426
- 426_01【Suprasternal space胸骨上隙 Spatium suprasternale】 Space between the superficial and pretracheal layers of the deep cervical fascia above the sternum.
→(胸骨上隙は胸骨上縁の近くで頚筋膜の浅葉と気管前葉との間にある狭い間隙。胸骨上隙には疎性結合組織・脂肪組織があり、左右の前頚静脈を結ぶ静脈が横走する。)
- 426_02【Trachea気管 Trachea】 Elastic tube between the larynx and bronchi.
→(喉頭の下に連なる気道の管状部で、第6頚椎の高さにはじまり、気道の前を垂直に下り、第4頚椎の前で左右の気管支に分岐する。この分岐部を気管分岐部という。気管支鏡で分岐部を上から見ると、その正中部に左右の気管支を隔てる高まりがある。この高まりを気管竜骨という。気管壁には、硝子軟骨性の気管軟骨の輪が一定の間隔をおいて重なり、軟骨間は輪状靱帯で結合する。気管軟骨は幅3~4mmで15~20個を数える。気管軟骨は完全な輪ではなく、全周の4/5~2/3を占める馬蹄状を呈する。軟骨性の支柱を欠く部は正中部後壁をなし、膜性壁とよばれる。膜性壁には平滑筋(気管筋)を含む。気管内面は多列絨毛円柱上皮で、絨毛の運動の方向は上向きである。粘膜固有層には弾性線維が多く、粘膜下組織には胞状の混合腺(気管腺)を数多く含む。日本人の気管の長さは10cm前後である。)
- 426_03【Oesophagus; Esophagus食道 Oesophagus; Esophagus】 Passageway measuring 23-26 cm in length that begins below the cricoid cartilage at the level of the sixth cervical vertebra and ends at the cardia of the stomach.
→(食道は咽頭につづき、下方は胃に流入する長い管で、狭義の消化管の最初の部分である。輪状軟骨下縁(上食道狭窄)にはじまり、脊柱の前を下って胃の噴門部に接合するまで、全長23~26cm。内腔は適宜拡がり、義歯を飲み込んだ例もある。内腔の狭い部分は上端(上食道狭窄)、大動脈弓・気管支と交叉する部分(中食道狭窄)、下端(下食道狭窄)の3カ所で、上下端では内腔が普通は閉じ、括約筋の存在が想定されている。食道を上から頚部・胸部・腹部に分ける。頚部は脊椎の前にある部分、胸部は以下横隔膜で、腹部は横隔膜の食道裂孔を抜けて腹腔内に入り、噴門部に流入する短い部分である。食道の壁の粘膜は重層扁平上皮におおわれ、粘膜筋板を有し、食道腺が散在する。上部または下端に食道噴門腺をみる。筋層は上部で横紋筋、下部で平滑筋で、平滑筋束の一部は気管支食道筋、胸膜食道筋として、周囲の器官に連続する。筋層の外側は疎性結合組織性の外膜におおわれる。)
- 426_04【Prevertebral layer; Deep layer (of cervical fascia)椎前葉(頚筋膜の);椎前筋膜;深頚筋膜 Lamina prevertebralis fasciae cervicalis; Fascia cervicalis profunda】 Deep layer of cervical fascia that extends from the cranial base over the prevertebral and scalene muscles. It encloses the nerve pathways to the arm and passes into the endothoracic fascia.
→(頚筋膜の椎前葉は別名を深頚筋膜Fascia cervicalis profundaともいい後頚筋を包む筋膜で、椎体と後頚筋すなわち椎前筋と斜角筋との前面を被う筋膜で、上方では頭蓋底に付き、下方は食道の後ろで胸内筋膜に連なる。外側部は斜角筋群を被い、後方は項筋膜に移行する。一部は斜角筋隙から出る腕神経叢と鎖骨下動脈を包んで腋窩にいたる。)
- 426_05【Vertebral body of seventh cervical vertebra椎体(隆椎;第7頚椎) Corpus vertebrae cervicalis VII】
→()
- 426_06【Vertebral foramen椎孔 Foramen vertebrale】 Opening in the vertebra that is bounded by the vertebral arch and the vertebral body. The combined vertebral foramina form the vertebral canal.
