜に分布する。)
- 958_02【Muscular branches of femoral nerve筋枝(大腿神経の) Rami musculares (Nervus femoralis)】 Branches to the sartorius, pectineus, and quadriceps femoris.
→(縫工筋、恥骨筋および大腿四頭筋へいたる枝。(Feneis))
- 958_03【Iliacus muscle腸骨筋 Musculus iliacus】 o: Iliac fossa, hip joint capsule. I: Femoral nerve, lumbar plexus.
→(腸骨稜の下方に腸骨筋膜に囲まれて存在する。腸骨窩に起始し、大腰筋との共同腱によって小転子前面と股関節嚢に停止する。腰神経叢によって神経支配され、大腿の屈曲の内旋に作用する。)
- 958_04【Sartorius muscle縫工筋 Musculus sartorius】 o: Anterior superior iliac spine, i: Medial to the tibial tuberosity. Flexion, abduction, lateral rotation at the hip joint; flexion and medial rotation at the knee joint. I: Femoral nerve.
→(縫工筋は大腿前部浅層の筋。上前腸骨棘からラセン状に大腿前面と内側面を走る。大腿筋膜がつくる筋膜の鞘に包まれている。その弓状走行により、同筋は背側にある膝関節の屈曲軸を横切ることになる。停止腱は遠位かつ腹側へ斜走し、脛骨内側面(脛骨粗面のうしろ)が鵞足に、また下腿筋膜に停止する。鵞足は縫工筋(浅層)、薄筋および半腱様筋(深層)の末広がりの停止腱が1カ所に集まってできる。その様子は鵞の足の水掻きが折れ重なったようにみえる。鵞足は内側側副靱帯とは鵞足包で隔てられ、その腱線維は脛骨内側面に放散する。また、浅層の線維は下腿筋膜に続く。かつて縫工(仕立屋)は作業をするときに、あぐらをかくように脚をむく姿勢をとった。このように、大腿を屈曲・外転・外旋し、かつ膝を屈曲するのに、縫工筋が働くと考え、名付けられた。)
- 958_05【Quadratus femoris muscle大腿方形筋 Musculus quadratus femoris】 o: Ischial tuberosity. i: Intertrochanteric crest. Lateral rotation and adduction. I: Sacral plexus.
→(大腿方形筋はほとんど筋性で、大腿骨が正常位にあれば四辺形である。坐骨結節から転子間稜へ横走する。筋の大きさから予想する以上にこの筋が効果的に股関節外施に働くのは筋力のほとんどが外施に有効となるような筋線維走行だからである。)
- 958_06【Anterior cutaneous branches of femoral nerve前皮枝(大腿神経の) Rami cutanei anteriores (Nervus femoralis)】 Cutaneous nerves supplying the distal three-fourths of the anterior side of the thigh as far as the patella.
→(大腿神経の前皮枝は大腿の前面と内側面に分枝し、大腿前面を膝蓋にいたる下部3/4の皮膚へ分布し、感覚を伝える。)
- 958_07【Common iliac artery総腸骨動脈 Arteria iliaca communis】 It extends from the aortic bifurcation at the fourth lumbar vertebra to its division into the internal and external iliac arteries in front of the sacroiliac joint. Its branches are insignificant.
→(総腸骨動脈は腹部大動脈の第四腰椎の前で大動脈から分かれる左右1対の終枝。仙骨岬角のレベルにおける仙腸関節の前で、内・外腸骨動脈に分枝する。とくに記載するほどの枝はない。)
- 958_08【Femoral nerve大腿神経 Nervus femoralis】 Thickest branch of the lumbar plexus, which arises from L2-L4. It emerges at the lateral border of the psoas and travels in the muscular space between it and the iliacus. It divides below the inguinal ligament.
