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Douglas, Semicircular line of
- 447_01Douglas, Semicircular line of【Arcuate line of rectus sheath弓状線;半環状線(腹直筋鞘の) Linea arcuata vaginae; Linea semicireularis(Musculi recti abdominis)】 Caudal end of the posterior layer of the rectus sheath.
→(ダグラス線とも呼ばれる。腹直筋鞘後面の弓状線をさす。上前腸骨棘のレベルで腹直筋鞘後面が消失するさいに、同面の下端部に自由縁(弓状線)が生じる。この部位より下腹壁動静脈が腹直筋鞘内に入り、上行して上腹壁動静脈枝と吻合することになる。弓状線は個体によっては、はっきりした弓状の線になっていないことも多い。またその高さもまちまちで、臍の下方0.5~7cmの範囲にわたるといわれる。弓状線の成因については次の諸説がある。①胎児期の膀胱の位置と緩解があるとする説(Gegenbaur)、②下腹壁動静脈の通路のために存在するとする説(Henle)、③胎生期に臍動脈を保護するための装置とする説(K.A. Douglas)、④腹膜の鞘状突起が腹壁を破って出ることに関係するとの説(Eisler)など。スコットランドの内科医・解剖学者James Douglas (1675-1742)によって記載された。彼の名はダグラス窩にも残っている。)
- 447_02【Linea alba白線 Linea alba】 Strip formed by the fusion of the left and right abdominal aponeuroses between the xiphoid process and pubic symphysis.
→(白線は前腹壁の中央の全長にわたっ縦に走る線維帯。腹直筋鞘の前・後葉をつくる両側の側副筋腱膜の線維が前腹壁の正中線で左右交じり合って作るつよい結合組織の紐で、上方は剣状突起前面から始まり、下ほど広くなり、臍の高さを過ぎると再び狭くなって恥骨結合上縁に至る。腹斜筋と腹横筋が付着する。)
- 447_03【Rectus abdominis muscle腹直筋 Musculus rectus abdominis】 o: Fifth to seventh costal cartilages, xiphoid process, i: Pubic crest and pubic symphysis. Anterior flexion of the trunk, lowering of the thorax, and elevation of the pelvis. 1: Thoracic nerves T7-T12.
→(前腹壁の筋で白線の両脇にあり腱画によって筋腹がいくつかに仕切られているのが特徴である。起始は、内側腱は恥骨結合から、外側腱は恥骨稜から起こる。停止は剣状突起の前面、第5,6,7肋骨の肋軟骨の表面。機能として、腹部の圧縮、腹部内臓の保護、強い呼気時に働く、骨盤と脊柱の屈曲。神経支配は下部6本の肋間神経の前枝、腸骨下腹神経と腸骨鼡径神経。動脈は上下腹壁動脈の筋枝から受ける。断面が楕円形のこの筋の停止腱から分かれた線維は、正中線を越え、白線の尾側への続きとして恥骨結合から陰茎(陰核)の背側面に向かう陰茎(陰核)提靱帯に加わる。腹直筋が強く働くのは背臥位から状態を起こすとき、ボートを漕ぐときなどである。腹筋の発達した人では腱画の位置が皮膚の上からくぼんで見える。)
- 447_04【Interfoveolar muscle窩間筋 Musculus interfoveolare】
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Henle's ligament
- 447_05Henle's ligament【Inguinal falx; Conjoint tendon鼡径鎌;結合腱 Falx inguinalis; Tendo conjunctivus】 Tendinous fibers forming an arch that extends from the aponeurosis of the transverse abdominal muscle into the pectineal ligament.
→(鼡径鎌(結合腱)は恥骨稜、恥骨櫛に停止する腹横筋と内腹斜筋の共通の腱。腹横筋腱膜から恥骨櫛靭帯へ弓状に入る線維。鼡径管の後壁を助成する。)
- 447_06【Posterior attachment of linea alba; Adminiculum of linea alba白線補束 Adminiculus lineae albae】 Triangular thickening of the linea alba at its attachment to the pubic symphysis.
→(白線の下端の部は後面で三角形に広がって恥骨結合後面につき、これを白線補束という。)
- 447_07【Inferior epigastric artery下腹壁動脈 Arteria epigastrica inferior】 It arises dorsally from the inguinal ligament and ascends to the inner surface of the rectus abdominis. producing the lateral umbilical fold. It anastomoses with the superior epigastric artery.
→(下腹壁動脈は鼡径靱帯のすぐ上方で外腸骨動脈よりおこり、壁側腹膜におおわれながら深鼠径輪の内側に沿って上方に走って前腹壁に入る。まもなく横筋筋膜を貫き、弓状線の前を通って腹直筋と腹直筋鞘後葉との間を上行し、この筋に枝を与えながら筋中で上腹壁動脈と吻合しておわる。深鼠径輪の内側を通るときに、鼡径管の内容物である精管または子宮円索の内側を経て上行する。)
- 447_08【Inferior epigastric vein下腹壁静脈 Vena epigastrica inferior】 Accompanying vein of the inferior epigastric artery from the posterior aspect of the anterior abdominal wall.