→(椎体と椎弓によって囲まれる大きな孔が椎孔であって、ここは脊髄が通る場所である。これの縦の連なりを脊柱管という。)
- 426_07【Thyroid gland甲状腺 Glandula thyroidea】 Produces thyroxine and triiodothyronine, hormones that increase metabolic processes. Pathological enlargement is known as goiter.
→(甲状腺は前頚部の後頭前側にある不規則な楕円形嚢胞からなる内分泌腺で、成人で25~40gである。甲状腺は舌根の上皮が落ち込んで生じた原基が、下の方へ伸びだして出して現在見る位置に落ち着いたものである。舌根の陥入部の名残りが盲孔であり、移動経路に尾を引いて残った原基が発達したものが錐体葉である。この一部が筋組織から成るmのを甲状腺挙筋という(出現率20~30%)。甲状腺挙筋が存在する場合は、舌骨または甲状軟骨から起こって甲状腺に停止している。甲状腺は2種類のまったく異なったホルモンを分泌する。主な甲状腺ホルモンはヨウ素を含むアミノ酸誘導体で全身の物質代謝を亢進させる。1分子に含まれるヨウ素原子の数によって、T4(チロキシン)とT3(3-ヨードチロニン)を区別する。もう一種の甲状腺ホルモンはポリペプチドでカルチトニン(またはチロカルチトニン)という、血中カルシウムイオンの濃度を低下させるホルモンである。ヨウ素をふくむホルモンは甲状腺濾胞を形成する濾胞細胞から分泌され、カルチトニンは濾胞の間あるいは濾胞の周辺に存在する濾胞傍細胞から分泌される。濾胞は甲状腺の構造単位であって中空球状の細胞集団であるが、細胞はその周辺に1層にならんでいるだけで、内腔はコロイドという濃厚な蛋白溶液で満たされている。この蛋白はチログロブリンとよばれ、ヨウ素を含む糖蛋白である。濾胞[上皮]細胞は機能状態によって形が異なり、単層立方または単層円柱上皮が普通であるが、コロイドが極端にたまっているときは、単層扁平上皮となる。この細胞はよく発達した粗面小胞体とGolgi装置をふくみ、糸球体も被い。分泌物はGolgi装置で径150~200nmの小果粒あるいは小胞につめこまれて、濾胞内腔に近い細胞表面の知覚に運ばれる。これは細胞先端部あるいはそのやや下方に集まっていることが多いので、subapical granule(またはvesicle)とよばれる。この果粒は開口分泌によって、その内容を濾胞腔に放出すると思われる。甲状腺が下垂体前葉ホルモンの一種であるTSH(甲状腺刺激ホルモン)によって刺激されると、細胞表面に偽足状の突起が現れて、コロイドを貪食する。そのようにして貪食されたコロイドをふくむ空胞を、コロイド滴という。これに水解小体が融合して、加水分解酵素を得ると、コロイド滴内でチログロブリンが分解され、甲状腺ホルモンであるT4およびT3が生ずる。これらのホルモンは低分子であるから、細胞内を拡散して、基底側に運ばれ、濾胞に近接して分布している毛細血管に吸収されるのである。濾胞傍細胞は動物によって発達が異なり、ヒトでは非常に少ない。細胞質が明るくみえるので、clear cellの略としてC-cellとよばれることがある。これは鰓後体に由来する細胞で、血中カルシウムを低下させるホルモンを分泌する。濾胞細胞のやや外方に位置するが、共通の基底膜で包まれる。しかし、この細胞は濾胞腔に面することはない。径200nm前後の小果粒を多数含んでおり、動物にカルシウムを注射するとこの果粒が著明に減少することから、カルチトニン産生細胞であることがわかった。この果粒は一般のペプチドホルモン産生細胞であることがわかった。この果粒は一般のペプチドホルモン産生細胞と同様に、Golgi装置で産生されて、細胞基底部(基底膜に面する表面)から、開口分泌の様式で放出される。)
- 426_08【Sternohyoid muscle胸骨舌骨筋 Musculus sternohyoideus】 o: Posterior surface of manubrium of sternum and sternoclavicular joint, i: Body of hyoid bone.
