669
- 669_00【Glands of mouth口腔腺;唾液腺 Glandulae oris; Glandulae salivariae】
→(口腔腺は三大唾液腺以外の小唾液腺で、口腔に開くものの総称。発生上は口腔粘膜の上皮に由来する。上下唇にある口腔腺、頬にある頬腺、臼歯腺、口蓋全体にひろがる口蓋腺、舌表面に開く舌腺(混合性で類人猿とヒトに特異な前舌腺、漿液性のエブネル腺、粘液性の後舌腺を含む)がある。いずれも小さい腺の集合と考えてよい。)
- 669_01【Sublingual nerve舌下部神経;舌下枝(舌神経の) Nervus sublingualis】 Branch passing lateral to the sublingual gland into the mucosa of the floor of the mouth and into the gingiva of the anterior mandibular teeth.
→(舌神経が舌に入る際に出て舌下腺およびその周囲に分布し舌下腺中では舌下神経節を形成する。)
- 669_02【Medial pterygoid muscle内側翼突筋 Musculus pterygoideus medialis; Musculus pterygoideus internus】 o: Pterygoid fossa and the maxillary tuberosity. i: Pterygoid tuberosity on inner side of the angle of the mandible, passing obliquely downward and backward. Synergist of the temporal and masseter muscles. I: Mandibular nerve.
→(内側翼突筋は蝶形骨の翼突窩で起始して、下顎角内面に停止する。したがって、この筋は、下顎骨の外面側を走る咬筋浅部と同様な走行方向で下顎骨の内側面を走る。両筋は作用方向は同一であり、したがって協力筋である。)
- 669_03【Lingual nerve舌神経 Nervus lingualis】 Branch of the mandibular nerve curving anteriorly between the lateral and medial pterygoid into the floor of the mouth where it lies next to the wisdom tooth immediately beneath the mucosa.
→(下顎神経[CN V3]の終枝の一つで内側翼頭筋と外側翼突筋との間を通って前下方にすすみ、内側翼突筋の前縁に達して弓状に曲がり、つぎに口腔底に沿って顎下腺および顎舌骨筋の上を前に走ってしたの外側縁に至り、下顎骨体中央部の内側で多くの枝に分かれてしたの中に入り、舌の前3分の2と口腔底の粘膜に分布して、その知覚および味覚を司る。舌神経はその基部の近くで顔面神経の枝である鼓索神経と結合して、これから味覚神経線維および顎下腺と舌下腺への分泌線維を受け、また末端で舌下神経の枝と結合する。)
- 669_04【Deep part of parotid gland深部;顎後突起;下顎後突起(耳下腺の) Pars profunda (Glandula parotis); Processus retromandibularis】 Lobe of the parotid gland that lies deep to the facial nerve branches.
→(耳下腺の深部は顔面神経枝の下にある深層部分。)
- 669_05【Sternocleidomastoid muscle胸鎖乳突筋 Musculus sternocleidomastoideus】 o: Two-headed muscle arising from the sternum and clavicle, i: Mastoid process; superior nuchal line. Rotates the face to the contralateral side and bends the head to the ipsilateral side. Bilateral contraction elevates the face. I: Accessory nerve, cervical plexus (C1-C2).