→((Netter)大腿神経(L2,L3,L4)は、腰神経叢から出る最大の枝で、腸骨筋と大腿前面の筋群を支配し、股関節や膝関節および周囲の血管へ枝を送り、また下肢の前内側面に皮枝を出す。大腿神経は、第2~4腰神経前枝の背側部から起こり(図10)、大腰筋を下外方へ貫通し、ついで大腰筋と腸骨筋間の溝を走行しながらこれらの筋に支配枝を出す。大腿神経は、鼡径靱帯の後方を通り、大腿部に入る。大腿三角では大腿動脈鞘の外側に位置し、ここで筋枝と皮枝に分かれる。筋枝は、恥骨筋、縫工筋および大腿四頭筋を支配する。恥骨筋へ行く筋枝は、鼡径靱帯の高さで起こる。縫工筋への筋枝は、この筋の上部2/3に入る。また数本の枝は、大腿神経前皮枝と起始を同じくしている。大腿四頭筋への支配枝は、図のごとく支配する。すわなち大腿直筋と外側広筋への枝は、両筋の後面へ入る。また、中間広筋への枝は、その前面から中間広筋に入り、中間広筋を貫いて下部にある膝関節筋を支配する。さらに、内側広筋への枝は、内転筋管を大腿動静脈と伏在神経の外側に沿って様々な長さを走りながら、次々に内側広筋へ枝を出し、そのうちの何本かは中間広筋や膝関節筋に終わる。 大腿神経の前皮枝は、大腿三角に起こる。鼡径靱帯より8~10cm遠位で、この神経のすべての枝は大腿筋膜を貫き、膝関節の高さまで下行する。走行の間に、大腿前面および内側面を覆う皮膚と筋膜に枝を送る。伏在神経は、大腿神経の最大かつ最長の枝であり、大腿三角の高さで起こり、大腿動静脈の外側に沿って大腿三角内を下行し、内転筋管に入る。ここでこの神経は大腿動静脈を斜めに越え、大内転筋下端の前面で、これらの動静脈内側に位置するに至る。内転筋管内において、伏在神経は、大腿神経前皮枝および閉鎖神経と交通して縫工筋下神経叢を形成する。内転筋管下端では、この神経は、大腿動静脈から離れて膝蓋下枝を生じる。この枝は、縫工筋の後縁を回り、大腿筋膜を貫いて走行を続け、膝関節や膝蓋靱帯の内面および前面を覆う皮膚に分布する。膝蓋下枝は大腿神経前皮枝および外側大腿皮神経より枝を受けて膝蓋神経叢を作る。伏在神経は、膝関節の内側面を下行し、縫工筋と薄筋の間で大腿筋膜を貫く。この後、大伏在静脈の近傍で下腿の内側面を下行し、内側下腿皮枝を出す。伏在神経は、下腿の下部でさらに2枝に分かれる。小さな枝は脛骨内側縁に沿って足首まで下げる。他方、大きい枝は、内果前面を越え、足の内側面と足背を覆う皮膚と筋膜に分布する。関節枝は、大腿直筋の支配枝から起こり、外側大腿回旋動脈の関節枝と共に股関節に至る。大腿の広筋群への支配枝からの小枝および伏在神経からの小枝が、膝関節を支配する。)
- 958_09【Femoral branch of genitofemoral nerve大腿枝(陰部大腿神経の);腰鼡径神経 Ramus femoralis (Nervus genitofemoralis); Nervus lumboinguinalis】 Branch passing through the vascular space and continuing through the saphenous opening to supply the overlying skin.
→(陰部大腿神経の大腿枝は血管裂孔(大体動脈と腸恥筋膜弓の間)を通り、伏在裂孔をへて、大腿前面最上部の皮膚へ分布する。)
- 958_10【Psoas major muscle大腰筋 Musculus psoas major】 o: Lateral aspect of vertebral bodies T12 and L1-L4, costal process of L1-L5. I: Lumbar plexus.
→(横隔膜の内側弓状靱帯の後を走る大腰筋は浅深の2頭を持つ。浅頭は第12胸椎~第4腰椎の椎体と椎間円板から起こり、深頭は全腰椎の肋骨突起から起こる。これら2頭の間には腰神経叢の枝が何本も走っている。大腰筋は下方では腸骨筋と共に鼡径靱帯の後をくぐって腸腰筋の一部となって大腿に下る。)
- 958_11【Ductus deferens; Deferent duct精管 Ductus deferens; Vas deferens】 The course of the ca. 50 cm long ductus deferens is initially tortuous, then becomes straight. It is a continuation of the duct of epididymis, opening into the urethra.