→(胸骨舌骨筋は、前頚部舌骨下筋の1つ胸骨柄の後面と胸鎖関節から起こる。上方に向かって正中線に近づき、舌骨体の上縁に停止する。作用として舌骨を下げる。神経支配:脊髄頚神経ワナを介して上位頚神経参考:上端と正中甲状舌骨靱帯との間に舌骨後包(不対)がある。)
- 426_09【Investing layer of cervical fascia; Superficial layer of cervical fascia浅葉;浅層(頚筋膜の);浅頚筋膜 Lamina superficialis (Fasciae cervicalis)】 Superficial layer of cervical fascia that surrounds the surface structures of the neck and continues as the nuchal fascia. It ensheathes the sternodeidomastoid and trapezius muscles and is attached to the manubrium of the sternum, clavicle, hyoid bone, and inferior margin of the mandible.
→(頚筋膜の浅葉は別名を浅頚筋膜Fascia cervicalis superficialisともいい広頸筋の下にあるうすい筋膜で胸鎖乳突筋を包み、上方は舌骨と下顎骨底につき、さらに顔面に延びて咬筋筋膜につづく。下方は鎖骨と胸骨上縁につく。胸鎖乳突筋の前縁より前では、浅葉より下にある気管前葉に重なり、この筋の後ろでは気管前葉に合して浅背筋膜につづく。なお浅葉のうち舌骨より上の部は、舌骨上筋を多うので舌骨上筋膜ともいい、その外側部は顎下三角を被い顎下腺を包む。なお、浅葉は胸鎖乳突筋下部の後縁で下頚静脈に貫かれる。)
- 426_10【Pretracheal layer of cervical fascia; Middle layer of cervical fascia; Pretracheal lamina of cervical fascia気管前葉(頚筋膜の);中頚筋膜 Lamina pretrachealis (Fascia cervicalis)】 Middle layer of cervical fascia that is spread between the two bellies of the omohyoid and encloses the infrahyoid muscles. It is attached to the posterior border of the manubrium of the sternum and to both clavicles, blending laterally into the prevertebral layer of cervical fascia and above the hyoid bone into the superficial layer. It splits to form the outer layer of the fibrous capsule enclosing the thyroid gland.
→(頚筋膜の気管前葉は別名を中頚筋膜Fascia cervicalis mediaともいい舌骨下筋を包む筋膜で、上方は舌骨、下方は胸骨と鎖骨につき、後方は浅葉に合する。肩甲舌骨筋の中間腱を包む部分は強く、鎖骨に結合してその滑車となっている。気管前葉は浅葉の後面に密接し、胸骨上隙のほかはとくに間隙はない。)
- 426_11【Sternothyroid muscle胸骨甲状筋 Musculus sternothyroideus】 o: Posterior surface of manubrium of sternum and first rib. i: Oblique line of thyroid cartilage.
→(胸骨甲状筋も前頚部舌骨下筋の1つ。胸骨後面に起始を持ち、胸骨舌骨筋の背側およびやや内側にある。急角度上方に走り、甲状軟骨の斜線とそのうしろに付く。機能としては喉頭と甲状軟骨を下制する(ひき下げる)。神経支配は頚神経ワナ。動脈は上甲状腺動脈の輪状甲状枝から受ける。)
- 426_12【Omohyoid muscle肩甲舌骨筋 Musculus omohyoideus】 o: Superior border of scapula, i: Body of hyoid bone. It is divided into two bellies by an intermediate tendon that passes over the jugular vein. Hence it also tenses the pretracheal layer of the cervical fascia.
→(肩甲舌骨筋は、肩甲骨上縁で肩甲切痕の内側から、そのほか上肩甲横靱帯から起こり舌骨に向かう。中間腱により下および上腹に分けられる。参考:上腹と下腹は別の神経枝を受ける。)
- 426_13【Common carotid artery総頚動脈 Arteria carotis communis】 Artery of the neck without any branches. It runs on both sides of the trachea and larynx and passes deep to the sternocleidomastoid. It arises on the right from the brachiocephalic trunk and on the left from the aortic arch.
→(総頚動脈は頭部に血液を送る血管の主幹。右は腕頭動脈の枝、左は大動脈弓の上行部より出る。そのため左総頚動脈は右のものよりも4~5cm長い。総頚動脈は枝を出さず、気管・喉頭の両側を上行し、甲状軟骨上縁の高さで音叉のような形をなし内・外頚動脈に分かれる。分岐部の後側には頚動脈小体が存在する。また分岐部のないし内頚動脈始部の壁はやや薄く膨隆しており(頚動脈洞)、舌咽神経の枝を介し血圧を感受するという。)
- 426_14【Superior root of ansa cervicalis; Superior limb of ansa cervicalis上根(頚神経ワナの);下行枝(舌下神経の) Radix superior (Ansa cervicalis); Ramus descendens nervus hypoglossus】 Root lying for a short distance on the hypoglossal nerve, then descending along the medial side of the internal jugular vein and passing into the inferior root.