→(下腹壁静脈は下腹壁動脈に伴行して前腹壁の下部より血液を集め、鼡径靱帯の直上部で外腸骨静脈に注ぐ。)
Hesselbach's ligament
- 447_09Hesselbach's ligament【Interfoveolar ligament窩間靱帯 Ligamentum interfoveolare】 Craniocaudal band of thickened fascia posterior to the inguinal canal.
→(鼡径管の入口である深鼡径輪の内側縁の所では、下腹壁静脈のすぐ前面で横筋筋膜が肥厚して、上下に走っている。この横筋筋膜の漠然とした肥厚が窩間靱帯とよばれるものである。窩間という意味はその場所が内側鼡径窩と外側鼡径窩の境の部位に相当するからである。)
- 447_10【Transversus abdominis muscle; Transverse abdominal muscle腹横筋 Musculus transversus abdominis】 Inner surface of the seventh through twelfth costal cartilages, thoracolumbar fascia, iliac crest, anterior superior iliac spine, inguinal ligament, i: Rectus sheath, linea semilunaris. I: Intercostal nerves 7-12, iliohypogastric nerve, ilioinguinal nerve, genitofemoral nerve.
→(腹横筋の起始は下位6本の肋骨の肋軟骨内面、腰筋膜の内層、腸骨稜の内唇の前2/3、鼡径靱帯の外方1/3。停止は腱膜鞘につつまれて両腹斜筋とともに白線の中へ。機能としては腹部の圧縮、腹部内臓の保護、強い呼気時に働く。神経支配は下位6本の肋間神経の前枝、腸骨下腹神経と腸骨鼡径神経。動脈は深腸骨回旋動脈、下腹壁動脈。腹横筋は胸横筋の尾側に隣接している。この筋は、第7(6,5)から第12肋軟骨の内面、腰椎の肋骨突起(胸腰筋膜の深葉を介して)、腸骨稜の内唇および鼡径靱帯の外側部から起こる。この筋線維は、ほぼ水平に(腹直筋に直角)に走り、半月状の外側に凸の線、半月線を越えて腱膜となる。腹横筋の腱膜は腹直筋鞘の形成に関わる。その腱膜の線維は、白線で内腹斜筋の腱膜の線維と連結している。)
- 447_11【Testicular artery♂精巣動脈(♂) Arteria testicularis; A. spermatica♂】 Artery arising at the level of the second lumbar vertebra. It crosses over the ureter and passes on the ductus deferens through the inguinal canal into the testes.
→(精巣動脈は大動脈より起こり、尿管枝、精巣挙筋動脈、精巣上体枝に分布し、精巣、尿管、精巣挙筋、精巣上体に分布する。腎動脈、下腹壁動脈、精管動脈の枝と吻合する。)
- 447_12【Ductus deferens; Deferent duct精管 Ductus deferens; Vas deferens】 The course of the ca. 50 cm long ductus deferens is initially tortuous, then becomes straight. It is a continuation of the duct of epididymis, opening into the urethra.
→(精巣上体からはじまる精巣の分泌管で、精巣上体尾につづく精子を送る通路。精索中にある。全長約30cm(延ばせばその2倍)、膀胱底で紡錘状に膨れ、精管膨大部といい、内部に膨大部憩室を含む。膨大部の下端で、精嚢が精嚢排出管を経て合流し、これより遠位では精管は射精管と呼ばれ、尿道前立腺部後壁にある精丘の上で、尿道に開く。)
- 447_13【Femoral artery大腿動脈 Arteria femoralis】 Artery extending from the inguinal ligament to the popliteal artery,
→(大腿動脈は外腸骨動脈よりつづいて鼡径靱帯の直下にはじまり下行して大腿内側部の中1/3と下1/3の境界あたりで、内転筋管裂孔を貫いて膝窩に出て膝窩動脈となる。大腿の上1/3のあたりでは大腿静脈と並んで大腿三角を通り(静脈が内側)、中1/3では縫工筋に被われて内転筋管を通る。)
- 447_14【Femoral vein大腿静脈 Vena femoralis】 Accompanying vein of the femoral artery that extends from the adductor hiatus canal to the inguinal ligament.
→(大腿静脈は大腿動脈に伴行して内転筋管裂孔において膝窩静脈からつづいておこり、大腿下部では動脈の外側に位置するが、上方に走るにつれて次第にその深層を通って、大腿近位部では動脈の内側に位置するようになる。鼡径靱帯の深層で血管裂孔を通過して腹腔に入り外腸骨静脈となる。)
Hyrtl's muscle
- 447_15Hyrtl's muscle【Iliopsoas muscle腸腰筋 Musculus iliopsoas】 Muscle comprising the psoas major and iliacus. i: Lesser trochanter. Most important anterior flexor of the leg. Trunk flexion, lateral rotation.