→(精巣上体からはじまる精巣の分泌管で、精巣上体尾につづく精子を送る通路。精索中にある。全長約30cm(延ばせばその2倍)、膀胱底で紡錘状に膨れ、精管膨大部といい、内部に膨大部憩室を含む。膨大部の下端で、精嚢が精嚢排出管を経て合流し、これより遠位では精管は射精管と呼ばれ、尿道前立腺部後壁にある精丘の上で、尿道に開く。)
- 958_12【Genital branch of genitofemoral nerve陰部枝(陰部大腿神経の);外精神経 Ramus genitalis (Nervus genitofemoralis); Nervus spermaticus externus】 Branch running through the inguinal canal that supplies the cremaster, scrotal skin (labium majus), and adjacent skin of the thigh.
→(陰部大腿神経の陰部枝は深鼡径輪を通って陰嚢前面、大陰唇、隣接する大腿の皮膚に分布し、運動枝を精巣挙筋に送る。)
- 958_13【Pectineus muscle恥骨筋 Musculus pectineus】 o: Pectineal line of pubis. i: Pectineal line of femur, linea aspera. Flexion, adduction, and medial rotation at the hip. I: Femoral and obturator nerves.
→(恥骨筋は腸恥隆起-恥骨結節間の恥骨上肢から起こり、大腿骨の恥骨筋線に停止する。この筋はもとももと腸腰筋群と同じ原基に由来する。本筋の構成に内転筋群がどの程度関わるかには個体差がある。恥骨筋は腸骨筋膜の延長部分である恥骨筋膜におおわれ、腸腰筋とともに腸恥窩には大腿動静脈が通る。)
- 958_14【Femoral artery大腿動脈 Arteria femoralis】 Artery extending from the inguinal ligament to the popliteal artery,
→(大腿動脈は外腸骨動脈よりつづいて鼡径靱帯の直下にはじまり下行して大腿内側部の中1/3と下1/3の境界あたりで、内転筋管裂孔を貫いて膝窩に出て膝窩動脈となる。大腿の上1/3のあたりでは大腿静脈と並んで大腿三角を通り(静脈が内側)、中1/3では縫工筋に被われて内転筋管を通る。)
- 958_15【Femoral vein大腿静脈 Vena femoralis】 Accompanying vein of the femoral artery that extends from the adductor hiatus canal to the inguinal ligament.
→(大腿静脈は大腿動脈に伴行して内転筋管裂孔において膝窩静脈からつづいておこり、大腿下部では動脈の外側に位置するが、上方に走るにつれて次第にその深層を通って、大腿近位部では動脈の内側に位置するようになる。鼡径靱帯の深層で血管裂孔を通過して腹腔に入り外腸骨静脈となる。)
- 958_16【Great saphenous vein; Long saphenous vein大伏在静脈 Vena saphena magna】 Vein possessing valves that arises on the medial side of the foot and ascends medially, collecting most of the medial superficial cutaneous veins. It passes through the saphenous opening to empty into the femoral vein.
→(大伏在静脈は古くは薔薇静脈とよんだこともある。ギリシャ語のsaphisは「見える」という意味であるというが、他方アラビア語では「かくれた」という意味を表すという。このように語原的にはギリシャ語とアラビア語では反対の意味に解されているのは興味深いが、いずれにしてもVena saphenaの語原ははっきりしていない。大伏在静脈は下肢最大の皮静脈で、下肢の内側に沿って皮下組織の中を上行する。足背の内側縁にはじまり、内果の前を通るが、この部分で皮膚のうえからその走行をみることができる。伏在神経と伴行して下腿の内側を通り、膝関節の後内側を経て大腿内側面を上行し、鼡径靱帯の下方で深く入り、伏在裂孔で大腿静脈にそそぐ。この経過の途中、周辺より多くの皮静脈がこれに合流するが、とくに大腿の内側と後面よりの皮静脈は1本に合して伏在裂孔のやや下方で大伏在静脈にそそぐことがある。これを副伏在静脈という。また大腿の前面や外側面よりの皮静脈が合しこれにそそぐときは、とくに外側伏在静脈とよぶことがある。このときは大内々側面よりのものは内側伏在静脈という。)
- 958_17【Adductor longus muscle長内転筋 Musculus adductor longus】 o: Near the pubic symphysis. i: Medial lip of linea aspera. Adduction, lateral rotation, and flexion at the hip joint. I: Obturator nerve.
