759_00a【Mediastinum縦隔 Mediastinum】 Part of the thorax between the two pleural sacs. It extends from the anterior surface of the vertebral column to the posterior surface of the sternum and from the superior thoracic aperture to the diaphragm. Its connective tissue is continuous with the cervical connective tissue and it communicates with the abdominal cavity via openings in the diaphragm. →(縦隔は、左右肺の間の部分。矢状方向に、胸骨の後面および肋骨の一部から胸椎の椎体の前面まで広がっている。両側は、縦隔胸膜に接し、下方は横隔膜に境される。縦隔は上縦隔と下縦隔に区分され、下縦隔はさらに後縦隔(脊柱前面と心膜後面との間)、中縦隔(心臓と心膜)、前縦隔(心膜と胸壁の間)に区分されている。)
759_01【Cervical pleura; Dome of pleura; Pleural cupula胸膜頂 Cupula pleurae】 Part of the parietal pleura over the apex of lung at the superior thoracic aperture. →(胸膜頂(頚胸膜)は頚に3cmほど伸びだし、その頂点は肺の頂点を覆う帽子状の盛り上がりをつくる。)
759_02【Subclavian artery鎖骨下動脈 Arteria subclavia】 Artery that passes with the roots of brachial plexus between the anterior and middle scalene muscles through the scalene space, over the first rib in the groove for the subclavian artery. From the lateral border of the first rib, it continues as the axillary artery. →(鎖骨下動脈は上肢の主幹動脈の根部をなし、右側は腕頭動脈から、左側は大動脈弓からそれぞれ分かれてはじまり、前斜角筋の後方を通って第1肋骨外側縁で腋窩動脈につづく。胸・頚・上肢移行部の動脈として、多彩な分枝と変異に富むことを特徴とする。分枝はつぎの通りである。椎骨動脈、内胸動脈、甲状頚動脈、肋頚動脈、下行肩甲動脈に分枝し、第一肋骨を越えたところで腋窩動脈となる。)
759_03【Internal thoracic artery内胸動脈;内乳動脈 Arteria thoracica interna; Arteria mammaria interna】 Artery arising from the subclavian artery and descending along the anterior inner side of the thorax to the diaphragm. →(内胸動脈は胸骨縁に沿い前胸壁内面を下行し、横隔膜前端を貫いて上腹壁動脈に移行し、腹直筋内で下腹壁動脈と吻合して、前正中線に沿う縦走動脈路を形成する。異常の経過からして縦隔と前胸壁に分布するのに適している。縦隔への枝としては、縦隔枝、胸腺枝、気管支枝さらに横隔神経に伴走する心膜横隔動脈がある。前胸壁への枝としては、胸骨枝、肋間隙を外側に走り肋間動脈と吻合する前肋間枝、肋間隙を貫き乳腺枝を分岐しうる貫通枝、ならびに横隔膜と胸壁下部に分布する筋横隔動脈などがある。なお側胸壁内面を下行する外側肋骨枝がまれに内胸動脈初部からおこることがある。)
759_04【Subclavian vein鎖骨下静脈 Vena subclavia】 Vein lying between the anterior scalene muscle and sternocleidomastoid. It extends from the internal jugular vein to the lateral border of the first rib. →(鎖骨下静脈は第一肋骨の外側縁からの腋窩静脈の直接の続き。鎖骨の内側端で内頚静脈と合して腕頭静脈を形成するまでの部分を指す。前方は鎖骨と鎖骨下筋に、後方は前斜角筋を隔てて鎖骨下動脈に接し、下方は第1肋骨上面の鎖骨顆上脈溝に接する。まれに動脈と伴行して前斜角筋の後方を通ることがある。枝として①胸筋枝、②背側肩甲静脈、③胸肩峰静脈がある。)
759_05【Manubrium of sternum胸骨柄 Manubrium sterni】 The part of the sternum above the sternal angle. →(胸骨柄は胸骨の上1/4を占める部分で、その上縁の左右両端には小刀で角を落としたような切れ込み(鎖骨切痕)があり、ここに鎖骨と連結するための関節面が見える。左右の鎖骨切痕に挟まれた部分の上縁も浅い切れ込みになっている(頚切痕)。また胸骨柄の側面で鎖骨切痕のすぐ下には第1肋骨が接するための切れ込みがある。胸骨柄と胸骨体とが結合する(胸骨剣結合)部位は前方に突出して、後方に開く鈍角すなわち胸骨角を作る。)