→(頚神経ワナの上根は第一・第二頚神経から発する神経線維で、舌下神経と伴行した後、分枝して頚神経ワナの中で下根とつながる。舌骨下筋群を支配する。)
- 426_15【Vagus nerve [X]迷走神経[脳神経X] Nervus vagus [X]】 Nerve arising from the fourth and fifth pharyngeal arches. It emerges from the medulla oblongata together with CN IX in the posterolateral sulcus and passes through the jugular foramen. Its distribution area extends into the thoracic and abdominal cavities.
→(迷走神経は第10脳神経で、上方の舌咽神経、下方の副神経の間で延髄の外側から多数の小根によって起こる混合神経で胸腹部の諸内臓に分布する副交感神経節前神経線維(延髄迷走神経背側核に細胞体をもつニューロンの神経突起)を主成分としている。これらの線維が胸腹部を走行するあいだに、きわめてしばしば自律神経叢を形成してどこに神経の本幹が存在するか不明瞭となるため、迷走神経の名がつけられた。また迷走神経には胸腹部の内臓の知覚を伝える神経線維(その細胞体は迷走神経の下神経節内に存在する)、咽頭下部および後頭の筋への運動線維(延髄疑核に発し、咽頭に分布するものは舌咽神経からの枝とともに咽頭壁において咽頭神経叢を形成したのち筋に分布する)、咽頭下部および後頭の粘膜への知覚神経線維、などが含まれる。後頭に分布する運動および知覚神経線維は下神経節の直下で後頭に向かう上喉頭神経となるか、あるいは胸腔内で迷走神経本幹から下喉頭神経として分かれて頚部を反回神経として上行するかして目的の器官に達する。)
- 426_16【Lymph nodeリンパ節 Nodus lymphoideus; Nodus lymphaticus; Lymphonodus】 Lymphoreticular filtering organ interposed along the course of lymphoid vessels and measuring 1-25 mm in diameter. Lymph must pass through two lymph nodes before reaching the bloodstream at the venous angle, providing a dual defense against pathogens or tumor cells invading the bloodstream.
→(リンパ節はリンパ細網組織の球状の緻密部で、しばしば明るい中心部を有する。リンパは最後に血液に合流するが、その前に少なくとも1個、通常は数個のリンパ節を通る。リンパ節にリンパを運び入れるリンパ管のことを輸入リンパ管といい、リンパ節よりリンパを運び出す脈管を輸出リンパ管という。リンパが血流に達するのは首のつけ根部位においてであって、最終リンパ管は胸管および右リンパ本幹となっている。)
- 426_17【Sympathetic trunk交感神経幹 Truncus sympathicus】 Chain of ganglia that are connected by nerve fibers and lie on the left and right sides of the vertebral column, extending from the base of the cranium to the coccyx.
→(脊椎全長の両脇に1本ずつの交感神経幹(神経節のためのふくらみをそなえる)が存在している。同幹の頚部領域には3個、胸部領域には11~12小、腰部領域には5個、仙骨部領域(骨盤内)には4~5個の幹神経節がある。左右の交感神経幹は脊柱に近接しており、脊柱下端の所では1個の不対神経節につながる。(求心性神経線維) 内臓からの感覚を伝える有髄性の求心性神経線維は交感神経節を素通りして、白交通枝を介して脊髄神経内に入り、その脊髄神経節が所属する髄節の高さの後根神経節の中に含まれる神経細胞体に達する。同じ細胞体からの、中枢に向かう軸索がそののち脊髄に入り、脊髄内での内臓反射路の形成にあずかったり、あるいは脳の自律神経中枢にまで上行したりする。)
- 426_18【Phrenic nerve横隔神経 Nervus phrenicus】 Nerve arising from C4 with accessory branches from C3 and C5. It lies on the anterior scalene muscle and then passes anterior to the hilum of lung to the diaphragm, with some fibers continuing into the peritoneum.