→(長内転筋は恥骨結合の線維軟骨および恥骨稜直下の狭い領域から長い腱として起こる。遠位で広くなり、薄い幅広の腱となって粗線(内側唇)の中1/3に停止する。停止腱の遠位縁をつくる筋束は広一内転筋板の形成に多少なりとも参加し、内転筋管の入り口をかたちづくる。)
- 958_18【Gracilis muscle薄筋;大腿薄筋 Musculus gracilis】 o: Inferior pubic ramus. i: Medial tibial surface. Adduction, flexion, and extension at the hip joint. Flexion and medial rotation at the knee joint I: Obturator nerve.
→(薄筋は大腿内側の筋で内転筋群のうちで唯一の二関節筋である。薄く扁平な筋として、恥骨結合直下の恥骨下枝から起こり、大腿内側面を下行する。平走する筋線維からなり、長い停止腱は大腿遠位3分の1に終わる。遠位では大腿骨内側顆のうしろに達し、鵞足をつくって脛骨内側面、脛骨粗面のうしろ、および大腿の深筋膜に終わる。神経支配は閉鎖神経で大腿の内転、膝の屈曲、下肢を内旋する。)
- 958_19【Anterior branch of obturator nerve前枝;浅枝(閉鎖神経の) Ramus anterior; Ramus superficialis (Nervus obturatorius)】 Branch lying on the adductor brevis and obturator externus, beneath the adductor longus and pectineus. It supplies these muscles as well as the gracilis.
→(閉鎖神経の前枝は短内転筋、外閉鎖筋の上、長内転筋および恥骨筋の下にあり、これらの筋以外に薄筋も支配する。)
- 958_20【Cutaneous branch of anterior branch of obturator nerve皮枝(閉鎖神経の前枝の) Ramus cutaneus nervus obturatorii; Ramus cutaneus ramus anterioris nervus obturatorii】 Variable terminal branch that emerges between the adductor longus and gracilis and supplies the skin of the distal two-thirds of the thigh.
→(閉鎖神経の前枝の皮枝は不定の終枝で、長内転筋と薄筋の間に現れ、膝の上方大腿内側面の皮膚に分布する。)
- 958_21【Saphenous nerve伏在神経 Nervus saphenus】 Longest, purely sensory branch of the femoral nerve. It begins in the femoral triangle, passes beneath the 「vastoadductor membrane,」 which it pierces, continues between the sartorius and gracilis to beneath the skin, and then travels with the great saphenous vein as far as the medial side of the foot.
→(大腿三角から足に至る大腿神経の枝。伏在神経は大腿動脈の外側を沿って走り、動脈とともに内転筋管内を下降する。膝関節の内側で皮下にでて大伏在静脈に沿って下行し、下腿と足背との内側面の皮膚に分布する。)
Hunter's canal
- 958_22Hunter's canal【Adductor canal内転筋管 Canalis adductorius】 Passageway that is formed by the adductor magnus, vastus medialis, and anteromedial intermuscular septum. It ends at the adductor hiatus.
→(ハンター管および縫工筋下管ともよばれる。大腿のほぼ中央の高さにある筋膜性の管で、上方は大腿三角の先端よりつづき、下方は内転筋腱裂孔に開く。外側壁は内側広筋、内側壁は大内転筋と長内転筋によってつくられ、また前壁は、縫工筋の深層をおおう厚い筋膜(広筋内転筋板(INA))が、内側広筋と大内転筋および長内転筋の間に張ることによってつくられる。このなかを大腿動静脈と伏在神経が走る。内転筋管の入口より上の方でも、既に大腿動静脈は長内転筋・縫工筋・内側広筋で囲まれたトンネルを通っている。そしてこのトンネル(筋性内転筋管muscular adductor canalともいう)を上方に場所が、大腿三角の底を作っている腸恥窩である。Williamの弟、John Hunter (1728-1793)によって記載された。精巣下降に関わる精巣導帯にも名を残す。かれの業績はロンドンのRoyal College of SurgeonsのHunter Museumにおいて見ることができる。)