759_06【Thymus胸腺 Thymus】 Lymphoid organ situated in the thymic triangle. It regresses during puberty. →(胸腺は縦隔上部の正中線上にある無対の臓器まで、心膜の前面から頚の下部に達する。生後とくに小児期に発達し、思春期までは増量して、30~40gに達するが、その後は急速に退縮して、成人では脂肪組織で置き換えられる。かつては胸腺は内分泌器に入れられていたが、その組織構成と機能から脾臓、リンパ節とともに造血器または免疫系に入れられるべきである。発生学的には胸腺は左右両側の第3鰓嚢の内胚葉上皮に由来する。胸腺を構成する細胞はリンパ球、細網細胞および少数の大喰細胞であるが、この中で内胚葉上皮に由来する細胞は細網細胞だけである。リンパ球は胎生期には卵黄嚢に、生後は骨髄に由来する肝細胞が、胸腺原基にできて、そこで増殖分化してリンパ球になるのである。組織学的には胸腺は結合組織性中隔に分けられる、多数の小葉から構成され、各小葉は濃染する皮質と、淡染する髄質とからなる。髄質の中心部にはしばしば胸腺小体(Hassall小体)とよばれる角化した上皮の不規則形の塊が出現する。このように皮質、髄質に分けられるが、両者の区分は明瞭ではなく、細胞構成は両者の間にほとんど差がない。すなわち上皮由来の細網細胞のつくる細網の網眼に、多数のリンパ球がつまっている。間葉系の細網組織に比べると、細網線維がほとんどないこと、星状をなす細網細胞が互いにデスモゾームで結合されて細網(reticulum)をつくることから、細胞性細網ともよばれ、その細胞内には張細糸を有することや、角化あるいは石灰化してHassall小体をつくる細胞が重層扁平上皮の特徴を示すことから、その上皮由来は明らかである。胸腺のリンパ球は形態的には他のリンパ組織や血液、リンパ中のリンパ球と区別しがたい。しかし免疫学的には特有のTリンパ球である。)
759_07【Phrenic nerve横隔神経 Nervus phrenicus】 Nerve arising from C4 with accessory branches from C3 and C5. It lies on the anterior scalene muscle and then passes anterior to the hilum of lung to the diaphragm, with some fibers continuing into the peritoneum. →(第3~5頚神経から出て頚神経叢を形成し、主に第4頚神経から起こる。頚部では前斜角筋の前面に沿って、また胸腔中では縦隔胸膜と心膜との間を通って、それぞれ走行する。横隔膜にいたる運動神経であるが、壁側縦隔胸膜、心膜、横隔胸膜、腹膜に知覚神経を送り(心臓枝)、腹腔神経叢からの枝と交通する(横隔腹枝)。時に鎖骨下筋神経または腕神経叢の他の神経から小枝が出てて、第1肋骨付近の高さで横隔神経に合することがあるが、これを副横隔神経という。)
759_08【Pericardiacophrenic artery; Anterior bronchial artery心膜横隔動脈;前気管支動脈 Arteria pericardiacophrenica】 It accompanies the phrenic nerve and supplies the pericardium and diaphragm. →(心膜横隔動脈は内胸動脈より起こり、心膜、横隔膜、胸膜に分布する。筋横隔動脈、下横隔動脈、内胸動脈の縦隔枝・心膜枝と吻合する。)
759_09【Pericardium心膜 Pericardium】 Lubricant-containing sheath enclosing the heart. It consists of a fibrous layer and a double-layered serous coat. →(心膜は心臓と大血管起始部の被覆と活動のための膜。外層の線維性心膜fibrous pericardiumと内層の漿膜性心膜serous pericardiumの2層からなる閉鎖嚢。漿膜性心膜は心臓表面を直接おおう臓側板(心外膜)と線維性心膜の内面をおおう壁側板にわけられる。線維性心膜は強靱な膜で、大血管の壁につづき、心臓を固定・保持するとともに、その急激な過度の拡張を防ぐ。さらに心臓は心膜腔で囲まれ、潤滑な心膜性心膜で包まれるので、摩擦なく拍動することができる。)
759_10【First rib [I]第一肋骨 Costa prima [I]】 The only rib that is only bent around the edge. →(第1肋骨は強い弓状の弯曲を示すが、ねじれがほとんどないので、上下に扁平である。肋骨頚は細いが、肋骨体は幅広い。第1肋骨での上面と下面の区別は他の肋骨ほど容易ではない。しかし上面では肋骨体の中央で内側知覚に小さな突出物(前斜角筋が付くところ)があり、この小突出物のすぐうしろには、肋骨体を斜めに横切る幅1cm弱の浅い溝(肋骨下動脈が接するための溝)が見える。小突出物の前方にも更に幅の広い溝(鎖骨顆上脈が接するためのくぼみ)があるが、その輪郭ははっきりしないことが多い。第1肋骨の肋骨頭関節面もクサビ形でなく、丸い凸面を示す。また第1肋骨ではその弯曲が急に変わる点(すなわち他の肋骨での肋骨角に相当する部分)が肋骨結節に一致している。)
