659
- 659_00【Tongue舌;シタ Lingua】
→(舌は筋がよく発達した器官で、舌の前方の大部分は舌体、舌の前端部を舌尖、舌の後部を舌根という。また舌の上面を舌背といい、その正中線に舌正中溝があり、舌体と舌根との境界にはV字形の分界溝がある。分界溝の中央には舌背孔とよばれる陥凹があり、これは胎生期に、ここから甲状腺の原基が陥入したため、甲状腺と連なっていた甲状舌管のなごりである。舌の外側縁を舌縁といい、舌の下面正中線には口腔粘膜との間に舌小帯とよばれる粘膜ヒダがあり、舌の下面で、舌根両側から舌尖に向かう軟らかい鋸状の釆状ヒダとよばれる粘膜ヒダがる。舌の表面は舌粘膜でおおわれ、その深層にある舌筋と固く結合している。舌体の粘膜は舌乳頭とよばれる乳頭が非常に発達しており、舌乳頭は糸状乳頭、円錐乳頭、茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭に区別されている。舌根には舌乳頭がなく、多数の舌小胞とよばれる小丘状の高まりがみられる。舌小胞はリンパ小節の集団によって構成されており、これらの舌小胞を総称して舌扁桃とよばれている。舌体では舌粘膜が強靭な舌腱膜とよばれる密な結合組織で粘膜下の筋と固く結合しており、舌の正中面では舌腱膜に連続して密な結合組織が中隔をなしており、これを舌中隔とよんでいる。味覚器官をもち、咀嚼、燕下、および構音を助ける。)
- 659_01【Root of tongue舌根 Radix linguae】 Area of attachment of the tongue to the mandible and hyoid bone. It can also be described as the posterior, vertical portion of the tongue.
→(喉頭蓋軟骨の前にある舌基部。(Feneis))
- 659_02【Body of tongue舌体 Corpus linguae】 Part of the tongue between the tip and root.
→(舌は前方の大部分をつくる舌体と後方の約1/3部の舌根とに分けられる。)
- 659_03【Apex of tongue; Tip of tongue舌尖 Apex linguae】
→(舌体の前端は舌尖といわれる。)
- 659_04【Median glosso-epiglottic fold正中舌喉頭蓋ヒダ Plica glossoepiglottica mediana】 Unpaired mucosal fold situated in the midline between the postsulcal part of tongue and the epiglottis.
→(舌根と喉頭蓋の間で、中央にある不対の粘膜ヒダ。 (Feneis))
- 659_05【Epiglottis喉頭蓋 Epiglottis】 Elastic cartilage shaped like a shoehorn.
→(喉頭口の前壁をなし、粘膜におおわれて舌根のところにあり、その概形は喉頭蓋軟骨によってつくられ靴べら様を呈する。喉頭蓋の主な働きは燕下を円滑に行うことである。)
- 659_06【Lingual tonsil舌扁桃 Tonsilla lingualis】 Lymphatic tissue aggregations dispersed irregularly along the margin of tongue.
→(舌扁桃は舌背の後方または咽頭部にあるリンパ様組織の集合。舌根の粘膜には、乳頭はなく、多くのイボ状の高まりがみられる。この高まりは舌小胞といわれ、リンパ小節が集まってできる。舌小胞をまとめて舌扁桃とよぶ。)
- 659_07【Lingual follicles舌小胞 Folliculi linguales】
→(直径1~5mmの球形の粘膜隆起。この直下にあるリンパ組織により形が決まる。中央にはそれぞれ一つの小窩を示す。 (Feneis))
Morand's foramen; Morgagni, Foramen of
- 659_08Morand's foramen; Morgagni, Foramen of【Foramen caecum of tongue; Foramen cecum of tongue舌盲孔 Foramen caecum linguae】 Groove located at the tip of the terminal sulcus. Remains of the thyroglossal duct present during embryological development.
→(モルガニ孔とも呼ばれる。①舌盲孔。②胸骨および肋骨と横隔膜との癒合不全。イタリアの解剖学者・病理学者Giovanni Battista Morgani (1682-1771)によって報告された。このほかに、喉頭室(モルガニ洞)にも名を残す。)
- 659_09【Terminal sulcus of tongue分界溝;舌分界溝(舌の) Sulcus terminalis linguae】 Bilateral groove that extends obliquely forward from the foramen cecum behind the row of vallate papillae running parallel to it.
