763_01【Recurrent laryngeal nerve反回神経 Nervus laryngeus recurrens; Nervus recurrens】 Branch of the vagus nerve that extends on the right around the subclavian artery and on the left around the aortic arch. It runs in the groove between the trachea and esophagus to the Larynx. Its terminal portion penetrates the inferior pharyngeal constrictor and supplies the mucosa to about the rima glottis as well as all laryngeal muscles with the exception of the cricothyroid. It communicates with the internal branch of superior laryngeal nerve. →(右側は鎖骨下動脈をまわり、左側では大動脈弓を回って気管と食道の間の溝にはいる。そして気管に気管枝を、食道に食道枝をそれぞれ送る。さらに終枝として下喉頭神経を、下咽頭収縮筋を貫いて輪状筋以外の喉頭筋と喉頭下半分の粘膜に送る。)
763_02【Epiglottis喉頭蓋 Epiglottis】 Elastic cartilage shaped like a shoehorn. →(喉頭口の前壁をなし、粘膜におおわれて舌根のところにあり、その概形は喉頭蓋軟骨によってつくられ靴べら様を呈する。喉頭蓋の主な働きは燕下を円滑に行うことである。)
763_03【External carotid artery外頚動脈 Arteria carotis externa】 It extends from the carotid bifurcation to its terminal division into the superficial temporal and maxillary arteries posterior to the neck of mandible. →(外頚動脈は主として前頚部と顔面に分布する動脈で、甲状軟骨上縁の高さで総頚動脈から分かれておこり、顎二腹筋後腹と茎突舌骨筋の内側を通り、耳下腺におおわれて下顎後窩を上行し、下顎頚の高さで顎動脈と浅側頭動脈の2終枝に分かれる。分枝は次のとおりである。①上甲状腺動脈、②上咽頭動脈、③舌動脈、④顔面動脈、⑤後頭動脈、⑥後耳介動脈、⑦浅側頭動脈、⑧顎動脈)
763_04【Internal carotid artery内頚動脈 Arteria carotis interna】 It passes from the carotid bifurcation, without any branches, to the cranial base, continuing in the carotid canal to its terminal division into the middle and anterior cerebral arteries. →(内頚動脈は、総頚動脈から起こり、頚部では頭蓋底にいたるまでは枝を出さない。ついで頚動脈管をへて中大脳動脈と前大脳動脈に分枝するまでをいう。内頚動脈は頚部、側頭骨錐体部(岩様部)、海綿静脈洞部、大脳部の4つの部分に分けられる。この内頚動脈の海綿静脈洞部と大脳部とは、特別な形態を呈するので、「頚動脈サイフォン」とよばれている。内頚動脈の主な枝として、眼動脈、後交通動脈、前脈絡叢動脈がでる。内頚動脈は、視交叉の外側で小さな前大脳動脈と大きな中大脳動脈とに分岐する。中大脳動脈は内頚動脈の直接の続きで終枝と考えられる。)
763_05【Carotid body頚動脈小体 Glomus caroticum】 Chromaffin cells in the connective tissue of the carotid bifurcation that presumably form a cluster of chemoreceptors. It is connected via the glossopharyngeal nerve with the circulatory and respiratory center. →(頚動脈小体は1742年にハレル(Haller)とトラウベ(Traube)によって発見されたが、その働きについては長いあいだ不明であった。1924年に至ってハイマンス(C.Heymans)らの研究によって、これが血液中の酸素と炭酸ガスの分圧の変化によって興奮し、反射的に呼吸を変化調節させる化学受容器chemoreceptorであることがわかった。組織像としては、動静脈吻合arteriovenous anastomosisがたくさん集まった間隙に、類上皮細胞epitheloid cellsが増殖した所見が見られる。 (Netter)頚動脈小体(球)は、第1に動脈血の酸素濃度の低下に反応し、かつ血液pHの低下あるいは高濃度の二酸化炭素にもある程度反応する化学受容器を含む。