759_11【Arch of aorta; Aortic arch大動脈弓 Arcus aortae】 It is located between the ascending and descending aorta. Its roof extends to the first rib at the left border of the sternum. →(大動脈弓は上行大動脈につづく弯曲部であり(約5~6cm長)、肺動脈分岐部および左気管支をこえて左後方にまわり、第四胸椎体の左側で胸大動脈に移行する。)
759_17【Sympathetic trunk交感神経幹 Truncus sympathicus】 Chain of ganglia that are connected by nerve fibers and lie on the left and right sides of the vertebral column, extending from the base of the cranium to the coccyx. →(脊椎全長の両脇に1本ずつの交感神経幹(神経節のためのふくらみをそなえる)が存在している。同幹の頚部領域には3個、胸部領域には11~12小、腰部領域には5個、仙骨部領域(骨盤内)には4~5個の幹神経節がある。左右の交感神経幹は脊柱に近接しており、脊柱下端の所では1個の不対神経節につながる。(求心性神経線維) 内臓からの感覚を伝える有髄性の求心性神経線維は交感神経節を素通りして、白交通枝を介して脊髄神経内に入り、その脊髄神経節が所属する髄節の高さの後根神経節の中に含まれる神経細胞体に達する。同じ細胞体からの、中枢に向かう軸索がそののち脊髄に入り、脊髄内での内臓反射路の形成にあずかったり、あるいは脳の自律神経中枢にまで上行したりする。)
759_18【Recurrent laryngeal nerve反回神経 Nervus laryngeus recurrens; Nervus recurrens】 Branch of the vagus nerve that extends on the right around the subclavian artery and on the left around the aortic arch. It runs in the groove between the trachea and esophagus to the Larynx. Its terminal portion penetrates the inferior pharyngeal constrictor and supplies the mucosa to about the rima glottis as well as all laryngeal muscles with the exception of the cricothyroid. It communicates with the internal branch of superior laryngeal nerve. →(右側は鎖骨下動脈をまわり、左側では大動脈弓を回って気管と食道の間の溝にはいる。そして気管に気管枝を、食道に食道枝をそれぞれ送る。さらに終枝として下喉頭神経を、下咽頭収縮筋を貫いて輪状筋以外の喉頭筋と喉頭下半分の粘膜に送る。)
759_19【Left pulmonary artery左肺動脈;左枝(肺動脈の) Arteria pulmonalis sinistra; Ramus sinister】 Artery lying in front of the descending aorta. On radiographs it appears as a 「pulmonary arch」 below the 「aortic arch.」 →(左肺動脈は肺動脈幹の2分枝のうち短い方の枝で、心外膜を貫いて左肺門にはいる。多数の枝を出して気管支区や気管支下区に分布するが個人差は大である。典型的には上葉動脈の枝として肺尖動脈(A1)、前区動脈、後区動脈(後2者は上行枝・下行枝を出す)、肺舌動脈の枝として上舌動脈・下舌動脈、下葉動脈の枝として下葉上動脈(A6)と肺底区の枝(前肺底動脈、後肺底動脈、外側肺底動脈、内側肺底動脈)を出す。)
759_20【Accessory hemi-azygos vein; Superior hemi-azygos vein副半奇静脈;副左縦胸静脈 Vena hemiazygos accessoria; Vena thoracica longitudinalis sinistra accessoria】 It receives the fourth through eighth intercostal veins and opens alone or together with the hemi-azygos vein into the azygos vein. It can also receive the first three intercostal veins and, in this case, anastomose with the left brachiocephalic vein. →(副半奇静脈は左側で上位6ないし8肋間の静脈血を集めながら、脊柱の左側下行し、第8胸椎の高さで脊柱の前面を横切って奇静脈にそそぐか、あるいはそのまま半奇静脈にそそぐ。発生学的には、左上肋間静脈とともに左後主静脈と主上静脈の上半部に由来する。)
759_21【Left main bronchus; Left bronchus左主気管支;左気管支 Bronchi principales sinister; Bronchus principalis sinister; Bronchus sinister】 →(左主気管支は直接気管からでる左の気管支幹部。)