→(胸鎖乳突筋は側頚部にある強大な斜めに縦走する浅層の筋。胸骨柄前面と鎖骨の胸骨端から2頭をもっておこり、両頭は合して強い筋腹をつくって後上方に走り、乳様突起および後頭骨の上項線につく。作用は複雑で、両側が同時に働くとオトガイを上げて後頭部を片側が働けば頭を対側にまわすが、その浅オトガイが対側に向かって上り、頭は逆に同側に傾く。支配神経は副神経外枝と頚神経叢筋枝(C2, C3)であり、したがって僧帽筋と同系の筋である。また、第6咽頭弓に発生する鰓弓筋で、鎖骨上窩を囲む2頭(胸骨頭と鎖骨頭)をもって始まる。胸骨頭は胸骨柄の上縁から、鎖骨頭は鎖骨の胸骨端から起こる。筋膜は頚筋膜浅葉に鞘状に包まれており、斜め上方に向かって幾分螺旋状に回転しながら頚部外側面を横切り、よく発達した腱となって乳様突起と上項線に停止する。筋の表面は、起始部で腹側に、停止部で外側に向く。参考:副神経外枝の僧帽筋枝は、外枝がこの筋に入る前に分かれることと、筋内で分かれて再び外に現れることがある。胸鎖乳突筋はドイツ語ではKopfnicker(頭をこっくりとうなずかせる筋)と呼ばれるが、これは作用の点からは正しくない。この筋が片側だけ収縮すると、頭はその側へ傾き反対側を振り向いて、あたかも「首をかしげる」状態になる。また両側の物が同時に収縮すると、頭を胴体にめり込ませるように働くのえある。Musculus sternocleidomastoideusというラテン名はあまりにも長たらしいので、米英では多少簡略化してsternomastoid muscleともよぶ。片側の胸鎖乳突筋が先天的に短い場合、または出産時の外傷などによって瘢痕化して短縮すると、この筋の作用を考えればすぐわかるように、頭は病側へ傾くと共に健側にねじれたままの状態になるこれを斜径torticolis, wryneck(性格には筋性斜径)といい、かなり頻度の高いものである。略語(SCM))
- 669_06【Submandibular ganglion顎下神経節 Ganglion submandibulare; Ganglion submaxillare】 Ganglion that varies in shape and lies along the lingual nerve, usually above the submandibular gland. It contains cells for the postganglionic parasympathetic fibers to the submandibular and sublingual glands.
→(舌神経が顎下腺の上を通るところでその下側にあり、直径3~3.5mm、舌神経と交通して(舌神経との交通枝)、直接これから知覚根を、また間接にはこれを介して鼓索神経から副交感根を受け、さらに顔面動脈を包む交感神経叢からは交感根(顎下神経節への交感枝)を受け手、顎下腺、舌下腺などに腺枝を与える。)
- 669_07【Submandibular gland顎下腺 Glandula submandibularis; Glandula submaxillaris】 Predominantly serous gland that is situated almost entirely beneath the mylohyoid muscle.
→(顎下線は顎舌骨筋の下で、下顎骨と顎二腹筋の間の三角形の窩(顎下三角)の中にある長さ2.5~3.5cm、厚さ約1.5cm、成人平均重量(一側)3.5~9.0gのやや扁平な楕円体。複合管状胞状線で、腺房は漿液細胞が大部分を占める混合性である。導管系は介在導管と線条導管が耳下腺、舌下腺に比べてはるかによく発達し、これらの導管上皮細胞には、管腔側に多少とも分泌顆粒様構造をもつことが多い。とくに齧歯目の顎下腺では、腺房は漿粘液性の分泌顆粒をもったただ1種類の細胞からなり、介在導管と線条導管の間には多数の分泌顆粒をいれた上皮細胞の一群がみられる。これを顆粒性膨大部(Granular convoluted tubes)または線条導管分泌部(secretory protion of striated duct)とよぶ。その発達は性ホルモン依存性で雌より雄がよく発達し(性的二形、sexual dimorphism)マウスやラットではこの部の総体積は終末部のそれを凌駕する。主としてマウスの顎下腺で証明された神経成長因子、上皮成長因子、レニン、カリクレインなどの特蛋白は、この部分で産生放出されると考えられている。顎下腺管(Ductus submandibularis) (Wharton's ductともいう)は大舌下腺管とともに舌下小丘に開く。血管は顔面、舌動脈の枝が、神経は鼓索神経が顎下神経を経て、また血管を介して交感性線維が分布する。)
- 669_08【Dorsum of tongue舌背 Dorsum linguae】
→(舌の上面を舌背という。)
Rivinus, Ductus of
- 669_09Rivinus, Ductus of【Minor sublingual ducts小舌下腺管 Ductus sublinguales minores】 About 40 small ducts that drain the sublingual gland through the sublingual fold and sublingual caruncle.
→(小舌下腺管は舌下腺の約40の小導管で、舌下ヒダおよび舌下小丘に開口する。)
Wharton's duct
- 669_10Wharton's duct【Submandibular duct顎下腺管 Ductus submandibularis; Ductus submaxillaris [Whartoni]】 Excretory duct that drains the submandibular gland. It loops around the posterior border of the mylohyoid, accompanied by glandular tissue and opens at the sublingual caruncle.