頚動脈小体は、頚動脈が内頚動脈と外頚動脈とに分かれる分岐部に位置する一塊の海綿様組織からなり、それ自身の独立した動脈系と静脈系を有する。頚動脈小体の支配神経は頚動脈洞神経で、舌咽神経(IX)に入る求心性線維と迷走神経(X)に由来する自律神経遠心性線維を含む(第5章-図10、11参照)。頚動脈小体の化学受容部位の横断面をみると、密な毛細血管網の周囲を2種類の細胞がとり囲んでいるのが分かる。求心性と遠心性の神経線維を区別するのが困難なため、頚動脈小体の働き方に関する2つの理論が提出されている。第1の理論は神経線維の変性の研究に基づくもので、化学受容機能の担い手をⅡ型細胞(神経線維鞘細胞)とそれが取り囲む神経線維とするものである。この理論によれば、大きい神経線維とⅠ型細胞と大型線維が化学受容系を成し、細い線維は血管に関連する自律神経遠心性線維であると主張するものである。この理論は、求心系におけるコリン作動性シナプスの所見に基づく。Ⅰ型細胞と大きい神経線維間の結合は、そのようなシナプスの構造的特徴を有していてる。Ⅰ型細胞内のシナプス小胞が長期間に及ぶ低酸素の後に枯渇するのが観察されており、これはⅠ型細胞が神経線維の活動を起こす化学伝導物質を含んでいるとしたら、予期されることである。両理論のどちらも、低濃度の酸素がいかにして受容器細胞あるいは神経終末を興奮させるかを説明できない。おそらく、この興奮は、化学受容細胞の呼吸代謝と何らかの形で結びついていているのであろう。頚動脈小体からの求心性線維は、血中酸素濃度の低下に対して呼吸を増加する反応に重要な役割を演じる(Ciba Collection, Vol. 7 22, 290頁参照)。大動脈小体と脳幹にある他の化学受容器も血中の酸素、二酸化炭素、pHのレベルをモニターし、これらを適切な範囲に保つために呼吸型と循環系の調節に参加する。)
763_06【Common carotid artery総頚動脈 Arteria carotis communis】 Artery of the neck without any branches. It runs on both sides of the trachea and larynx and passes deep to the sternocleidomastoid. It arises on the right from the brachiocephalic trunk and on the left from the aortic arch. →(総頚動脈は頭部に血液を送る血管の主幹。右は腕頭動脈の枝、左は大動脈弓の上行部より出る。そのため左総頚動脈は右のものよりも4~5cm長い。総頚動脈は枝を出さず、気管・喉頭の両側を上行し、甲状軟骨上縁の高さで音叉のような形をなし内・外頚動脈に分かれる。分岐部の後側には頚動脈小体が存在する。また分岐部のないし内頚動脈始部の壁はやや薄く膨隆しており(頚動脈洞)、舌咽神経の枝を介し血圧を感受するという。)
763_08【Thyroid gland甲状腺 Glandula thyroidea】 Produces thyroxine and triiodothyronine, hormones that increase metabolic processes. Pathological enlargement is known as goiter. →(甲状腺は前頚部の後頭前側にある不規則な楕円形嚢胞からなる内分泌腺で、成人で25~40gである。甲状腺は舌根の上皮が落ち込んで生じた原基が、下の方へ伸びだして出して現在見る位置に落ち着いたものである。舌根の陥入部の名残りが盲孔であり、移動経路に尾を引いて残った原基が発達したものが錐体葉である。この一部が筋組織から成るmのを甲状腺挙筋という(出現率20~30%)。甲状腺挙筋が存在する場合は、舌骨または甲状軟骨から起こって甲状腺に停止している。甲状腺は2種類のまったく異なったホルモンを分泌する。主な甲状腺ホルモンはヨウ素を含むアミノ酸誘導体で全身の物質代謝を亢進させる。1分子に含まれるヨウ素原子の数によって、T4(チロキシン)とT3(3-ヨードチロニン)を区別する。もう一種の甲状腺ホルモンはポリペプチドでカルチトニン(またはチロカルチトニン)という、血中カルシウムイオンの濃度を低下させるホルモンである。ヨウ素をふくむホルモンは甲状腺濾胞を形成する濾胞細胞から分泌され、カルチトニンは濾胞の間あるいは濾胞の周辺に存在する濾胞傍細胞から分泌される。濾胞は甲状腺の構造単位であって中空球状の細胞集団であるが、細胞はその周辺に1層にならんでいるだけで、内腔はコロイドという濃厚な蛋白溶液で満たされている。この蛋白はチログロブリンとよばれ、ヨウ素を含む糖蛋白である。濾胞[上皮]細胞は機能状態によって形が異なり、単層立方または単層円柱上皮が普通であるが、コロイドが極端にたまっているときは、単層扁平上皮となる。この細胞はよく発達した粗面小胞体とGolgi装置をふくみ、糸球体も被い。分泌物はGolgi装置で径150~200nmの小果粒あるいは小胞につめこまれて、濾胞内腔に近い細胞表面の知覚に運ばれる。これは細胞先端部あるいはそのやや下方に集まっていることが多いので、subapical granule(またはvesicle)とよばれる。