759_22【Left pulmonary veins左肺静脈 Venae pulmonales sinistrae】 The two left pulmonary veins which occasionally unite to form a single trunk. →(2条。ときには合して1本の幹となる。 (Feneis))
759_23【Hemi-azygos vein; Inferior hemi-azygos vein半奇静脈;左縦胸静脈 Vena hemiazygos; Vena thoracica longitudinallis sinistra】 Vein that frequently begins at the left ascending lumbar vein, receives the eleventh through ninth intercostal veins, and usually opens at the level of the ninth to tenth thoracic vertebrae into the azygos vein. →(半奇静脈は右側における奇静脈の遠位部に相当して左上行腰静脈にはじまり、横隔膜の左脚を貫いて胸腔に入り、脊柱の左側を上行し、第9胸椎の高さで右方向に走向を変え、下行大動脈や食道、胸管の後方を通って脊柱の右側に出て、ここで奇静脈に合する。左側で第8(9)~12肋間の静脈を運ぶ。発生的には、左主上静脈の遠位部と左右の主上静脈間交通枝から由来する。)
759_24【Greater splanchnic nerve大内臓神経 Nervus splanchnicus major】 Nerve running from the fifth through ninth (tenth) ganglia of the sympathetic trunk to the celiac ganglia. It contains preganglionic and postganglionic fibers and conveys pain perception from upper abdominal organs. →(上腹部の内臓を支配する交感神経の枝。第5~9胸神経節からの線維で構成され、腹腔神経節を介して胃・肝臓などに分布する。[→腹部の神経 参照](イラスト解剖学))
759_25【Thoracic aorta胸大動脈;大動脈胸部 Pars thoracica aortae; Aorta thoracica】 Part of the aorta descending to the aortic hiatus of the diaphragm at the level of the twelfth thoracic vertebra. →(胸大動脈は、大動脈弓の延長である。第4胸椎体の下縁の左側で始まり、第5から第12胸椎の左側で後縦隔を下行する。下行しながら、正中面に近付き、食道と脊柱の左側に沿って走るが、食道の後方、脊柱の前を走るようになる。胸大動脈は横隔膜を貫いた直後に腹大動脈という名前に変わる。胸大動脈と腹大動脈とを総称して下行大動脈という。)
759_26a【Oesophageal plexus; Esophageal plexus; Oesophageal nerve plexus; Esophageal nerve plexus食道神経叢 Plexus oesophageus; Plexus nervus pharyngo-oesophageus】 Nerve plexus surrounding the esophagus. It is formed by the two vagus nerves superiorly and also by the left recurrent laryngeal nerve. →(食道神経叢は食道壁の前・後部にある2つの神経叢の1つ。後部の神経叢は右迷走神経と左反回神経からの枝で、前部の神経叢は肺神経叢を出た後の迷走神経の吻合幹によってつくられる。枝は食道の粘膜および筋層に分布する。(=esophageal nerve plexus))
759_27【Oesophagus; Esophagus食道 Oesophagus; Esophagus】 Passageway measuring 23-26 cm in length that begins below the cricoid cartilage at the level of the sixth cervical vertebra and ends at the cardia of the stomach. →(食道は咽頭につづき、下方は胃に流入する長い管で、狭義の消化管の最初の部分である。輪状軟骨下縁(上食道狭窄)にはじまり、脊柱の前を下って胃の噴門部に接合するまで、全長23~26cm。内腔は適宜拡がり、義歯を飲み込んだ例もある。内腔の狭い部分は上端(上食道狭窄)、大動脈弓・気管支と交叉する部分(中食道狭窄)、下端(下食道狭窄)の3カ所で、上下端では内腔が普通は閉じ、括約筋の存在が想定されている。食道を上から頚部・胸部・腹部に分ける。頚部は脊椎の前にある部分、胸部は以下横隔膜で、腹部は横隔膜の食道裂孔を抜けて腹腔内に入り、噴門部に流入する短い部分である。食道の壁の粘膜は重層扁平上皮におおわれ、粘膜筋板を有し、食道腺が散在する。上部または下端に食道噴門腺をみる。筋層は上部で横紋筋、下部で平滑筋で、平滑筋束の一部は気管支食道筋、胸膜食道筋として、周囲の器官に連続する。筋層の外側は疎性結合組織性の外膜におおわれる。)