→(ワルトン管、ウォルトン管ともよばれる。顎下腺の導管。腺質を伴って顎舌骨筋の後縁をまわり、舌下小丘に開口する。イギリスの解剖学者Thomas Wharton (1614-1673)による。Wharton's jelly(胎児期に出現する膠様組織)にもその名を残している。)
- 669_11【Sublingual caruncle舌下小丘 Caruncula sublingualis】 Small mucosal projections, one each on the right and left sides of the frenulum of tongue. The submandibular and major sublingual ducts open here.
→(舌下小丘は舌小帯の左右にある小さな粘膜の高まり、ここに顎下腺管と大舌下腺管が開口する。)
Bartholin's duct
- 669_12Bartholin's duct【Major sublingual duct大舌下腺管 Ductus sublingualis major】 Main excretory duct of the sublingual gland. It opens next to the submandibular duct at the sublingual caruncle.
→(大舌下腺管は舌下腺の主導管。舌下小丘上の、顎下腺管近くに開く。)
Rivinus' gland
- 669_13Rivinus' gland【Sublingual gland舌下腺 Glandula sublingualis】 Predominantly mucous gland contained lying on the floor of the mouth in the mylohyoid muscle with numerous excretory ducts.
→(舌下腺は大口腔線のうちででは最も小さい腺で、口腔底の舌下ヒダ内にある細長い扁平な腺。導管の一部は顎下腺と同じく、舌下乳頭に開口し、他の一部は舌下ヒダに開口している。混合腺であるが、粘液性が漿液性より圧倒的に優勢である(これが他の2つの唾液腺との区別しやすい点である)。半月も認められる。介在部および線条部の発達が悪く、なかなかこれらをみとめにくいのも他の唾液腺との違いである。)
- 669_14【Mylohyoid muscle顎舌骨筋;口底隔膜 Musculus mylohyoideus; Diaphragma oris】 o: Mylohyoid line, i: Median fibrous raphe and body of hyoid bone. It forms the muscular floor of the mouth; supports the tongue. Raises the floor of the mouth and the hyoid bone. Draws the mandible inferiorly. I: Nerve to mylohyoid.
→(顎舌骨筋は両側性に下顎骨の内面側から舌骨筋線の部分で起始する。左右両筋部は後方で収斂して、正中縫線で合一して筋板を形成し、この筋板は舌骨体に付着し、かつ両側下顎骨半を連結する。両側顎舌骨筋は口底隔膜を形成する。)
- 669_15【Mandible下顎骨 Mandibula】
→(下顎を形成する。下顎を支え、頭蓋と顎関節をつくる骨で、水平な馬蹄形の部(下顎体)と、その後端から上方に向かう部(下顎枝)に分けられる。本来有対の骨として生じ、生後1年目で下顎底の前端で癒合して一つの骨となる。下顎体の上縁は歯槽部で、下縁は下顎底という。歯槽部には各側8本の歯をいれる八つのへこみ(歯槽)があり、全体として歯槽弓をつくる。各歯槽を境する骨壁を槽間中隔といい、大臼歯の歯槽はさらにその歯根の間を隔てる低い根管中隔で分けられている。体の正中線上前面で左右の骨が癒合した部分は高まり、その下縁は三角形をなして突出(オトガイ隆起)し、ヒトの特徴であるオトガイをつくる。その外側、下縁に接する小突出部をオトガイ結節という。外面ではオトガイ結節から斜線が下顎枝の前縁に向かう。また第2小臼歯の下方にオトガイ孔がある。下顎体の内面には前方正中部に四つの隆起からなるオトガイ棘があり、上二つはオトガイ舌筋、下二つはオトガイ舌骨筋がつく。その下外側で下縁に切歯て卵形のへこみ(二腹筋窩)がある。