→(舌の分界溝は舌盲孔から両側に斜め前方へ走る溝。この溝の前側に、これと並行に走る一列の有郭乳頭がある。)
- 659_10【Vallate papilla; Circumvallate papilla有郭乳頭;有廓乳頭 Papillae vallatae; Papillae circumvallatae】 Seven to twelve larger papillae (circular in cross-section) located anterior to the terminal sulcus. The wall of the trench surrounding them contains taste buds.
→(有郭乳頭は分界溝のすぐ前に1列に並ぶ8~12個の大きな乳頭(約2~3mm)である。乳頭は深い溝でとり囲まれる。この乳頭も、組織学には角化していない重層扁平上皮をもっており、さらに、上皮に向かって多くの二次乳頭の突出がみとめられるのは、茸状乳頭と同じであるが、なんといっても、この乳頭での二次乳頭での発達が大きい。また、乳頭側面の重層扁平上皮層に、紡錘状のあかるい味蕾を認めることができるが、この味蕾は、この乳頭だけでなく、葉状乳頭にもみとめられる。有郭乳頭や葉状乳頭はおのおのの乳頭の周囲に深い溝を持っており、これは味蕾との関係において重要である。というのは味蕾は味孔によってのみ、この孔と通じており、さらにこの溝を満たしている分泌物の働きによって、味の刺激を感じることができる。すなわち、溝への分泌物としては、この溝の底に存在するエブネル腺Ebner's glandが源となっており、一種の小唾液腺であり漿液性である分泌物は、溝の水を洗い流すことによって、新しい刺激をうけることができるらしい。また味蕾は味孔という小さな孔を持ち、この孔が、さらに小さな冠状の味管gustatory canalとなって、外の溝と味蕾を構成する細胞との間を仲介している。)
- 659_11【Conical papillae円錐乳頭 Papillae conicae】
→()
- 659_12【Fungiform papillae茸状乳頭 Papillae fungiformes】 Scattered, pinhead-sized papillae, occurring in larger numbers on the tip and the margins of tongue.
→(茸状乳頭は舌背の前半部、とくに舌尖に多い乳頭で、糸状乳頭の間に散在する。名称のごとくきのこ状をしていて、舌背に広く分布するが、糸状乳頭程多くはなく、白っぽい糸状乳頭の間に赤い点状に見える乳頭が茸状乳頭である。この赤色に見えるのは、乳頭の重層扁平上皮が角化していないため、血液色としての赤色がすけてみえたためである。重層扁平上皮に各下層が認められていないこと、そして、二次乳頭が発達してくることが、糸状乳頭との違いである。さらに、マイスナー小体に似た神経終末が多いことからして、糸状乳頭と同様に一種の感覚装置でもあるらしい。また、味蕾も乳幼児には乳頭上皮に点在するが、成人になるにつれて喪失する。したがって成人の舌から作られた組織切片では、味蕾のない茸状乳頭を見るのが一般的である。)
- 659_13【lenticular papillaeレンズ状乳頭 Papillae lenticulares】
→()
- 659_14【Epiglottic vallecula喉頭蓋谷 Vallecula epiglottica】 Depression between the medial and lateral glosso-epiglottic folds.
→(正中舌喉頭蓋ヒダと外側舌喉頭蓋ヒダの間の凹み。 (Feneis))
- 659_15【Lateral glosso-epiglottic fold外側舌喉頭蓋ヒダ Plica glossoepiglottica lateralis】 Two lateral mucosal folds between the postsulcal part of tongue and the epiglottis.
→(舌根と喉頭蓋の間にある一対の外側の粘膜ヒダ。 (Feneis))
- 659_16【Palatopharyngeal arch; Posterior pillar of fauces口蓋咽頭弓;口峡後ヒダ;咽頭口蓋弓 Arcus palatopharyngeus; Plica posterior faucium】 Mucosal fold situated behind the tonsillar fossa between the palate and the wall of the pharynx, overlying the palatopharyngeus muscle.