→(腸骨筋と大腰筋からなる複合筋で、共同腱によって大腿骨小転子の前面に停止する。内側部(大腰筋、長線維、大きな挙上作用を持つ)は第12胸椎および第1から4腰椎外側面から起こる深層と大腰椎の肋骨突起から起こる浅層から成る(この両層間に腰神経層の大部分が入る)。外側部(腸骨筋、多数の線維を持ち、大きな力として作用する)は腸骨窩を埋める。骨盤外の起始は股関節の関節包から起こる(関節包張筋)。大腰筋も腸腰筋もともに筋裂孔を(大腿神経とともに)通って骨盤から出る。大腿骨頚の内側をまわりこみ、関節包とは腸恥包で隔てられる。腸恥包は時々関節腔につながる。しばしば他の滑液包、腸骨筋腱下包が小転子と腸腰筋腱の間にある。頭側では薄い大腰筋の筋膜は尾側では厚くなり、腸骨筋の筋膜と合流して鼡径靭帯外側部に強く結びつくとともに、強い結合組織膜として腸腰筋の停止までをおおう。第3の寛骨内筋、小腰筋は人で常在しない。その起始は第12胸椎と第1腰椎である。長い腱は大腰筋上を尾側へ向かい、腸腰筋膜や、特に腸恥骨弓に放散する。)
Fallopian ligament; Poupart's ligament; Vesalius' ligament
- 447_16Fallopian ligament; Poupart's ligament; Vesalius' ligament【Inguinal ligament鼡径靱帯;鼡径弓 Ligamentum inguinale; Arcus inguinalis】 Inferior end of the aponeurosis of the external oblique. It passes from the anterior superior iliac spine to the pubic tubercle.
→(鼡径靱帯は上前腸骨棘と恥骨結節との間に張る靱帯で、前面における体幹と下肢の境界である。外腹斜筋の停止腱膜のつくる腱弓の発達したものである。恥骨櫛は恥骨結節のやや後部から後外側にのびているので、鼡径靱帯は恥骨櫛よりもやや前方にある。鼡径靱帯の内側端の一部は分かれて後走し、恥骨櫛は恥骨結節のやや後部から後外側にのびているので、鼡径靱帯は恥骨櫛よりもやや前方にある。鼡径靱帯の内側端の一部は分かれて後走し、恥骨櫛内側部に達する。これを裂孔靱帯といい、鼡径管下壁の形成に関与する。裂孔靱帯外側縁が恥骨櫛に沿ってのびているものを恥骨櫛靱帯という。また、浅鼡径輪の外側脚をを作る外腹斜筋腱膜線維が鼡径靱帯内側端に到達した後、上内側に方向をかえて反転し、腹直筋鞘前葉をつくる内腹斜筋の前面に向かって線維を送る。これを反転靱帯といい、鼡径管内側端に到達した後、上内側に方向をかえて反転し、腹直筋鞘前葉をつくる内腹斜筋の前面に向かって線維を送る。これを反転靱帯といい、鼡径管内側端で、その後壁の形成に関与する。プーパルの靱帯とも呼ばれる。Poupart, Francois (1616-1708)フランスの外科医、ルイ14世の侍医。プーパルの靱帯(鼡径靱帯)を既述("Suspenseurs del'-abdomen", Hist. Acad. Roy. Sci., Paris, 1730, 51)、プーパル線は鼡径靱帯の中心と鎖骨とを結ぶ線。)
- 447_17【Femoral ring; Femoral foveola大腿輪;大腿小窩 Anulus femoralis; Foveola femoralis】
→(大腿輪は大腿管の入口。血管裂孔の最も内側の部分で、大腿静脈の内側にあるせまい間隙をいう。ここは大腿管の上端部にあたり、径約1cmの楕円形をなす。前壁は鼡径靱帯、後壁は恥骨筋膜、内側は裂孔靱帯、外側は大腿静脈によってつくられ、リンパ管、リンパ節、および少量の脂肪組織によってみたされる。大腿輪の腹腔側は、横筋筋膜と壁側腹膜におわれるだけで、おの部を大腿輪中隔といい、腹壁の抵抗の弱い部分にあたる。鼡径部から外腸骨リンパ節に通じる多数のリンパ管によって貫かれる。)
Gimbernat's ligament
- 447_18Gimbernat's ligament【Lacunar ligament; Lacunar inguinal ligament裂孔靱帯 Ligamentum lacunare】 Arched connective-tissue band that extends inferiorly from the medial attachment of the inguinal ligament to the pubis.
→(鼡径靱帯の内側部は後方に向かって広がり、恥骨筋膜と癒着しながら恥骨櫛内側部に至る。これを裂孔靱帯といい、血管裂孔の内側縁をなし、外方にすこしくぼんで鋭い。ギムベルナト靱帯とも呼ばれる。ギムベルナト Gimbernat, Don Mannuel Louise Antonio de (1734-1790)スペインの外科医、解剖学者1762年から1774年までバルセロナ大学教授。カルロス3世の侍医。ギベルナト靱帯(1768年)を起始、女性のヘルニア手術法を開発("Nuevo metodo de operar en la hernia crural", 1793)。)