そこから斜めに下顎枝の前縁に向かう線(顎舌骨筋線)があり、左右のこの線の間をはる顎舌骨筋が口底をつくる。この線の上前はへこみ(舌下腺窩)、またこの線の下方、第2~3大臼歯の所もへこむ(顎下線窩)。下顎底が下顎枝にうつる所は下顎角といわれ、小児で鈍角であるが成長とともに直角に近づく。下顎枝の上縁は深い切れ込み(下顎切痕)によって二つの突起に分かれ、前のもの(筋突起)には側頭筋がつき、後のもの(関節突起)の先に横楕円形の下顎頭があて、側頭骨鱗部にある関節窩と顎関節を作る。下顎頭の下はすこしくびれ(下顎頚)、その前面に外側翼突筋のつく翼突筋窩がある。下顎枝外面は平らで下顎角に近く咬筋のつく咬筋粗面、内面には内側翼突筋のつく翼突筋粗面がある。下顎枝内面中央には下顎孔があり、その前縁は上内方に尖り(下顎小舌)口腔から触れるので、下歯槽神経の伝達麻酔の際、針をさす指標となる。下顎孔の後下から溝(顎舌骨筋神経溝)が出て前下方に斜めに向かう、この上の高まりが顎舌骨筋線である。下顎管は下顎孔からはじまり下顎体の中央で二分し、外側管はオトガイ孔で外側にひらき、内側管は切歯のそばに終わるが、その経過中に各歯槽に向かって小管を出している。有顎魚の下顎を支配する骨格は本来下顎軟骨(Meckel軟骨)で、上顎を支配する支持する軟骨は(口蓋方形軟骨)と顎関節をつくる。ともに鰓弓軟骨の変化したものである。硬骨魚類では下顎軟骨のまわりに若干の皮骨が生じて下顎を支え、そのうち前外面にあり、顎縁の歯をつけた大きい歯を歯骨という。顎関節は下顎軟骨と口蓋方形軟骨それぞれの後部の化骨物(関節骨と方骨)の間につくられる。両棲類、爬虫類も同じ状態であるが、哺乳類では歯骨のみが大きくなって下顎骨となり、顎関節は歯骨と燐骨(側頭骨鱗部に相当する骨)の間に新生されたものである。そして関節骨と方骨はツチ骨、キヌタ骨になっている。多くの哺乳動物では下顎骨は生体でも対をなした状態にとどまっている。Mandibulaはmandere(噛む)という動詞に由来し、語尾のbulaは「道具」を意味する接尾辞である。下顎骨にはすべての咀嚼筋が付。)
- 669_16【Digastricus muscle; *Digastric muscle顎二腹筋 Musculus digastricus; Musculus biventer mandibulae】 o:Mastoid notch, i: Digastric fossa. It has an intermediate tendon that acts on the lesser horn of the hyoid bone by means of a connective tissue sling. Raises the hyoid bone and opens the mouth.
→(顎二腹筋は舌骨の上方にある細長い筋で中間腱で前腹と後腹との2腹に分かれる。その後腹をもって側頭骨乳突切痕で起始し、斜め前・下方へ走る。舌骨付近で後腹は中間腱に移行し、この腱は二分した茎突舌骨筋によって挟まれ、かつ線維性滑車によって舌骨に固定される。前腹(顎舌骨筋からは皮膚側へ位置しているが)は中間腱から起始し、下顎骨内面で下顎下縁近くの二腹筋窩に停止する。顎二腹筋の前腹(下顎神経の枝である顎舌骨筋神経の支配)と後腹(顔面神経の支配)とは神経支配が異なることは注意を要する。下顎が固定されているときには、舌骨を引き上げる。舌骨が固定されているときは下顎骨を後下方に引く。両者は発生学的にも由来を異にし、前腹は顎舌骨筋・口蓋帆長筋などとともに咀嚼筋と同類(鰓弓のうち顎骨弓mandibular archに属する筋)であり、後腹は茎突舌骨筋・アブミ骨筋などとともに顔面表情筋と同類(鰓弓のうち舌骨弓hyoid archに属する筋)である。ちなみに、咀嚼筋は下顎神経で支配され、顔面表情筋は顔面神経支配である。このように発生学的な由来を知れば、色々な筋の支配を整然と整理することができる。)
- 669_17【Anterior belly of digastric muscle前腹(顎二腹筋の) Venter anterior; Venter mandibularis (Musculus digastricus)】 Portion of the digastric muscle that extends from the mandible to the intermediate tendon. I: Nerve to mylohyoid.
→(顎二腹筋の前腹は下顎骨から中間腱までの部分。顎舌骨筋神経から支配を受ける。)