→(口蓋咽頭弓は口蓋扁桃窩の後方にある口蓋と喉頭壁の間の粘膜ヒダ。その下を同名の筋が走る。)
- 659_17【Palatine tonsil口蓋扁桃 Tonsilla palatina】 Tonsil located between the palatoglossal and palatopharyngeal arches.
→(口蓋扁桃は舌口蓋弓と咽頭口蓋弓の間にある。扁桃中もっとも大きく、よく発達した扁桃である。肉眼解剖学的には、アーモンドの種の形に似ていて、組織学的には重層扁平上皮がおおっているが、この上皮が深く落ち込んでいて、十数個の陰窩cryptsを形成している。これらの陰窩に沿って、上皮の下層の固有層にリンパ小節が並んでいる。扁桃窩は発生上は第2鰓嚢のなごりとみなされる。扁桃窩の前方部には、三角ヒダが口蓋舌弓から張り出し、上方では口蓋舌弓と口蓋咽頭弓を半月ヒダが結ぶ。扁桃窩の上部に残された口蓋扁桃に占有されない扁桃窩の部分を扁桃上窩という。口蓋扁桃の表面に認められる小小陥凹が扁桃小窩で、これは扁桃の上皮が陥入してつくる扁桃陰窩の上皮表面への開口部を示す。 )
- 659_18【Palatoglossal arch; Anterior pillar of fauces; Glossopalatine arches口蓋舌弓;口峡前ヒダ;舌口蓋弓 Arcus palatoglossus; Plica anterior faucium; Arcus glosopalatinus】 Mucosal fold extending in front of the tonsillar fossa from the palate to the tongue. It overlies the palatoglossus muscle.
→(口蓋舌弓は口蓋扁桃窩の前方にあり、口蓋から舌へ張る粘膜のヒダ。その下を同名の筋が走る。)
- 659_19【Foliate papilla葉状乳頭 Papillae foliatae】 Several parallel mucosal folds containing taste buds on the posterolateral margin of tongue.
→(葉状乳頭は舌の後部側面のヒダに存在するが、ヒトでは発達が悪く、ウサギの葉状乳頭がもっとも発達がよく、典型的である。この乳頭は、有郭乳頭とほぼ組織学的に同様である。すなわち、角化していない重層扁平上皮でおおわれ、二次乳頭が発達し、やはり側面には味蕾を持ち、かなり発達した溝も各乳頭間に存在し、エブネル腺と同様の漿液腺が開口している。しかし、有郭乳頭にくらべてかなり小さく、同じ大きさの乳頭が連続して並んでいるので、簡単に区別がつく。)
- 659_20【Dorsum of tongue舌背 Dorsum linguae】
→(舌の上面を舌背という。)
- 659_21【Margin of tongue舌縁;舌外側縁 Margo linguae; Margo lateralis linguae】 Lateral border of the tongue touching the teeth.
→(舌縁は歯に触れる舌外側縁。)
- 659_22【Midline groove of tongue; Median sulcus of tongue舌正中溝 Sulcus medianus linguae】 Shallow midline longitudinal groove above the lingual septum.
→(舌正中溝は舌中隔直上にある正中線上の浅い縦溝。)
- 659_23【Filiform papillae糸状乳頭 Papillae filiformes】 Most common form. Epithelial projections, often split at their tips, surrounding a conical connective-tissue core.
→(糸状乳頭は舌体の背面全域にわたって密在する円錐状の乳頭で、表層の上皮は角化し、生体では白くみえる。糸状乳頭によって舌背の表面はややザラザラとなり、食物の移動に役立つと考えられる。これはヒトではあまり典型的ではないが、他の哺乳類、例えばネコ等では、糸状乳頭の整然たる発達が認められ、これが食物摂取を容易にしており、それゆえ糸状乳頭の機能的特徴の一つとしてあげられる。さらに、乳頭内に多くの神経がきていることからして、一種の感覚装置とも考えられている。さらに、糸状乳頭の外観は細長い指状を呈し、他の口腔組織がそうであるように、糸状乳頭も重層扁平上皮から成り立っていて、その最表層は、角化しているのが、他の舌乳頭との大きな違いであり、糸状乳頭の組織学的な特徴となっている。)