→(第3~5頚神経から出て頚神経叢を形成し、主に第4頚神経から起こる。頚部では前斜角筋の前面に沿って、また胸腔中では縦隔胸膜と心膜との間を通って、それぞれ走行する。横隔膜にいたる運動神経であるが、壁側縦隔胸膜、心膜、横隔胸膜、腹膜に知覚神経を送り(心臓枝)、腹腔神経叢からの枝と交通する(横隔腹枝)。時に鎖骨下筋神経または腕神経叢の他の神経から小枝が出てて、第1肋骨付近の高さで横隔神経に合することがあるが、これを副横隔神経という。)
- 426_19【Internal jugular vein; Jugular vein内頚静脈 Vena jugularis interna】 Main vein of the neck that extends from the jugular foramer to the venous angle.
→(内頚静脈は脳、顔と頚の浅層からの血液を集める。この大きな静脈は、後頭蓋窩の後静脈孔で、S状静脈洞から直接つながって始まり、内頚動脈についで総頚動脈に沿って下行し、鎖骨下静脈と合して腕頭静脈に終わる。上端と下端では肥大しており、それぞれ頚静脈上球ならびに頚静脈下球とよばれる。内頚静脈に注ぐ根として蝸牛小管静脈、咽頭静脈、舌静脈、上甲状腺静脈、顔面静脈、下顎後静脈がある。内頚静脈と鎖骨下静脈とが合流するところを静脈角angulus venosusといい、左側の静脈角には右胸管が開口し、右側の静脈角の近くには右リンパ幹が注いでいる。)
- 426_20【Longus capitis muscle頭長筋 Musculus longus capitis】 o: Anterior tubercles of C3-C6. i: Basilar part of occipital bone. Anterior and lateral flexion of the head and cervical vertebral column. I: Cervical plexus (C1-C3).
→(頭長筋と頚長筋はおうおうにして互いの境界が明瞭に定められない。この筋は縦あるいは斜めに走る線維束を持つ複合羽状構造をもつ。筋腹には通常不完全ながら腱画が挿入されている。頭長筋の起始は第3,4,5,6頚椎横突起の前結節。停止は後頭骨底部の下面。機能として頚椎と糖を屈曲しかつ回旋の補助をする。神経支配は第1,2,3,4頚神経の筋枝。動脈は下甲状腺動脈の上行頚枝、上行咽頭動脈の前脛骨枝、脛骨動脈の筋枝から受ける。)
- 426_21【Longus colli muscle頚長筋 Musculus longus colli; Musculus longus cervicis】 Muscle consisting of three parts that insert into the anterior longitudinal ligament. Superior lateral portion: o: Anterior tubercles of C5-C2. i: Anterior tubercle of atlas, axis. Medial portion: o: Ventral surfaces of vertebral bodies of T3-C5. i: Ventral surface of vertebral bodies of C3-C1. Inferior lateral portion: o: Vertebral bodies of T1-T3. i: Anterior tubercles of C6-C5. Lateral flexion and rotation of the cervical vertebral column as well as anterior flexion of the cervical vertebral column with bilateral action. I: Cervical and brachial plexuses (C2-C8).
→(頭長筋と頚長筋はおうおうにして互いの境界が明瞭に定められない。この筋は縦あるいは斜めに走る線維束を持つ複合羽状構造をもつ。筋腹には通常不完全ながら腱画が挿入されている。垂直部の起始は最初の3つの胸椎と最後の3つの頚椎椎体。停止は垂直部は第2,3,4頚椎椎体へ。下傾斜部の起始は最初の3つの胸椎椎体。下傾斜部の停止は第5,6頚椎横突起の前結節。上傾斜部の起始は第3,4,5頚椎の横突起の前結節。上傾斜部の停止は環椎の前結節である。機能として頚椎と頭を屈曲し、かつ回旋の補助をする。一側だけが動けば頚椎を側方に傾ける。神経支配は第2から第8の頚神経前枝。動脈は上項咽頭動脈の前椎骨枝、上行頚動脈および椎骨動脈の筋枝から受ける。)
- 426_22【Brachial plexus; Brachial nerve plexus腕神経叢 Plexus brachialis】 Nerve plexus formed by the ventral rami of spinal nerves C5-T1 that supplies the arm and partly also the shoulder girdle. It passes between the anterior and middle scalene muscles to the head of humerus. It can be divided into supraclavicular and infraclavicular parts.