この果粒は開口分泌によって、その内容を濾胞腔に放出すると思われる。甲状腺が下垂体前葉ホルモンの一種であるTSH(甲状腺刺激ホルモン)によって刺激されると、細胞表面に偽足状の突起が現れて、コロイドを貪食する。そのようにして貪食されたコロイドをふくむ空胞を、コロイド滴という。これに水解小体が融合して、加水分解酵素を得ると、コロイド滴内でチログロブリンが分解され、甲状腺ホルモンであるT4およびT3が生ずる。これらのホルモンは低分子であるから、細胞内を拡散して、基底側に運ばれ、濾胞に近接して分布している毛細血管に吸収されるのである。濾胞傍細胞は動物によって発達が異なり、ヒトでは非常に少ない。細胞質が明るくみえるので、clear cellの略としてC-cellとよばれることがある。これは鰓後体に由来する細胞で、血中カルシウムを低下させるホルモンを分泌する。濾胞細胞のやや外方に位置するが、共通の基底膜で包まれる。しかし、この細胞は濾胞腔に面することはない。径200nm前後の小果粒を多数含んでおり、動物にカルシウムを注射するとこの果粒が著明に減少することから、カルチトニン産生細胞であることがわかった。この果粒は一般のペプチドホルモン産生細胞であることがわかった。この果粒は一般のペプチドホルモン産生細胞と同様に、Golgi装置で産生されて、細胞基底部(基底膜に面する表面)から、開口分泌の様式で放出される。)
763_09【Right lobe of thyroid gland右葉(甲状腺の) Lobus dexter (Glandulae thyroideae)】 →()
763_09a【Lobe of thyroid gland[右・左]葉(甲状腺の) Lobus dexter/sinister (Glandulae thyroideae)】 Right and left lobes of the thyroid gland adjacent to the trachea. →(気管に接して位置する。 (Feneis))
763_11【Inferior thyroid artery下甲状腺動脈 Arteria thyroidea inferior】 Artery passing along the anterior border of the anterior scalene muscle to the level of the sixth cervical vertebra and then behind the common carotid artery to the thyroid gland. →(下甲状腺動脈は沿う頚動脈の後方を内側へ走り、甲状腺下部にいたる。甲状腺に分布する腺枝のほかに、周囲気管への分枝として下喉頭動脈、咽頭枝、食道枝、気管枝を分岐する。)
763_13【Oesophagus; Esophagus食道 Oesophagus; Esophagus】 Passageway measuring 23-26 cm in length that begins below the cricoid cartilage at the level of the sixth cervical vertebra and ends at the cardia of the stomach. →(食道は咽頭につづき、下方は胃に流入する長い管で、狭義の消化管の最初の部分である。輪状軟骨下縁(上食道狭窄)にはじまり、脊柱の前を下って胃の噴門部に接合するまで、全長23~26cm。内腔は適宜拡がり、義歯を飲み込んだ例もある。内腔の狭い部分は上端(上食道狭窄)、大動脈弓・気管支と交叉する部分(中食道狭窄)、下端(下食道狭窄)の3カ所で、上下端では内腔が普通は閉じ、括約筋の存在が想定されている。食道を上から頚部・胸部・腹部に分ける。頚部は脊椎の前にある部分、胸部は以下横隔膜で、腹部は横隔膜の食道裂孔を抜けて腹腔内に入り、噴門部に流入する短い部分である。食道の壁の粘膜は重層扁平上皮におおわれ、粘膜筋板を有し、食道腺が散在する。上部または下端に食道噴門腺をみる。筋層は上部で横紋筋、下部で平滑筋で、平滑筋束の一部は気管支食道筋、胸膜食道筋として、周囲の器官に連続する。筋層の外側は疎性結合組織性の外膜におおわれる。)
763_14【Trachea気管 Trachea】 Elastic tube between the larynx and bronchi. →(喉頭の下に連なる気道の管状部で、第6頚椎の高さにはじまり、気道の前を垂直に下り、第4頚椎の前で左右の気管支に分岐する。この分岐部を気管分岐部という。気管支鏡で分岐部を上から見ると、その正中部に左右の気管支を隔てる高まりがある。この高まりを気管竜骨という。気管壁には、硝子軟骨性の気管軟骨の輪が一定の間隔をおいて重なり、軟骨間は輪状靱帯で結合する。気管軟骨は幅3~4mmで15~20個を数える。気管軟骨は完全な輪ではなく、全周の4/5~2/3を占める馬蹄状を呈する。軟骨性の支柱を欠く部は正中部後壁をなし、膜性壁とよばれる。膜性壁には平滑筋(気管筋)を含む。気管内面は多列絨毛円柱上皮で、絨毛の運動の方向は上向きである。粘膜固有層には弾性線維が多く、粘膜下組織には胞状の混合腺(気管腺)を数多く含む。日本人の気管の長さは10cm前後である。)