→(腕神経叢は通常第5~8頚神経の全部および第1胸神経の大部分からはじまるが、またしばしば第4頚神経および第2胸神経と細枝で交通する。この神経叢は前斜角筋と中斜角筋との間を通って上内方から下外方に走り、鎖骨の下を通って腋窩に至り、上腕帯および自由上肢部の諸部に枝を与えるもので、脊髄神経叢のなかで最も発育がよい。腕神経叢の出来肩は極めて独特で、まず第5,6頚神経が合して1幹を作り、第7頚神経はそのまま独立に1幹をなし、第8頚神経と第1胸神経と合して1幹を作るが、これをそれぞれ上神経幹、中神経幹および下神経幹という。この3幹はつぎにおのおの前後2枝に分かれるこれらの枝うち、後枝は3本合して1本の後神経束を作り、その延長が橈骨神経となる。前枝は上中2本が合して新たに外側神経束を生じ、下神経幹の前枝はそのまま内側神経束となる。この内外の神経束はおのおの分かれて2枝となり、かくして出来た4枝のなかで中央の2枝が合して正中神経を作り、外側枝は筋皮神経となり、内側枝はさらに分かれて尺骨神経、内側上腕皮神経、内側前腕皮神経の枝となる。腕神経叢をその値する部位により鎖骨上部と鎖骨下部とに分ける。鎖骨上部は鎖骨上窩で胸鎖乳突筋下部の後にあり、鎖骨下部は鎖骨下で大小両胸筋に被われて腋窩に至る。)
- 426_23【Sternocleidomastoid muscle胸鎖乳突筋 Musculus sternocleidomastoideus】 o: Two-headed muscle arising from the sternum and clavicle, i: Mastoid process; superior nuchal line. Rotates the face to the contralateral side and bends the head to the ipsilateral side. Bilateral contraction elevates the face. I: Accessory nerve, cervical plexus (C1-C2).
→(胸鎖乳突筋は側頚部にある強大な斜めに縦走する浅層の筋。胸骨柄前面と鎖骨の胸骨端から2頭をもっておこり、両頭は合して強い筋腹をつくって後上方に走り、乳様突起および後頭骨の上項線につく。作用は複雑で、両側が同時に働くとオトガイを上げて後頭部を片側が働けば頭を対側にまわすが、その浅オトガイが対側に向かって上り、頭は逆に同側に傾く。支配神経は副神経外枝と頚神経叢筋枝(C2, C3)であり、したがって僧帽筋と同系の筋である。また、第6咽頭弓に発生する鰓弓筋で、鎖骨上窩を囲む2頭(胸骨頭と鎖骨頭)をもって始まる。胸骨頭は胸骨柄の上縁から、鎖骨頭は鎖骨の胸骨端から起こる。筋膜は頚筋膜浅葉に鞘状に包まれており、斜め上方に向かって幾分螺旋状に回転しながら頚部外側面を横切り、よく発達した腱となって乳様突起と上項線に停止する。筋の表面は、起始部で腹側に、停止部で外側に向く。参考:副神経外枝の僧帽筋枝は、外枝がこの筋に入る前に分かれることと、筋内で分かれて再び外に現れることがある。胸鎖乳突筋はドイツ語ではKopfnicker(頭をこっくりとうなずかせる筋)と呼ばれるが、これは作用の点からは正しくない。この筋が片側だけ収縮すると、頭はその側へ傾き反対側を振り向いて、あたかも「首をかしげる」状態になる。また両側の物が同時に収縮すると、頭を胴体にめり込ませるように働くのえある。Musculus sternocleidomastoideusというラテン名はあまりにも長たらしいので、米英では多少簡略化してsternomastoid muscleともよぶ。片側の胸鎖乳突筋が先天的に短い場合、または出産時の外傷などによって瘢痕化して短縮すると、この筋の作用を考えればすぐわかるように、頭は病側へ傾くと共に健側にねじれたままの状態になるこれを斜径torticolis, wryneck(性格には筋性斜径)といい、かなり頻度の高いものである。略語(SCM))
- 426_24【Scalene muscles斜角筋 Musculi scaleni】
→(斜角筋は頚椎の横突起から起こり、外下方に斜走して、上位の肋骨に付く。細長い紡錘状の筋で、①前斜角筋、②中斜角筋、③後斜角筋がある。斜角筋は第1・第2肋骨を上方に上げて、胸郭上口を支持する肋骨を挙げて胸郭を拡げる。)
- 426_25【Platysma muscle広頚筋 Platysma】 Cutaneous muscle that extends (with anatomical variations) from above the mandible to the thorax. I: Facial nerve,
→(広頚筋は前頚部にある薄い膜状の皮筋で、第2咽頭弓(舌骨弓)に発生した筋原基に由来し、しかも頚部にとどまった浅顔面筋である。他の全ての浅顔面筋は頭部に完全に移り表情筋をつくる。広頚筋は極めて薄い筋性の板で、皮膚の直下にある。下顎骨縁から第2(3)肋骨の高さに広がり、さらに遠く肩峰に達する。広頚筋は頚筋膜浅葉の上に広がっていて、ここを走る外頚静脈の上を通る。上方で、筋束は下顎骨と顔面皮膚に付着する。無数の筋線維が表情筋の線維索と交錯している。下方で、広頚筋はさまざまな長さの線維束となって皮下組織に放散し、一部は真皮結合組織内に終わる。左右の筋の内側部のさまざまな長さの線維束となって皮下組織に放散し、一部は真皮結合組織内に終わる。左右の筋の内側部の線維は通常オトガイ下で互いに交錯するが、下方に向かうにつれて、互いに離れ、前頚部の三角形をした正中面は広頚筋に被われずに残る。参考:頚筋中唯一の皮筋で表情筋と同系である。皮膚とは固く、頚筋膜浅葉とはゆるくつく。顔面部は下唇下制筋とつづく。)
- 426_26【Nuchal fascia項筋膜 Fascia nuchae】 Continuation of the posterior layer of thoracolumbar fascia to cranial. It ensheathes the splenius and semispinalis capitis muscles. Laterally it blends into the superficial layer of cervical fascia and anteriorly into the prevertebral layer. It is connected medially with the nuchal ligament.
→(頚部の固有背筋をおおう比較的弱い筋膜で、前外側の頚筋膜前葉ともに、頚椎とその頚傍筋を包む筋膜輪を形成する。上方は後頭骨、内側は項靱帯、下方は腰椎筋膜につづく。)
- 426_27【Muscles of neck頚部の筋 Musculi colli; Musculi cervicis】
→(頚部の筋に次のものが上げられる。1.浅頸筋:広頸筋(顔面神経)2.外側頸筋:胸鎖乳突筋(副神経と頚神経叢枝)3.前頸筋(舌骨筋):a.舌骨上筋:顎二腹筋(顔面神経と下顎神経)、茎突舌骨筋(顔面神経)、顎舌骨筋(下顎神経)、オトガイ舌骨筋(舌下神経) b.舌骨下筋:胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨甲状筋(以上頚神経ワナ)、甲状舌骨筋(舌下神経)4.広頸筋(頚神経前枝の短い筋枝) 椎前筋:頚長筋、頭頂筋、前頭直筋、外側頭直筋 斜角筋:前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、(最小斜角筋))
- 426_28【Trapezius muscle僧帽筋 Musculus trapezius】 Muscle that consists of three parts that act together to position the scapula and clavicle, draw both toward the vertebral column, and brace the shoulder girdle. I: Accessory nerve; brachial plexus C2-C4.
→(背部第1層にみられる扁平な菱形の筋で背部上半部を占める。僧帽筋は上肢の運動の時に肩甲骨を動かす重要な筋である。とくに上腕の外転のときに、肩甲骨を後内側に引くと同時に下角を外側に回し、関節窩が上外側を向くようにする。僧帽筋は下行部、横走部、上行部に分けられる。[臨床]僧帽筋の完全麻痺(副神経と上部腕神経の同時の傷害)の場合、肩は健側よりも深く位置するようになる項肩線は弓状を呈さず、乱れる。肩甲骨は正中線より、はるかに離され、関節窩は前下方を向く。肩は(肩甲挙筋の)弱いエネルギーにより持ち上げることが出来るにすぎず、わずかに(菱形筋により)後方にもたらされるにすぎない。腕の外側への挙上は大きく減少する。腕は通常水平面まで外転され得ない。腕の前方への挙上は(前鋸筋による肩甲骨の回転により)ほとんど制限さされないが、矢状面での挙上は強く妨げられる。副神経のみが傷害された場合、僧帽筋の下行部の機能は(上頚神経の付随的支配により)種々の程度に保存される。肩甲骨の位置の変化はそれほど著明ではない。しかし、腕を横または後へ挙上することは、ちょうどその程度に応じて制限される。)